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空気猫

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はたけカカシのペットライフ
日常編お風呂の時間







「ひぎゃあああ~~っっ」
今日もカーテンの後ろに隠れた狐っ子を、スポンジを片手に持ったままのカカシがジリジリと追い詰める。
「いやーよ!いやーなのよ!こっちくんな、かぁしーっ」
水滴を垂らしながら、ケンケン泣く三角耳の子供。はたけさん家のナルトくん、とご近所で有名になりつつあるお子様は路地裏ではたけカカシに拾われた、半人半獣の狐っ子である。
「ちゃぁーんと綺麗にしないとばっちぃでしょ。おまえ。もう何日お風呂に入ってないの!?」
「なうとはきえーだってばよ!ちゃんと毎日自分で毛づくろいしてるモンね!」
尻尾を両腕で抱き締めて、仔狐が高らかに宣言する。へー、ほー、と声を低くするのは飼い主のはたけカカシである。
「嘘吐きなさい。この間、飴玉食べて毛がベトベトに絡まったのはどこの誰!?」
「ち、ちがうも…!あれはちょっと失敗しちゃっただけだも!なうとってばもう一人前の狐だってばよ!」
がぅ、と歯を剥き出しにして威嚇のポーズを取る半人半獣の子供を前にして、へー、ほー、の顔のままカカシが半眼になる。ナルトはカカシに見せつけるよう、ぺろりぺろりと毛ずくろいを始めるが…
「ほら。自分でも、噎せちゃってるデショ」
尻尾を抱えたまま涙目になるナルトにカカシは呆れてため息を吐く。
「おまえ、毛づくろい下手くそだねー…」
「うー。うー。なうと、ひとりで出来るモン!」
しかし、どう見てもナルトの小さな舌と尻尾の体積が比例していない。舐めて毛づくろいしていると言うよりは、ベトベトにして汚していると言った方が正しいだろう。
狐の習性を教えてくれる親がナルトにはいない。残念ながら人間のカカシで狐の本能や習性に関わる部分ではお手上げなのだから、せめて最低限人間のやり方で補ってやりたいと思うのだが。
一人前の狐の沽券に関わる問題だとばかりに、ナルトが憤怒するが、カカシとて負けておらず、むんずとナルトの襟首を引っ掴む。
「ほら、観念して風呂に入るぞ」
「う゛ー、う゛ー、う゛ー」
「あーっ。また夕御飯前にそんなにお菓子食べて!!」
カーテンの裏に隠されていたラーメンスナックの袋の山を発見してカカシの顔が般若になる。仔狐に視線を下ろせば、「ぎくぎく」とばかりに三角耳が毛羽立ち故意にカカシと目を合わせようとしない。しばらくお互いに無言になって、ナルトの尻尾がぷるぷると震える。
「……ナァルト?」
「……あい」
「オレに何か言うことがあるんじゃない?」
「………」
ぽっこりと膨らんでいるナルトのお腹。またラーメンスナックを一袋平らげたことは明白だ。食欲があるのは良いことだが、この仔狐の場合、きちんとした食事より菓子類で腹を満たしてしまうことが多々ある。ただでさえ不規則になりがちなカカシとの食生活である。せめて健やかに成長を促してあげたい、というカカシの親心ならぬ飼い主心は偏食家のペットには伝わらないのだろうか。
「しゅきありっ!」
「こら!ナ~ル~ト~~~っ!!」
むんず、と尻尾を掴まれてナルトの背筋が総毛立つ。
「なうとの尻尾、掴んじゃだめっ!!」
「わ!?」
「お風呂は嫌だってば~~!!」
ナルト、会心の一撃。ガリリという音と共にナルトの絶叫が上忍寮(家賃格安)に響いた。





「おー…。今日は随分と男前な顔だな、カカシ」
「うるさいよ。アスマ」人生色々に現れた銀髪の同僚を見るや否な、口元を愉快そうに弛めたのは猿飛アスマだ。暗部の後輩等が、カカシ先輩が女性と修羅場でもしてきたのだろうか、と色めいたのも束の間、
「はぁん。犯人は狐っ子か」
「あいつ。思いっきり引っ掻きやがって…」
「そりゃ、朝からご苦労なこった」
カカシがため息と共に長椅子に腰掛ける。ついでにガックリと後輩等も項垂れる。
「なぁー、アスマ。おまえ、甥っ子いたデショ?」
「なんだ。神妙になって気持ちわりぃ。育児の相談か?」
長椅子に座ったカカシは暗い顔をして、髭の同僚を仰ぎ見る。暗部すら仰け反ってしまうような陰鬱なチャクラを向けられて、アスマは視線を明後日の方向に向けた。ちなみに明後日の方向に向けた視線の先では後輩暗部等が壁に貼り付けられるようにして固まっていた。
「風呂に入りやしないんだよね。あいつ」

……
………。
「あー。まぁ、名案があるぞ」
このままでは人生色々の平穏に障りが出る…と踏んだアスマは、早急に問題の解決に向けて、全力で同僚の育児相談にノッた。まったくご苦労な男である。





「よしよし、おまえたちはいい子だなー」
麗らかな休日の午後のことである。ナルトはカーテンの陰に隠れてカカシによしよしをされる忍犬を目を三角にして睨んでいた。カカシにブラッシングしてもらうのはなうとが一番先だってば!そこはなうとの特等席だってば!ムクれ出す理由など、挙げてしまえばキリがない。獣としての本能なのか、ナルトは縄張り意識の強いお子様であったのだが、そこは飼い狐、カカシの膝を縄張り扱いしているズレっぷりだ。
「ううー…」
半眼で睨んでみた。おれってば危険なこぎつねなんだってばよ、という気持ちを込めて、パックンを睨む。しかしパックンはナルトのことをちっとも相手にしてくれない。これが、熟練の忍犬と狐の子供の違いというやつであろうか。
「うーーー…」
風呂場にしゃがみ込んだカカシは大きな桶で忍犬を洗っている。お風呂でわしゃわしゃ…。とても気持ち良さそうな気がする。あれほど嫌だったのに不思議だ。カカシの大きな手が忍犬の身体にふれるたびに嫉妬の嵐である。
「かぁち?」
小型中型の忍犬を洗っていたカカシの背後にナルトはととと…と歩み寄る。
「なうともお風呂入る…」
「いいよー、別に。ナルトは入りたくないんだもんな」
カカシの気のない返事にナルトは唇を引き結んだ。裸足の足をフローリングの上で彷徨わせた後、ぷぅっと膨れる。
「ちがうもん。かぁしがどーしてもって言うなら入ってやらなくもないんだもん」
「あっそう。じゃあ、いいよ」
極限までイジワルをするカカシに、じわぁ、とナルトの表情が歪んだ。「かぁし、なうと。泣くってばよ。なうと、泣くってばよっ!?」涙を溜めて天井を睨んでる。
「うぇ…」
目の淵に大粒の涙が溜っているのが自分でもわかる。
「うぇええ…」
そのままプルプルと体を震わせていると、カカシの顔が真上に現れた。
「反省した?ナルト?」
カカシが首を傾げる。微妙な表情の変化で、ナルトにしかわからないが、少しだけ嬉しそうな顔。
「なうとってば、お風呂怖くないってばっ」
「なうとってば、全然へーきなのよっ」
プルプルと震えた体のまま仔狐は有りっ丈の勇気を振り絞ったのだった。





「いーち、にーい、さーん、しー、ごー、なるとのなー」
「よしよし、ちゃんと数字言えるようになったねー、おまえ」
「なうと、えらい?かぁしの忍犬よりずっとえらいってば?」
ぱちゃん、と水音を立てて、ナルトが湯船から身を乗り出す。「肩まで浸かる~」とおかんちっくなことを注意しつつ、カカシはナルトを膝の上に乗っける。向かい合って浸かってるのはカカシとナルトの一人と一匹。飼い主とペットはただいま入浴中だ。
「あひるちゃん、ぶくぶく~」
「おまえ、遊んでばっかいないで身体も洗いなさいよ?」
「あーい」
湯船から出たナルトは、シャンプーのノズルを2、3回プッシュすると、わしゃわしゃと頭を泡だらけにする。豪快だけど、なんていうか風呂に入ったペットがやけに痩せっぽっちだったことに気付かされた主人の気分としてはどうなのだろう。
「あわあわ~!!」
頭にてんこ盛りの泡を載せた仔狐は、ニシシと笑いぶるると身震いする。
「あー…」
撒き散らされた泡にカカシはしばらく呆然とした後、自身も湯船から出た。
「かぁし、洗って~」
「はぁ。もうナルトは大人になったんじゃないの?」
「それは明日からなんだってばよ!」
それ毎日言ってるなぁ、なんて思いながらカカシはカエルちゃんのスポンジを泡立てる。パタパタと左右に振られる尻尾を避けながら、カカシはカエルちゃんのスポンジで仔狐の体を洗った。





「おふりょあがりのみるくーーーっ!」
んく、んく、ごっきゅん。肩からタオルを垂らし腰に手を当てたナルトは冷蔵庫から出した牛乳を一気飲みする。
「くあーっ。んまい!」
「おい、おい。ちんまいくせにオヤジくせぇなぁ」
口の周りに牛乳を付けたナルトはきょとんと玄関に視線をやる。
「あー。あしゅま!」
ナルトの視線の先には、アスマの姿があった。カカシ宅に飲みにやって来たらしく、ご丁寧にも酒の肴を持参だ。
「あしゅま…、ぶよぶよ!」
「おい…」
「ぶふっ」
バスタオルを腰に巻いて風呂から上がって来たカカシが偶然ナルトの台詞を耳に拾ったらしく、珍しくあからさまに吹き出している。
「かぁしはすっきりしてるってばよ。あしゅま、ぶよぶよ!うきわ!びーるっぱら!」
ナルトは自分の分らしきカップアイスをアスマのビニール袋からダッシュすると、とたたた、とカカシに抱き付く。「アイス!かぁし、これなうとのアイス!いいでしょ!」とぴょんぴょんした後、カカシの背中越しにふっふっふっと怪しく笑って、飛び出る。
「なうとのしょーぶぱんつだってばよ!」
得意気にドットの紐パン姿を見せびらかす仔狐の常識に、誰かどーにかしてくれ、と煙草を吹かすしかないアスマであった。












 
 
 
 
 

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管理人の生態
自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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