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空気猫

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お隣のカカシさんシリーズ第1弾






 

夜明けの珈琲は如何ですか?

夜、年に数回オレはこんな電話で目覚める。
「もしもし~。オレだけど、オレ」
「あー、てめぇ誰だってばよ」
蒲団から這い出した手で携帯をやっと掴み、寝惚け半分で出ると、電話の向こうの相手は知らない男で、(いや、知ってるかもしれないが、オレの記憶からはデリートされてる奴、たぶん)
「なんでわかんないの、オレだよー」
そいつはそんなことをへらへらした声で言ってくるのだ。
「1回、関係持ったじゃん。わかる?」
その時点で、オレのムカつきはハイパーマックスだった。時刻を見ればもうすぐ夜と朝の境目の非日常的な時間で、どこの引き籠りの電話だよ、とか非常に差別的なことを思って、それでも惰性で電話に耳を傾ける。
「オレだって、オレ。あ、もしかしてヤリ過ぎててわからないとか~」
余計なお世話だってば。
「オレ、男なんだけど」
「えー…。男かよぉ。マジで~!?」
どうやら知り合いでないことは間違いないらしい。ちょっとほっとした。(いくらなんでも友人にこんな最悪な悪戯をする奴がいるとは思いたくない)
「全然わかんなかった。ま、いいや。きみ、声可愛いな。なーなー、オレとテレフォンセックスしない?」
「しねぇ…」
「えー、いいじゃん。この際、男同士ってことは忘れてさー。ね、ちょっとさぁ色っぽい声出して見てよ。アンアンとか、あっ、イッちゃうとかなんでもいいからさ。部屋にあるエロビデオのマネしてさ。な、いいだろ。そのうちきみも、気持ち良くなっちゃうって」
ブチ。青筋が切れたと同時に、オレは携帯電話のスィッチも切った。ま、変態の電話の定番として、すぐにまた電話が掛って来る。
「ちょ、可愛いね。もしかして怯えちゃってるとか。ぎゃはははは」
ブチ。ツーツーツー。
「………」
ベッドサイドの薄っぺらなカーテンを捲ると、ああ青白い時間だ、とちょっとだけ思う。夜とも言えず朝とも言えず、なんとも微妙な時間帯。道路から人影と車が途絶えて、一番一日で街が寂しい隙間の時間。あのどこかの変態さんは、もしかしたら孤独を抱え過ぎて?空虚な気持ちに(オレが言うとやたら腹が空く単語に聞こえるが、ちょっと太宰治とか思い出して欲しい)なっていたのかもしれない。
でも、それにしても下品な電話だったよな、と先程の番号を着信拒否リストに加えようと携帯をノロノロ弄っていると、お気に入りのアーティストのシングルのカップリング曲という非常にマイナーな着信メロディがまた鳴った。
「あーっ、ウザいってば。オレってばアンタに構ってやるほど暇じゃねーの!」
「――すまん、迷惑だったか」
携帯の向こうから聞こえたのは、へらへらしたイラつく声でなく、落ち着いたトーンの大人の声だった。
「ふぇ…」
「すまん、こんな時間に非常識だったよな」
「あっ、あっ、あっ、カカシさん!?」
オレは思わず、ベッドの上で正座をしてしまった。いや、誰も見ていないのだから、そんなことをしても無意味なのだが、姿が見えなくても居住いを正したくなる雰囲気の人っているよな。オレにとってはカカシさんはまさにそんな感じの人だった。
「ごめん、カカシさん。あのさ、全然迷惑じゃねぇの。ちょっとびっくりしたっつぅか。タイミングが絶妙に悪かったつぅか」
「今、電話平気?」
「おう」
カカシさんはどこかの会社のエリートサラリーマンとかいう奴らしく、オレ的に宇宙人だった。まぁ、カカシさんはネクタイを締める人種の人のくせに、ちょっとくたびれた感じがあるというか、気が抜けた感じが大半を占めているので、すぐに打ち解けることが出来たので、電話番号なんてものを交換していたのだが、このマンションに引っ越して来てから、お隣同士ということもあり、カカシさんにはかなり親切にして貰っている。一見、冷たそうなくせに世話好きなのか、オレがインスタントラーメン漬けの食生活をしていることに気付くと野菜を届けてくれたりして、ちょくちょく声を掛けてくれるのだ。本当、いい人だよな。野菜は好きくねぇけど。
「今、残業で徹夜した帰りなんだ」
「そうなんですか。お疲れ様ですってば」
「ちょっと部屋の外に出て来てごらんよ?」
電話の向こうでカカシさんが言った。オレってば犬か何か見てぇだけど、カカシさんの声につられてノコノコと玄関のドアを開けてしまった。
「あ、どうも」
「どうも。おはよう…、かな?」
朝日を見ながらカカシさんはそんなことを言った。オレと言えばスウェット姿のまま、うおー夜明けに見てもいい男、とかカカシさんに対してそんなことを思って、扉から顔だけ半分出して、カカシさんを観察した。
「なに、それ。新しい遊び?」
「違います。これはカカシさんとオレの心の距離なんです」
オレが言うとカカシさんは背中を丸めて笑い出した。やった。ウケた。と、しょうもないことを心の中でガッツして、携帯片手のカカシさんを凝視する。すると、「そんなに見詰めないでよ」と苦笑された。そんなに、見詰めてしまっていただろうか。恥ずかしいじゃないか。しかし、そこで、はっとした。いやいやいや、待て。オレってばカカシさんに言われて家から出て来たんだってばよ。
カカシさん、こんな時間にオレに何の用だろう。だってさ、普通の人間なら絶対に眠っている時間帯だ。
「あの…」
オレが口を開きかけたのと同時に、カカシさんの携帯が鳴った。
「あ、ごめん。会社の同僚だ。くそっ、またトチッたな」
カカシさんはコンピューターの会社の人だって言ったかな。どうやらプログラミングのミスがまた発覚したらしい。いや、そんなことはオレにはあんまり関係ないんだけど…。
「オレと同じ着メロ…」
「え、そうなの」
「よくそんなマイナーなバンドの、売れもしなかったマイナーな曲よく知ってるってばよ」
オレは思わず笑ってしまった。たぶんこの着メロを設定している人間なんて相当珍しい。大体、同年代の奴らの着信なんて、流行りのヒットチャートの着ウタか、季節に合わせたものをシーズンごとに返るのが主流で、今のご時世にこんな時代遅れの古びた曲を愛聴しているのは自分だけだと思っていた。
短い電話を終えたカカシさんと向かい合って、オレはこの大人に今までにない親しみを感じてしまった。オレって、結構単純な人間なのかもしれない。
「カカシさん、そのバンド好きなの?」
「んー。まぁまぁってとこかな」
「ふーん。…オレも、まぁまぁってとこだってばよ」
「これ、古い映画のサントラに使われてただろ。それでなんとなくかな」
「え。そうなんだってば?」
「あー、きみらの年代は知らないかもねぇ。今度、ビデオ貸してあげるよ」
カカシさんってやっぱり親切だよな。お隣さんってだけなのにオレにこんなに優しくしてくれるんだもん。
そういえば、映画で思い出したが、前に見た面白くない映画(途中半分寝た)で、こんなことを言っていた。深夜2時とか4時に気兼ねなく電話を掛けれる相手は誰だろうって話。そんなもの、その相手が朝早く仕事に行く人とかだったら幾ら親しくても気遣って電話など出来ないものだろうとか思うが、でも深夜2時とか4時に、突然声を聞きたくなる相手ってどんな相手だろう。オレはちょっと考えてみた。シカマル、キバ、チョウジ?サスケはぜってぇないな。だけど確かに上記3名にはふざけ半分で電話を掛けた覚えがある。言わばテンションの産物だ。女の子なら失恋とかした時に掛けたくなるものかも知れないが、男のオレにはあんまりない経験だ。
オレってば落ち込むことはあっても深く考えない性質だし、悩んでも仕方ないし、つーか用件があるなら昼間に直接会って話せって感じだし、仕事をしているわけでもないオレらの年齢で早急に話さなきゃいけないことって、あんまりない。いや、オレらはオレらで非常に大事な悩みとか、すぐ誰かに伝えたいことはあるけどな、たぶん!
でも、前にサクラちゃんが言ってたな。恋をしたら、夜中に好きな人の声を突然聞きたくなるって。たぶんオレが真夜中にサクラちゃんに電話したら、次の日に殴られそうだけど、好きな相手だと違ってくるのだろうか。
真夜中の2時とか4時とかに突然声が聞きたくなる相手ってどんな人だろう。
カカシさんはどうしてオレに電話なんて掛けたんだろ。
暇そうに見えたから? ちょっとした気まぐれ? やっぱ暇つぶし?
それとも、なぁどうしてかな。
オレがそんなことをごちゃごちゃと考えてると、カカシさんが真四角の箱を目の前にぶら提げていた。もしやサラリーマンのおっちゃんがぶら提げて帰ってくるという伝説のおみや?
しかし、流石ははたけカカシ。おそらくほぼ徹夜勤務明けだというのに、さわやかな笑顔でオレのぐっとくるようなことを言ってくれたのだ。
「ケーキ、買って来たんだけど部屋に入って珈琲と一緒どうかな?」
よく見ればそのお洒落且つシンプルなデザインの箱、きらびやかな金字で綴られた横文字の店名は、駅前で行列が出来るケーキ屋の箱ではないか。オレってば思わず目がキラキラ輝いてしまった。天国の父ちゃん、母ちゃん。ゲンキンな息子でごめんなさい。オレってば食べ物にだけはどぉしても弱いんだってばよ!
「意外だってば。カカシさんって甘いもの好きなの!?」
「んー…。そうでもないんだけど、会社の子たちがここのケーキ美味しいって話してたから、もしかしたらナルトくんも好きなかなぁって思ってね」
「好き、好き、大好き!!」
「おお、好きの大安売りだねぇ」
「ニシシ。ご馳走になっていいってば?」
カカシさんはダッサイ犬のキャラクターが付いたキーホルダーを開けながら、にっこり笑った。オレもつられて笑う。こういうちょっとした間の取り方の相性って大事だよな。
「なーんだ、ケーキ食べる相手が欲しかっただけかよ。突然、携帯に電話してきたからびっくりしちゃったじゃん。なんか切羽詰まった用があるのかなぁって!」
「いや…、まぁそれはナルトくんの声が聞きたくなったからなんだけどね」
「へ?」
「結構、切羽詰まってたかも」
カカシさんに色違いの瞳で微笑まれた。うーんそろそろビルの隙間から昇って来た朝日が眩しい。
「ケーキ買ってきて貰って正解だな。まさかナルトくんと先に夜明けの珈琲だけ飲むことになるとは」
カカシさんがまた変なことを言った。徹夜明けだからかな?
「カカシさんって古いよな」
意味を半分も理解せず脊髄反射で会話を返すと、カカシさんは目に見えて落ち込んだようだ。猫背が酷くなってるってばよ!こーいうとこ、けっこう好き。なんか、大人なのに情けないとこが可愛いんだよなぁ。
ニシシって笑うと、カカシさんとまた目が合った。なんか目元が赤い気がする。
「…ナルトくんって何歳だっけ」
「オレってば今度、17歳!」
「16歳か…」
「なんだってば?」
「いや、未成年に手を出すのは犯罪かなぁという大人の葛藤を…」
「うわーーー、カカシさん家ってオレの部屋より広いのな!」
そのあとオレってばケーキを美味しく頂いている最中に、カカシさんにキスなんてものをされてしまい、その場で押し倒されたんだけど、別にいやではなかったのが不思議だよな。
だってさ、オレってば目覚めは最悪なのに、夜明けに聞いたカカシさんの声だけはいやじゃなかったんだ。


 

















なんだか気にかかるお隣の少年とケーキを食べようと女子社員にケーキを頼んだはいいけど突然残業が入って予定丸潰れで、でも声だけ聞きたくて電話して声を聞いたら我慢できなくなったカカシ先生とか。実際にあったらなおさら我慢できなくなったとか。あとナルトは夜明けのホットミルク貰ったと思います。
 
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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