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空気猫

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夏ぐらいに書いてた。そして入院した(出オチ)。尚、本にするかもしれないので、途中ぶつぎりになるかもしれません(需要少ないだろうから小部数予定)。それでもいいと言う方はknockknockクリックしてください。






き虫
  夕顔 の

            
+:
                      



うずまきナルトが視力に異変を感じたのは、なんてことのないDランク任務を終え、いつものようにボロアパートに帰宅した時だった。買い溜めをしたカップラーメンを戸棚に仕舞い、冷蔵庫から取り出した賞味期限ギリギリの牛乳を飲み終え、部屋の中を見回そうとした瞬間、ナルトの視界は暗闇に包み込まれた。
「………?」
始め、ナルトは自分の身体に起こった異常事態を理解出来ずにいた。あたかも、日のあるうちにうっかり昼寝をしてしまい、目が覚めた時に部屋の中が真っ暗だった時のように、寝惚けてしまったのだろうかとさえ思った。なにしろ近頃の木の葉の里ときたら稀に見るほどの猛暑日が続き、少しくらい幻覚を見てもおかしくないほどの気温だったのだ。
しかし、唐突に呆気なくナルトの視力は失われた。まるで弱っている蛍光灯がついに役目を終えた時のように、ナルトの視界は閉ざされたのだ。
「どうしてだってば…?」
暗闇であるはずの世界で、ミンミンと鳴くセミの鳴き声が如何にも不可思議で、ナルトは首筋を伝った汗を慎重に拭った。太陽はどこに行ってしまったのだろう。そんな馬鹿げたことすら思ってしまうほどには混乱した。
そこに在ったはずの、キッチン、冷蔵庫、テーブル、食べかけのカップラーメン、生活雑貨の全てが消えてしまい、残されたのは暗闇だけだった。
「あっ!」
ナルトは慎重にテーブルの位置を確認した。小さな手の平に、木目の感触がじっとりとふれ、それだけを頼りに伝うように歩く。一人暮らしの長い子供は、自分一人で何かを解決することには慣れていた。誰かに頼る、助けを呼ぶ、などという考えは露ほども思い浮かぶはずもなく、だから躊躇いながらも一歩を踏み出したわけなのではあるが、床に転がったコップに蹴躓いて、ナルトは物の見事に転倒した。そうだ。先程、視界が暗闇に包まれた時に驚いた拍子に零してしまった牛乳なのだと思ったが、突っ伏した床が冷たかった、それがなぜか泣きだしてしまいそうになるくらい哀しかった。
「―――…っ」
何も、見えない。ここは自分の家であるはずなのに、途端に不安を覚えた。暗闇に包まれて右も左もわからない。嗚咽を堪えていると、ガララと窓が開く音がした。むん、と夏の熱気を帯びた熱風が部屋の中へ入ってくる。
「ナールト」
その時、ちょうどタイミング良くというか、ナルトにしてみればタイミング悪くというのか、子供の担当上忍である大人が、わりと日常的な所作で窓から子供宅へ不法侵入を果たした。
「ナルト…!?」
声がしたと思えば、次の瞬間にはナルトは大人の腕の中で抱き上げられていた。おそらく大人は瞬身の術でも使ったのであろう。
「おまえ。大~丈夫…?」
苦笑と共に少しだけ間延びしたいつもの声が頭の上から振ってくる。それだけが日常で、だけど担任教師の姿をまったく視界に捉えることが出来ないこの視界の状態は非日常だった。
「おまえねぇ、いくらなんでも仮にも忍が転ばな~いの。ん?どうした?どこか痛いところあるか」
「………」
「ナルト…?」
戸惑ったようなナルトの様子に、それまで眠たそうにしていた担任教師の瞳が驚愕と共に見開かれた。もちろん、そんな教師の顔すらナルトには見ることが敵わない。
「ナルト。おまえ…―――どうした!?」
「……あ」
わからない、とナルトが口籠る。オレンジ色のジャケットから覗く鎖骨は驚くほどか細く、やけに頼りない。
「見えない…」
「は…?」
「何も見えないんだってば」
どこか、焦点の合わない瞳で、己を見上げる子供の様子に嘘はない。子供の視線はカカシの肩口を彷徨ってすり抜けた。
「ナルト。おまえ…」
くしゃりとナルトの顔が歪んだ。ごめんなさい、と誰に向けてかわからない謝罪が呟かれ、ただ戦慄く子供を掻き抱いて、カカシは窓の桟に足を掛けた。
「―――大丈夫だ。先生が、ついてるからな」
何が大丈夫であるのか、大人にすらもわからないだろう。カカシはナルトをシーツで包むとそのまま木の葉病院へと運んだ。







 
 
 
 
 






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名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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