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空気猫

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少し文章が不調です。







夜の木の葉に、転々と光を灯すように夜店が並んでいる。どこからか、聴こえるお囃子の音。居酒屋から、的屋のような店まで宵闇に浮かび上がる蛍の光のようだ。酒気を帯びた里人がガヤガヤと浮かれる中、ナルトはカカシを見上げた。
「カカシ先生。少し飲み過ぎてねぇ?」
本日のナルトの服装は、和服ではなく平素通りのカジュアルなもの。カカシは、無趣味な男らしく里支給のアンダーを身に付けただけの恰好だ。ナルトはカカシの手に持たれた酒の入った瓢箪に目を落とし、眉を潜める。
「んー。まぁ、全部オレだけで飲むわけじゃないから、大丈夫でしょ」
「……?オレは飲まないってばよ?」
少なくとも、カカシほどの上忍を簡単に酔わすような強い酒は…。という意味を込めて恋人を振り仰げば、片方だけしか晒されていない瞳がニッコリと微笑んだ。



「ちょっとだけ寄って来るところがあるから、ここで待ってて?」
「………」
辿りついたのは人並から外れた森の中だった。有無を言わさない様子で、石に座らされたナルトは少しだけ唇を噛んだ。カカシが向かった先に、嫌と言うほど思い当たることがあるだけに、切なくなる。
「んだよ。せんせぇ」
青年は唇を尖らせて俯いた。そりゃ、カカシの半分しか人生経験のない自分には、彼の抱える葛藤は計り知れないかもしれない。だがしかし、自分を残して去っていく背中を見ると、どうしてもやるせない気分になるのだ。過去に打ち勝てない自分の歯がゆさも含めて。






「どうして出て来てくれないんだ…」
森の真ん中にあるのは、古い石碑。今でこそ、忍は単体で墓を持つことが多くなった。死体を回収する確率も上がっている。しかし、カカシが忍として活躍し始めた頃は違う。まだ、忍が個人として認められず、ただ道具であった時代。そんな時代に個々の墓を作る習慣などなかった。だから、彼の親友はこの石碑に名前を刻まれている。英雄…つまりは殉職者として。
「オレに、言いたいこと、たくさんあるはずだろ。――オビト」
空から降って来たあの石ころがこの辺りの磁場を狂わせ、死者を生き返らせると言うのなら、何故おまえは生き返って来ない。死体が木の葉に帰らなかったからなのか。それとも、この世に未練がなかったからのか、カカシには判断する術はないが、父も師も黄泉返ったというなら、何故、チームメイトであった親友は現世に姿を現さない。
「オレはおまえに謝りたい…。許してくれなんて言わないから、お願いだからオレに謝罪をさせてくれ…。愚かだった自分を、謝っても謝り足りくらいなんだ…」
今でも残る悔恨。どんなに周囲から素晴らしい忍だと褒めそやされようと立ち止まってしまう。自分の背後にある石碑を振り返って。愚かな自分を責めても、責めても、足りないくらいなのに。
オレだけが幸せに笑っていて、いいのだろうか。
存在していてもいいのだろうか。
飯を食って、酒を飲んで、仲間と笑い合っていいのだろうか。
――ナルトと幸せになっていいかな。自問自答の日々。
自分に笑いかけてくれるナルトの笑顔が頭の中に蘇えって、それでも自分の存在意義が揺らぐ。何も出来なかったんだ、何も。手のひらからこぼれていく大切な人たちを掬いあげることも、師のように英雄となることも出来ずに。
振り返ってみれば悔いばかりが残る。最善の選択をしたと思っても、何かを取りこぼしてしまう。
人は神ではない。
過ちを犯す生き物だと書籍から学べても、納得することが出来ない。
わかってはいても、自分の無能具合に吐き気がする。
いっそ、心音を停めてしまいたかった。
昔の己なら速やかに呼吸を停めただろう。ただ、それを実行しなかったのは、忍として任務で死する道を選んだからだ。結果、忍としての栄光を手に入れたが、普通の人間が享受するような温もりは、反比例するように遠のいた。
周囲は自分を天才だと持て囃すが、所詮その程度の人間でしかないのだ。
あくびが出てしまいそうな平凡な生活、家族、親友、手に入らなかったものの、なんと尊いことか。
親を失い、師を失い、友を失い、心を失った。
それでもカカシが生きていたのは、光がまだ残っていたからだ。
「カカシ先生…」
青年の声が夜の演習場に落ちた。
「どうして」ここにおまえが?と、カカシは俯いていた視線を上げる。
「オレ、もうガキじゃないんだぜ。カカシ先生の気配くらい追えるってば」
どこかふくれっ面で青年はぐいぐいとカカシの忍服を引っ張っている。
「追いて行くなよ。ここに来るならオレも連れて来てって何度も言ったってば」
「来なくても、大丈夫だったよ」
ナルトはカカシの頬を両手で挟むとなおさらむくれたような顔をした。
「だめそうだったから来た」
困ったように苦笑されて、カカシは、戸惑うばかりだ。
「家に帰ろう?カカシ先生?」
何故だか、当たり前のような顔で家という言葉を使ってくれる青年に涙が出そうになった。




























きっとオビトさんはカカシ先生がイジイジしている限り出て来ない。親友に謝られる趣味はないので、男のプライドにかけて、絶対出て来ない。
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名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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