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空気猫

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カカシサイド。人生色々にて。







「悪いな、カカシ。手間を取らせちまって」
「あー…。いや、いいよ」
アスマは煙草を吹かしながら、書類不備の出た任務報告書をカカシから受け取る。カカシは、どうやら楽しい休日を過ごしていたらしく、この男にしては珍しく上機嫌で、いつも丸い猫背をいっそう丸めていそいそと上忍待機所を去ろうとしていた。
「カカシ。もう帰るのか」
ポケットに手を突っ込みながら鼻歌混じりに銀髪の上忍の背中に、同僚の一人が声を掛けた。
「家で、恋人を待たせているんだ」
「なるほど、そりゃ邪魔しちまって悪かったな」
アスマが、全てを合点した顔で煙草の煙を吐いたが、同僚の男はそうは思わなかったらしい。彼は、納得できない、という表情で片眉を跳ね上げた。
「おいおい、まだ5時だぜ。子供だって遊んでる時間だろ。ちょっと飲んで帰るくらい良いじゃないか。カカシ。おまえ、最近付き合い悪いぜ」
「ごめーんね」
へらり、と笑ってカカシが謝る。
「今日はナルトが晩御飯を作ってくれるんだ。あの子は、ちょっとそそっかしいところがあるから、鍋のお湯を吹き零したりして火傷しないか、近くで見ていてあげなきいけないんだ。それにあの子はああ見えて寂しがり屋だから一人で泣いていたら、慰めてあげないといけないデショ?」
家にいるナルトのことを思い出したのか、カカシの表情は目に見えて緩む。
「カカシ。うずまきは忍者だよな?」
「そうだよ。なに、おまえボケでも始まってるんじゃないの?」
念を押した同僚にカカシが真顔で返した。人生色々が静寂に包まれる。
「カカシ……」
同僚の男がショックを受けたように固まり、この〝由々しき事態〟に思い切ったように口を開いた。
「おまえは、なんて情けない男になっちまったんだ…」
「んん~…?」
「オレは、おまえのことを、ちょっとズレた奴だが、一人の忍としても男としても、格好の良い奴だと尊敬していたんだぞ。それなのに、今のおまえはなんだ。まるで、腑抜けじゃないか。オレは哀しいぞ」
同僚の男のこの言葉を受けて、日頃から何か思うところがあったのだろう、「そうだ、そうだ」と数名の上忍が立ちあがる。男たちは同志が居たとばかりに顔を見合せると、カカシと向き合った。
「おまえ。恋人を甘やかし過ぎてるぞ。男はちょっと冷たいくらいが、丁度いいんだ。それが男の威厳ってもんだろう。今のおまえにはまるでそれがない」
「その通りだ。そりゃうずまきは男のオレたちの目から見ても別嬪だろうがよ。だけど、おまえがそれだけ尽くす価値があるのか。相手は所詮、男だろ。カカシ。おまえ、少しぐらい遊んだって、罪はないぞ」
「うずまきだって年頃なんだ。おまえに隠れてちょっとくらいお痛な遊びを覚えている年齢だぜ?」
「そうだ。うずまきだって、きっと影では女と遊んでみたいと思っているかもしれないぞ」
「どうしておまえたち、そんな酷いことを言うんだ?」
「おまえのためだ!」
「よくわからないよ?」
ナルトと出会う前。カカシは、実に忍らしい男であった。程良く女と遊び、仕事とプライベートの区切りを分け、他人の事には口を出さない。少々冷めていたかもしれないが、銀色の髪の毛を持つ上忍には、そうした孤立的な生き方が似合っていた。
それほど遊びを心得た気持ちの良い男だったのに、しかし今はどうだ。あのストイックでエリート忍者だったカカシが14歳も年下の少年に首ったけだというのだ。そんな姿が、はたけカカシであって良いはずがない。男たちは俄然、カカシを真っ当な男に戻そうと使命感に燃えてしまっていた。
彼等は、ナルトに対する嫌悪感はとくに持っていない。むしろうずまきナルトのことは、九尾のことがあったのに、よくぞあそこまで真っ直ぐに育ったものだと、拍手喝采をしてやりたいくらいだ。
だが、少年忍者に対する称賛と、同僚の恋人としての評価は別なのである。
さらに、カカシを糾弾している男たちの中の一人は、この間、目を覆うような信じられない光景を見てしまった。
先日の日曜日。彼は、おそらく商店街で買い物をしている途中だっただろう二人に出くわした。銀色と金色の対は酷く目立つ。自然と目に留めてしまっていると、スーパーから出てきた二人が何か口論を始めたのだ。
そして、あろうことか金色の少年は、道端で銀色の大人を怒鳴りつけたかと思うと、ぽかんと上忍の頭を叩いて叱りつけ始めたのだ。
恋人とはいえ仮にも上官に対する態度ではない、と男はあまりの事態に唖然としてしまった。しかし、当のカカシと言えば、少年に殴られたというのに、咎めるどころか始終笑顔で、少年の頬が怒りのために紅潮すればするほど、嬉しそうに頬を緩ませていた。
こんな関係は間違っている。狂っている。男はその時、この間違いをいつか正してやろうと決心したのだった。当人たちの幸せが…殊にカカシの幸せがどこにあってもだ。
「オレは、おまえのあの姿を見て目頭が熱くなったぞ。同じ上忍として、いや男としてなんて情けない」
「おまえがそんな態度だからうずまきがつけ上がるんだ」
「おまえは他の女を知るべきだよ」
「女の身体はいいぞぉ、肉は柔らかいし、何より男には出来ない気遣いってものが出来る。おまえはもう一度、女の良さを再確認するべきだ」
男たちは、年端も行かぬ少年の尻に敷かれているカカシに立腹して、そう言った。きっとカカシはあの少年に夢中になり過ぎているか、もしくは〝病気〟なのだと思った。それならば、悪い夢から覚まさせてやるのは、仲間である自分たちの役割なのではないか。彼等は、カカシをまっとうな道に戻してやろうという使命感に燃えていた。
「夕食ぐらいなんだ。ほったらかしてやればいいだろう。男としての威厳を取り戻せ」
「一度くらい浮気をしてどっちが上か、わからせてやっても罰は当たらないぜ」
「あの子の代わりくらいいくらでもいるだろう」
ブチ。何かが切れる音が、どこからか聞こえた。
「…………おまえら。それ以上言ったら殺すからな」
それまで黙って男たちの話を聞いていたカカシの声のトーンがあからさまに低くなった。カカシの額にはわかりやすいほど大きな青筋が浮かんでいる。おいおい、とアスマを始めカカシの内情に精通している同僚等は殺気立った友人に肝を冷やして見守った。
「は?」
「へ?」
カカシの様子に男たちが鳩が豆鉄砲を喰らったような表情で固まった。
「ナルトが簡単に手に入るみたいな言い方をするな。オレは、真剣にナルトを愛してるんだ。オレは、あの子に本気なんだ。付き纏っているのも、束縛しているのも、我儘を言って困らせて怒らせて泣かせるのも、全部オレなんだ。オレはナルトがいないと息も出来ないんだよ」
カカシの唯一晒された右の瞳には驚くべきことに薄っすら涙の膜さえ張っていた。
オレはあの子に恋をしているんだ、とカカシは真剣に告白した。もちろん、アスマと事情をよぉく知る上忍等はすでに、胃凭れを起こしそうな顔で…窓の外を見ていた。
「おまえたちはナルトの良さをまったくわかっていない。あの子の愛くるしさをまるで理解していない。あの子は、オレがどんなに駄目な大人なのか全て知っていていつも微笑んでくれるんだ。オレの駄目なところもそれでいいって許してくれるんだ。オレは、オレは……」
カカシは頭を抱え始める。そのまま「オレは…」と同じ単語を繰り返していたカカシは、
「ナルトを愛してるんだ…」
噛み締めるように呟かれた言葉に、今度こそ人生色々の面々の大半があさっての方向を見ていた。
「それにナルトはあれでなかなか怒ったら怖いんだ。オレが浮気したなんて知ったら……捨てられる」
カカシは恐ろしい未来を想像したのだろう、ぶるぶると震え始めた。
「一晩限りの女相手にあの子を手放すだってっ?とんでもない。そんなことになったらオレはその女を殺してしまうよ」
ゾッとするような結論を脳内で下したカカシの思考回路に、人生色々が一瞬静まった。おそらくそこにいたのは、カカシに女を薦めた男たちが望んでいたかつでのはたけカカシの姿だっただろう。イビツに歪んで、人を寄せ付けないはたけカカシ。カカシの尋常ならぬ様子に、
「そりゃ、うん。おまえのうずまきは可愛いよ」
「そうだよ、オレたちだってうずまきが好きだぜ」
「ハキハキして竹を割ったような性格で話していて気持ちいいよな」
長椅子に座っていた、カカシと馴染みの古株の上忍等が気を使って「うんうん」と頷き始めたが、それすらもカカシの癇に障ったようである。
「ちょっとそれどういうこと、ワサビ、ネギ、アクビ。おまえらナルトのことをいやらしい視線で見てるわけじゃないだろうな。見るな、触るな、近付くな、減る!!」
危ない雰囲気は引っ込めたもののカカシは途端に、目くじらを立てて子供のように怒り出した。
「とくに、アクビ。おまえ、ナルトと話したのか。オレに隠れてナルトにちょっかい出したらただじゃおかないぞ」
「……おめーは嫁さんを褒められてもけなされても同じような反応しか出来んのか」
「へ」
「おまえのとこのお姫さんだよ。おまえの、嫁さんだろ?」
「お嫁さんだって…。誰が、ナルトが…?」
仕方なく割って入ったアスマの鶴の一声ならぬ、熊の一声に、カカシの瞳が見開かれる。途端にカカシの周囲に、幼稚園児の落書きのような花が咲き乱れる。まったくこれほどゲンキンな男もいまい。
「ナルトがオレのお嫁さん……」
カカシは噛み締めるように、呟きを落とした。
「ったく。てめぇのぶっ飛んだ思考回路には付いて行けやしねえぜ…」
アスマは、かつてカカシがナルトへの恋心を自覚したばかりの頃を思い出していた。
あれは数年前、まだ春の麗らかな日だった。その日、いつものようにぼんやりとした顔で人生色々に入って来たカカシは、いつものように長椅子に座り、いつものように任務報告書を作成し始めた。
そこまでは良かった。いつも通りのカカシだ。しかし、その日のはたけカカシはいつも通りペンを握り書面にインクを走らせようとした瞬間、突然立ち上がったかと思うと、床を踏み鳴らし始めたのだ。
ナルト、可愛い…。唇を噛みしめ、小さく呟かれた単語はおそらく部下の名前だ。どうやらカカシはその日の任務で活躍した小さな部下を思い出しているらしかった。顔を半分以上隠しているはずの覆面忍者が明らかに怪しい雰囲気を醸し出しぐふぐふ笑いながら任務報告書を書いている。
その後もカカシは何度も、ナルト、可愛い…と呟き続け、あまりの出来事に、人生色々に居た同僚等は反応に困り凍り付いた。とうとう、写輪眼のカカシの頭がおかしくなったと思う者も居たほどだ。
あの時は本当に怖かった…と遠い日の思い出に、アスマは薄ら寒い笑いを漏らした。何しろ12歳のガキ相手になんだかイケナイ想像をしている同僚の隣に座らなければいけなかったのは何を隠そうアスマ本人だった。
そして今現在。うずまきナルトと恋人になって早数年。「お嫁さん」発言に、カカシは感動のためにしゃがみ込んでしまい、同僚と友人一同はそんな彼を恐ろしい生き物を見るように見詰めていた。
「ああ。オレは帰らなくてはいけない。オレの奥さんが帰宅を待ってるんだ!」
「ああ、お願いだから早く帰ってくれ」
馬鹿に付ける薬なし、とばかりにアスマは短くなった煙草を揉み消した。
その後。まぁ、要約すると家に帰ったカカシは、ナルトにフライパン返しを床に投げ付けられ、かくして家出をしたナルトの大捜索に乗り出すこととなったのだ。





「それじゃあナルトはオレの愛も疑ってなかったんだよね?」
「おう」
「オレがナルトと付き合う前のオンナが全部アソビだってことも理解している」
「おう」
「それじゃあ、なんで家出なんて……」
まだ冷たい部屋の中で、カカシはナルトを後ろ抱きにして、シーツに包まっていた。ナルトの瞳は潤んでいた。カカシが無体なセックスをしたためだ。嫌だと抵抗するナルトに、カカシは無理矢理自身の熱を押し当てた。
おかげでナルトの身体は、もう今日何度目になるかわからない情交にぐったりと弛緩しきっている。カカシは、裸体のナルトを抱き込みながら旋毛にキスを落とした。
「や、…だっ。しばらくカカシ先生にはさわられたくない」
ぺしん、と手で煩わしいものをどけるように、ナルトはカカシのことを振り払った。ナルトの冷たい態度に、カカシは沈痛な面持ちで眉を顰める。
カカシは、情事の最中に、ナルトからすっかり不機嫌のわけは聞き出していた。どうやら自分の昔の女がナルトの家に押し掛け、ナルトにいちゃもんを付けて帰って行ったらしい。まったくまだそんな愚かな女が残っていたのかと、カカシはナルトの身体中にキスの雨を落として、ご機嫌を取ったが、それでナルトの曲がった機嫌が直るわけもなく、セックスを強要したカカシに、ナルトのご機嫌棒線グラフの数値は右に下降するばかりだった。
「カカシ先生。もう、離せってば」
ナルトは、カカシの腕の拘束から抜け出すと、ふらつく身体で上着を着込み始める。
「ナルト、まだ怒ってるの。無理にセックスしたことなら謝…」
脹れっ面の碧い瞳に睨まれて、カカシは言い掛けた台詞をごくんと飲み込んだ。
「カカシ先生はそればっか……」
「え」
「オレとのセックスにしか興味ない?」
「……ナ、ナルト。そんなことはないよ。おまえは誤解しているようだけど、オレは本当に身も心もおまえのことを愛して…っ!」
慌ててカカシが弁解しようと、ベットから起き上がると、来るなってば!と上服が投げ付けられる。
「カカシ先生が身体ばっかなのは、今に始まったことじゃねぇじゃん。オレ、知ってるもん」
誤解だ、とカカシは声を大にして言いたかった。しかし、自分の今までの行動を振り返ると、冷や汗を掻いしてしまうような記憶しか思い当たらない。その上、大変不味い事に、カカシは思う存分ナルトを抱いた後なのだ。説得力のないことこの上ない。そんなカカシを睨み付けて、ナルトは涙を堪えるように、顔を歪める。
「ナル……ご、ごめ」
「バカー!」
「っ!!」
びくん、とカカシの身体が強張る。オロオロとして、どうしたら良いかわからないといった風体のカカシに、ナルトは「それに、それに…」と拳を震わして俯いた。
「もう一つオレが怒ってることは、カカシ先生があんな趣味の悪りぃ女と付き合っていたからだってば!」
地団太を踏んでナルトが叫んだ。ナルトの剣幕に、カカシが呆気に取られて固まる。
「えぇっ。ナ、ナルトっ?」
「誰でも良かったって言ったって少しは相手を選べってば。カカシ先生、よくあんな人と、寝れたってばね。信じられねぇ。カカシ先生の下半身には〝品位〟ってものがないのかよ。節操無し!」
「せ、節操無し…って。おまえ、それ男が女に使う台詞…」
「うるさい、うるさい。セックス大魔神、駄犬、エロ上忍~!!」
「セッ、だっ、エロ…。ナ、ナルトォ…」
そんなことを言われても、カカシには女がどこの誰であるかすら、名前を聞いても思い出せないのである。たぶん、星の数ほどいた過去の女の一人なのだろう。記憶にも残っていない、ナルトと引き合いに出しても仕様がない、そんな程度の女なのだ。
むしろ、カカシはその自称カカシの元オンナだという名前も顔も知らないどこかの誰かさんに殺意がむくむくと湧いてきていた。こんな、こんがらかった事態になったのはそのどこかの誰かのせいではないか。その女さえいなければ、カカシは今頃ナルトと夕食にありつけていたし、合意でセックスに及んでいたはずだ。そもそもの原因は過去の自分の乱れた性関係だったのだが、カカシは都合良くそこら辺を火影岩の彼方にうっちゃらって、女のことを恨んでいた。おそらく、次その女がカカシの前に名乗り出て現れたら、ナルトが、カカシのことを止めない限り、カカシは女のことを許さないに違いない。
「ナルト、愛してるんだ。本当だよ、おまえだけを愛しているんだ。身体だけじゃない。おまえの心もすべて愛してるんだ」
仕方なくカカシが取った行動と言えば、安っぽい三流ドラマのような使い古された台詞を並べることだけだった。
「他の女なんてどうでもいいよ。おまえだけ、おまえだけが好きなんだ」
カカシは、ナルトの背中にキスをしたり、擦ったりしながら愛撫を始めた。今度こそ、ナルトの目尻に涙の粒が浮き上がる。
「大体、ナルトは料理も掃除も出来るじゃない。立派なオレの恋人だよ?」
「対抗してもしょうがねぇじゃん……」
ナルトはカカシに抱き締められながら唇を噛んだ。
「別に、オレはカカシ先生のポイントを稼ぎたくて、料理を作ったり掃除をしたり洗濯をしてたわけじゃないってばよ。それがあのバカ女にはわからないんだってば」
「バカ女っておまえ……」
「バカ女はバカ女なんだってば、うわーん!」
ナルトが本格的に大声で泣き始めたので、カカシは慌ててナルトをシーツで包んだ。しゃっくりを上げて泣いているナルトの肩を抱いて、ああ冷たくなった身体を温めてあげなければ、と思ってしまう。
だって、仕方ないではないか。愛しいから抱きたい。さわりたい。キスしたい。より密着していたい。ベッドの中で触れ合いたい。愛を確かめたい。好きだと囁いて、身体が冷たくなっていたら温めて慰めて、涙を優しく拭ってあげたい。カカシにとっては、ナルトを好きになって以来ごく自然な衝動なのだ。
「ナルト、好きだよ」
カカシはナルトの後頭部に口付ける。すると金髪がふるりと揺れた。
「オレ…男のくせに、ちまちま掃除したり料理作ったりして、カカシ先生が美味しいねって御飯を食べてくれたら嬉しいし、男なのに、カカシ先生に可愛いって言われると嬉しくてもっと可愛くなりてぇかもとか思っちゃうし、家でカカシ先生が寛いでくれると嬉しい。なんかそう言うのってカカシ先生に媚び売ってるみたいじゃん。それってオレはあの女の人と同じってこと?オレはそうじゃないって思うけどよくわかんねぇ。そう思ったら虚しくなって、気分が悪くなった」
ナルトの髪の毛を弄っていたカカシの指が止まったことに気付かず、ナルトは尚も言い募る。
「あの女の人がカカシ先生の話をするたびに嫌な気持ちになった」
「うん」
「オレの知らないカカシ先生の話なんてあんな女の人の口から聞きたくない」
「うん」
「こんなオレ…全然好きくないのに、カカシ先生といるとどんどんいやな自分になっちゃってる気がする」
ナルトの大分少年らしくなった頬から、涙が一滴零れ落ちた。
「ねぇ、ナルト。仲直りのキスをしようか?」
「いやだってば。カカシ先生、オレってば…」
「しー…。愛してるよ、ナルト」
やだ…、と小さくしたナルトの抵抗は、カカシの口の中に飲み込まれた。そのまま押し倒され、シーツから二人分の衣擦れの音が聞こえ始める。
「あ…っ。カカシせんせぇ……っ」
「ナルト…」
カカシの肩にナルトの足が掛かる。そのまま結合部が丸見えな体勢でナルトはゆさゆさと揺すられた。
「あ、あんっ。ふぇえ……」
涙を零しながら、快感に震えるナルトを、カカシはとても優しく抱く。そして――。
「…ああ、ナルトが焼き餅を妬いてくれるなんて」
一拍の間を置いてから、ナルトを犯す大人が、感嘆のため息を漏らし感動し始めた。ナルトは、ふるふると小刻みに拳を握り締め、セックスの快感に歯を食い縛った。
わかってる。この大人が、重度の変人で、自分にバカであることもよくわかっているのだ。ナルトの、この非常に繊細な気持ちなど、まったく全然わかってくれないに違いないのだ。
「可愛い…。焼き餅妬いちゃったの、ナルト。怒ってるの」
「焼き餅なんか妬いてねぇってばっ」
「かわいいーーーー」
条件反射でナルトが声を荒げると、殊更嬉しそうにカカシはナルトを抱き締めた。ずぐんと、内部でカカシのものが深く刺さる。
「ひぅ…」
悲鳴のようなナルトの声。そのまま、ゆるゆると横抱きにされ、内部にペニスを埋め込んだまま、
ハートを乱舞させられる。
もう、だめだ。話にならない。カカシは昔からそうだ。ナルトが、カカシと話している女に嫉妬して頬を膨らませるたびに、「可愛い」だの「嬉しい」だの、頭の螺子が緩んだことを同じくらい緩んだ顔で言ってくるのだ。ナルトが怒れば、怒るほど、嫉妬すれば、嫉妬するほど、カカシは喜んでしまうのだ。馬鹿、馬鹿、馬鹿。カカシ先生なんて、大嫌いだってば。
「可愛い。ナルト。おまえの怒って可愛い顔、見せて?んっ」
「カカシ先生の馬鹿――――!!」
ナルトは、カカシの横っ面を叩いて、自分の上に乗っているカカシを蹴る。ずるん、と自分の内側を犯していた杭が抜ける嫌な感触に顔を顰めつつ、立ち上がると、ナルトはおなざりに服を羽織り再び…今度はカカシの家から家出をしてしまったのであった。





 




 
 
 



ナルト。怒り、ぶり返し。
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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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