空気猫
空気猫
そんなわけで12歳になりました編2
その日、木の葉の里は快晴に恵まれていた。昨日。ナルトは結局、明け方近くに帰って来たカカシを夢現の中で出迎えいつものように二人同じベッドの中で丸くなり眠った。カカシの息からは、ナルトがまだ飲んだことのないアルコールの仄かな匂いがしてそれが胸を締め付ける。
そして、太陽の陽射しが燦々と降り注ぐ中、ナルトはひよこさんのポシェットを横掛けにして、ぽてぽてと道を歩いていた。
ついでに忍者戦隊木の葉レンジャーの主題歌を元気良く歌い、道端の猫じゃらしを片手に、三角耳とふさふさの尻尾を揺らしていた。ボア付きのオレンジ色のジャケットを着た半人半獣の子供は道中で酷く目立ったが、子供が〝はたけカカシ〟のペットであることは、ある程度里中に広まっていたので、大した騒ぎにはならない。
〝ナルト〟の迷子札がタグに付いたオレンジ色のジャケットはナルトのお気に入りだ。以前、カカシが買って来た上下揃いの同じ衣服はすでに着られないほどナルトのサイズは大きくなったのだが、カカシがそっくり同じものをナルトが成長する都度、用意してくれているのである。
既製品ではないそれは、どうやら手縫いのようで、大好きなカカシが縫ってくれたと思うと、それだけでナルトの気持ちは温かくなった。本当は、裁縫の不得意なカカシに代わりタグ付け以外はアスマが縫ったものだったが、それでもナルトは嬉しいのである。
なにはともあれ、ナルトは今日も幸福なのだ。子供用の忍者サンダルが、地面を蹴る。やがて、木の葉の中心部に出ると人生色々の前で、緑色の忍者ベストを着たスカした上忍の姿があった。
「あ。サスケ…」
「よう、ウスラトンカチ」
「オレってばウスラトンカチじゃねえもん!」
「なら、ドベと呼んだ方がいいのか?」
向かい合った一人と一匹を表現するなら、まさに〝ばったり〟といった表現が相応しい。ちなみに、二名の身長差を述べるならナルトは青年の腰元ほどだ。
「何してるんだ」
「べっつにぃ…」
「こんな所を一人でほっつき歩いて、またカカシに叱られても知らないぜ?」
ナルトに、皮肉気な台詞を言い放った青年の名前は、うちはサスケ。17歳。職業、上忍暗部。はたけカカシの直接の弟子であり、ナルトとは何故か初めて会った時から犬猿の仲である青年だ。だから、ぷくう、と餅のようにナルトは頬を膨らませた。
「サスケには関係ねぇもん。ぷーん」
「そうやってすぐにムキになるところがガキだな」
「うううっせえの。オレってば、カカシ先生に会いに来たんだってば。おまえに用はねぇってば!」
ナルトの両拳がサスケの腹部の前で空を切る。サスケの腹部に突進しようとしたナルトだが、見事に襟首を掴まれ、両足は中にバタバタと浮いてしまった。
「サスケなんていーでべーなんだってばよ。あっちいけ!」
「おまえ、カカシの任務が終わるまでここに一人で待ってるつもりなんだろ。…今日の任務は結構かかるぜ?」
カカシと同僚でもあるサスケが皮肉気に言い放つと、ナルトは大きな口に二本牙を、ぽかんとした。そして、ジタバタとサスケの手から逃れようと暴れた末に、地面に着地する。
「別にオレってば1人でも寂しくないってば!」
「あ、そうかよ」
ナルトの答えにサスケは、あっさりと相槌を打つ。そして、上忍待機所に向かって歩いて行ってしまった。
「………」
「………」
「………ふぇ」
ナルトは呆然としてサスケの後ろ姿を見詰めた。道端に一匹取り残されてみると、途端に周囲の音が物寂しくなる。やがて、垂れた耳がふるふると震えた。
「さしゅ…」
モゴモゴと呟いた、ナルトを余所にサスケは振り返ることもなく人生色々の建物の中へ、消えて行こうとしてしまう。
「……!」
落っこちそうなくらい大きな碧玉が、ぱちくりと瞬いてから揺れた。
「ま、待てってば。おまえが暇ならオレの相手してくれても良いんだってばよっ!」
忍服の下部を小さな手で引っ張られ、サスケは尻尾を丸めて自分を見上げている狐の子を見下ろした。もう少しで涙が落ちそうなうるうるとした瞳。泣きそうな顔。不安そうに垂れた三角耳。サスケは、仏頂面で小さな子狐を見下ろした。
人生色々の前に隣接されているベンチの座っていると、サスケから汁粉ドリンクを渡されて、ナルトは〝きゃーー〟と歓声を上げた。齢12歳の仔狐の大好物は油揚げでもなく、ラーメンと甘味ジュースなのだ。
「サスケにしてはナカナカ気が利くってば」
「おまえなぁ…」
「有り難く受け取るってば。サンキュッ」
「たく、カカシの野郎はどんな教育してんだか」
「む。カカシ先生の悪口言うなってば。おまえ、サスケのくせに生意気だってばよ!」
「なんだと」と大人げなくもサスケの額に青筋が浮かび、暢気なひよこ頭をポカンと叩く。
「ぎゃいんっ。痛いってばぁああ…!!」
「甘やかされ放題で育ちやがって。――ったく」
唇を尖らせて、上目遣い気味に己を見上げるナルトに、視線を逸らしつつ、仕方なく頬に付いた餡の粒を親指で拭ってやる。
「なぁ、サスケェ?」
「…んだよ」
ベンチに並んで座ったサスケとナルトは、傍から見ると、近所のお兄さんとその子供といったところであろうか。それにしては、ナルトの頭を飾る大きな三角耳が不自然ではあるが…。
ふう、と珍しくため息を吐いたのは、ナルトの方であった。
「オレってば恋しちゃったかもしんねぇ」
「………はぁ!?」
頬を風船を膨らませたみたいにして、仄かに染めたナルトの様子に、トマトジュースの缶を啜ろうとしたサスケは、思わず喉を詰まらせそうになってしまった。
「な、なんだよ、急に」
ガキのくせにいつのまに色気付きやがって、と舌打ち混じりに言い掛けたサスケは、ナルトの次の台詞を聞いて、喉元まで出掛かった言葉を飲み込んだ。
「でも、今のオレなんてカカシ先生にとって可愛いペット未満なんだってば」
「………」
「カカシ先生の、鈍チン」
「……。あんな奴のどこがいいんだよ」
何故か、怒ったようなサスケの口調に、ナルトはきょとんと耳を片っぽ提げた。
「彗星みたいに綺麗な銀髪だろ。紺色と宝石みたいな右の赤い眼。オレのこと撫でてくれる時のおっきい手、ぎゅってしてくれる時、時々くしゃって笑う顔、ぜーんぶ格好良い。そのうえ、お仕事中はしゅーってびゅーんなんだってば。な。世界で一番、格好良いってば?」
「……オレに振るな」
「はぁああ。あの人がちょっとやそっとのことでオレの気持ちに気付いてくれるはずがないってばよぉお…」
頭を抱えるナルトを見て、一応、飼い主が「朴念仁」であることは気付いていたのかと、サスケはわけのわからない安堵をした。
「おまえも厄介な奴に惚れたな…」
ベンチにダンゴムシのようにまるっと蹲ったナルトの頭を撫でつつ、サスケはため息を吐いた。そのままサスケはふわふわした子供の感触から離れがたかったのか、何度か手を行き来させる。
「言っとくが、あいつの趣味は年上の美人だぞ」
「…うぐ」
〝それも女の〟と付け加えて、さらにナルトの耳はヘタれる。チビでちんくしゃのナルトにとっては痛いスタートラインだ。
「うう。この際、雄とか雌は関係ないってば。この間テレビで観たドラマでやってたってば。オレってば大人のテクニックを磨いて、カカシ先生を落とす!」
「はぁ?」
「ちょうどいいってば。サスケ。練習させろってば!!」
「は?」
「〝ちゅー〟の練習だってば…!」
「何言ってるんだ、馬鹿。こら、ウスラトンカチやめろっ」
「サスケ。じっとしてろってば」
「お、おい。ナルト…」
ぼたたた、と涎がサスケのジャケットに落ちる。自然と12歳児に押し倒される格好になって焦ったのはサスケだが。ぐぐぐ、仔狐を押しのけると「やめろ」「やめねぇ」の喜劇のような押し問答が開始された。
「――あれぇ。ナルト、何やってるの?」
「ふ、ふぇ?」
「カカシ…!」
サスケに馬乗りになったナルトの姿を発見したのは、丁度任務を予定より早く終え人生色々の前にやって来たカカシだった。
「………んー、ナルトォ?」
「カ、カシセンセ…」
「………」
カカシは利き手で後頭部を掻きつつ、唯一晒されている右目で眠そうに一人と一匹を見た後、ぽんっと拳を手の平の上で打った。
「あ、あの。カカシせんせぇ……?」
「………」
「そっかぁ。おまえ、サスケのことが好きだったんだねぇ…」
仲善きことは美しきかな、と言い残し、煙と共にニッコリあっさりカカシの姿が消える。
本人は気を使ったつもりなのだろうか。
「…。おい、ドベ。今のは不味いんじゃないか」
「………」
「ドベ?」
「カカシ先生に誤解されちゃった…」
「………」
しばらくの沈黙の後、サスケの腹の上で、見る見るナルトの瞳が潤んでいく。やがて、涙の粒が決壊した。
「うわーーーん、サスケのせいだってば。ばかーーーーーーっ」
その日、ナルトは噴水のような涙を流して、サスケをポカポカと叩いた。
サスケくんはなんちゃって木の葉設定ということで17歳にしてみました。
つまりは歳の差があった方がなんでも美味しいという話です。
日常編
―初恋の時間―
「カァシーー!!!」
パタパタパタ。どたた。可愛らしい足音と共に玄関のドアが開いた。ドアの前に三角耳と尻尾付きの子供が頬を紅潮させて立っていた。そんなはたけ家の昼下がり。
「どーしたの、ナルト」
ソファーに寝転んで、読書に耽っていたカカシは、億劫そうに顔を上げた。
「オレってば好きな子できたっ」
「へ…?」
「しゅごい可愛いの。頭が桃色でおめめがぱっちりで、お花の名前の女の子なの。お姫さまみたい。なうってば一目惚れ!」
「あー…、もしかしてそれは春野サクラか…?」
「カァシ、凄いってば。なんでわかったんだってばっ?」
「いや、おまえの後ろにいるから」
「へ?」
「カカシ先生がその子の保護者なんですか?」
「サクラ、久しぶりだな。長期任務はどうだった?」
玄関先に立っていたのは、木の葉の里の中忍春野サクラだった。カカシの数少ない教え子の1人で(とはいっても後に医療のスペシャリストである三忍の1人に師事を仰いだのであるが)、雪の国に長期遠征に行ったきり木の葉を離れていたのだ。
「サスケも帰って来たのか」
「ええ。今、任務報告書を出しに行ってるわ。呼びますか?」
「いや、いいよ。そのうち任務で一緒になるだろう」
人間二人の会話に、ナルトがぽかんとした顔で、首を傾けた。狐っ子は好奇心が旺盛だ。
「教え子の春野サクラだ。おまえと会うのは初めてだったな」
「初めまして、ええと」
「なうとだってば!」
ナルトは片手を上げて大きな声で返事をした。良い子のお手本にしたくなるような元気なお返事だ。
「サクラちゃん。なうとってばサクラちゃんに一目惚れ!」
「あら、まぁ…」
今年で17歳になる春野サクラは、片頬に手を当てて、7、8歳くらいの小さな人獣の子供を見下ろした。オレンジ色のファー付きのジャケットの上下揃いを着た子供は、大層愛らしい。
「ナルトね。私は春野サクラ。よろしくね?」
「おう。なうとってばサクラちゃんのこと、だいしゅき!」
サクラがしゃがみ込んでナルトの手を握ると、子供と同じ視線になる。
「でも、サスケは嫌いなのよー」
「あら」
唇を尖らせたナルトに、サクラは思わず破顔した。
「サクラ。ナルトはサスケにも会ったのか?」
「はい。でも、何だか二人とも気が合わなかったみたいで。サスケくんも子供相手に大人げないったらないんですよ」
「アイツってばスカしててムカつくんだってばぁ~~」
ぷくう、と頬を膨らませたナルトは、「やーよ。サスケ、やーよ」を繰り返している。
ぷっ、とカカシが吹き出した。
「ナルト。おまえ、お外に行ったならおててを洗って来なさい?」
「うぇ? あーい…」
三角耳の子供が洗面所に消えて行くのを見ながら、くくく、と背筋を丸めて笑う教師を、サクラは物珍しそうに見たあと、はたけ家のベランダに目を移した。そして、首を捻る。
「カカシ先生、あれはなんですか?」
サクラが指差したその先にあったのは女の子用の下着。それも、子供用。それが爽やかな風に靡いてベランダで乾かされていた。
「ん?ああ。ナルトの下着だけど?」
「え。だって……」
サクラが口元に手を当てる。けして、サクラに悪気があったわけではない。
「……あう?」
丁度その時、洗面所から帰って来たナルトが、こてんと首を捻った。びしょびしょの手のまま、カカシに抱きつこうとしたものの、次のサクラの台詞に、狐っ子はフリーズしてしまった。
「だって、これ。女の子のパンツじゃないですか。男の子なのにどうして女の子用のパンツを履いてるんですか?」
尻尾付きのナルトはそれまで、履き心地の良さから女の子用のショーツを愛用していた。飼い主のカカシがそうしたことに構わない性格もあったし、ナルトとて幼子故に、それを恥ずかしいと思う事もなかったのだが…。
「カァシ。なうってば、もう女の子のパンツ履かない、お、男になる。男の子のパンツ履くってばぁっ」
〝サクラちゃんに笑われたってば〟
サクラが帰った後、ナルトはカカシの膝の上でシクシクシク啜り泣いて、鼻水を垂らしていた。初恋の女の子に笑われた事が相当ショックであったらしい。
「んー。そうかぁ。ナルトは男になるのかなぁ。少し寂しいなぁ」
「………?」
「ナルトの初恋はサクラなんだね。もう、オレはいらないかな?」
カカシの一言にナルトは三角耳をぴんと立てる。狐の子供の口は何か放り込めそうなくらいぽっかりと開いていた。
「なうと…!!カァシが一番!!カァシだけだってばよ!!」
「そう…?でもさっきはサクラが好きだって言ったでしょ?」
「カ…っ。カァシが一番大事。カァシ以外いらない!!ほんと、うそじゃないっ!!」
「ナルト」
「ふぇえ、かぁしぃ…」
その日、ナルトは一日中、泣きべそを掻いてカカシの膝を思う存分濡らしたという。
次の日の朝、ナルトは硬いフローリングの床の上でシーツに包まれ、生まれたままの格好で目を覚ました。なぜ、裸なのだろうかと疑問に思って、ぐるりと自分の部屋のものではない天井を見渡す。床にこびり付いた絵の具。皺ひとつないベッド。油絵の具と、体臭がほとんどないはずのカカシの微かな匂いに満たされた狭い部屋。ここがどこであるか記憶の回路が巻き戻るように思い出した。
自分の顔半分を遮るように回された腕と、耳元に掛る僅かな寝息。足の間に器用に入り込んでいる大人の足は、拘束の域を飛び出して、すでにがんじがらめという言葉が相応しい。ナルトは、そろそろとカカシの腕から抜け出そうとして、またシーツの中に引き戻される。
「ううん…。もうちょっと寝かせて」
「離せってばぁ。カカシセンセ~」
粘着力のやたらと強いアメーバのように、自分の身体に密着する大人の身体をナルトは豪快に引き剥がす。
「うう、なんだか身体のあちこちが痛いってば…」
関節の強張りと、己の下腹に残る僅かな鈍痛。
「水……」
喉の様子もおかしい。ナルトは、子犬が欠伸をするように屈伸し、頭を振るとそこらへんに散らばっていた自分のトランクスとカカシのTシャツを適当に羽織って起き上がったが、
「うぁ……」
身体が宙に浮いたような、微妙な感覚に驚いて、ナルトは2、3歩歩いたところで情けない感じでコケた。
「た、立てねぇ…?」
初めての朝の女の子のような体験を自分がするとは思わず、床に膝を付いた格好で呆然と口をひん曲げる。
横にはナルトをこのような状態に追いやった原因が、シーツに埋もれてスースーと暢気な寝息を立てていた。
「理不尽だ…」
「………んん…」
「うぉ、クソッ。負けてたまるかっ。進め、うずまきナルトっ?」
これまでの人生であまり使ったことのない股関節の筋肉がひきつったように痛い。それどころか、まだ身体の中に何かが入っているような妙な異物感すらあった。
首筋はもちろんのこと、体中に散らばった赤い痕といい、ナルトの初体験の朝というものはボロボロの状態で始まった。
「ナルトー、もの凄い音がしたけど大丈夫…?」
低血圧らしいカカシが、カシカシと後頭部を掻いてやっと起き上がった。
「おはよう」
「あ。はよ……」
「身体、あちこち痛いでしょ。ごめんね?」
「うっ」
「こーら、なんで逃げようとするの」
床に横たわって頬杖を突いてるカカシを振り返るやいなや全力で逃走を試みたナルトは、しかし腰に力が入らなかったのか無様にも床にヘタり込み、そのままカカシに足をむんずと引っ掴まれ、シーツの中に引き戻された。
「んあ、んんんふ…」
「んー」
シーツの中で絡まってくる腕から逃れようとするものの、すぐに唇を塞がれ、息苦しさから呼吸を求めて、口を開けた瞬間に舌を差し込まれた。
カカシはまだ寝惚けているのか、それとも身体を繋げたことによって縮まった距離なのか、いつもよりも強引にナルトの唇を求めて来る。ナルトの息はすぐに上がってしまった。
「んふぁ、カカシ先生…」
「ん、ん、ん。ナルト」
いつのまにかTシャツの中にカカシの腕が侵入して、ナルトの背骨のコツコツとおうとつのある部分をなぞり上げる。ナルトが、奇妙な声を上げて背中を反らした瞬間、シーツの中で異物感を感じた。
「………っあ?」
「あ―…ごめん」
ナルトがパチンと目を見開くとすまなそうに、カカシが謝る。
「カカシ先生……?」
「おまえがあんまり可愛いから勃っちゃった」
「へ!?」
恐る恐る視線を下げていくと、自分のモノではない何かが当たった。
「いやん、エッチ」
「なっ。オレってば別に……!!」
ナルトが赤面した瞬間、カカシのカチコチしたモノが己の下肢に擦り付けられた。
「ひゃ……!?」
「んんん……」
足の間に割り込んできた熱に驚いて、ナルトはカカシをどかそうとしたが、逆に両脇を掴まれ、前後に擦り付けられる。
「やめろってば!」
シーツからやっと脱出したナルトは朝日の眩しさに顔を顰めた。
向かい合っているのは、真っ裸のカカシと伸びたTシャツだけをかろうじて身に着けている自分だった。なんだか居た堪れない。
「ね、ナルト。オレのこれ、舐めてみる?」
「はぁ?」
ナルトが気不味さいっぱいだというのに、大人といえば余裕そのもの。胡坐を掻いたカカシが指差したのは、半勃ちになった己のペニスだった。この場合は朝勃ちという奴なのかもしれなかった。
「な、なんで」
「恋人同士はみんなしてるもんだよ」
「う、嘘吐くなってば」
「本当だよ~。オレもおまえの舐めてやったでしょ?」
疑わしそうにナルトが眉を寄せた。カカシはくつりと音を立てて笑う。男を経験すると大概の女は色っぽくなるものだと世間では言うが、今朝のナルトはつるりと一皮剥けたように大人びた表情をするようになった。
今までセックスしたあとの相手の変化などは気にも止めなかったが、抱いたことによりさらに愛おしくなる誰かと朝を迎えたのは初めてだ。
「それじゃあシャワー浴びてきてあげるから綺麗にしたら舐めてよ」
「えー……」
カカシの提案にナルトは目に見えて閉口した。確かに自分の中に入ったあとのものを舐めるよりは幾らか気分的にもマシかもしれないが…。
「だーいじょーぶ。洗ったらほとんど味しないから」
最初はね…とカカシは心の中でそっと呟く。それに気付いたのか、野生の勘なのかナルトの眉はますます寄る。
「疑わしいってば」
「ま、これも経験だと思ってやってみなさい」
「そうそう、めいっぱい咥えてみて?」
「う、う、うぶ」
「ん、咥えきれなかったとこは手で握って、いつも自分でシテるみたいに擦って?」
「~~~っ。し、してねぇ……っ」
「なーに、ナルト。おまえ、今更自慰くらいで恥ずかしがってどうするの。昨日もっとやらしくて恥ずかしいこと2人でシタでしょ」
カカシの言葉にナルトの耳朶が色付いた。大人と視線を合わせることが出来ないのか、ちゅ、ちゅ、と音を立ててカカシのそそり立つ性器に吸い付いている。まるで、赤ん坊が母親の乳を吸うような口の形だが、育ったよなぁ、なんて8年前のナルトと現在のナルトを比べてカカシは笑みを零す。
「ほら、もっと深く咥えて?」
「んんんんう」
「ん、気持ちイ……」
あの時はただ一緒に眠るだけでいい、自分の欲望などぶつけなくてもずっと傍にいれると思っていた。だが、時が立てば、気持ちも変わるもので、8年経ち15歳のナルトに再会した時、カカシはもう善良な保護者の立場でナルトを見れなくなっていた。いや、それまでもけして清廉潔白な接し方をしていたとは言えないのだが、ある程度の我慢は理性を持って出来ると信じていた。
――まさかこんなに綺麗に育つとはねぇ。愛しさでため息が出る。
金髪壁眼に三本髭は相変わらずだが、ミジンコだと思っていた手足はすらりと伸び、地面を睨んでいた瞳は真っ直ぐ上を向いていた。だからといって眩し過ぎる存在かと言えばそうではなく、ふとした拍子にまだあの日の陰を背負っている。それが危うくて、まだ辛うじてカカシにも手が届いた。
舌足らずな声が、少年期と青年期の境目のような音質となり、笑顔は人懐っこく子犬のようで、性格は男前と来たものだ。歯止めなど出来るはずもない。
「先端のとこちゅーって吸ってみて?」
ナルトはカカシの指示通り先端の出っ張った部分をおっかなびっくり咥えた。
「くっ。―――いいよっ」
カカシは愛おしそうにナルトの頬を撫ぜる。そのままナルトの頬を持ち、自分のものを好きなように擦り付けた。
ぎゅっと目を瞑った瞳にぞくりとした劣情を覚えながら、カカシはナルトの金糸を撫ぜ、小さな頭を己の傍に引き寄せた。
「んー、んー、んーーっ」
「やわらか…」
カカシはナルトの喉奥を突いて、何度か自分の熱りたったものを出し入れした。
「んう、ん、ん、ん」
軽く息を乱して己のモノを半分ほどナルトの中から引き抜いてやると、ナルトの唇は酸素を求めて開き、異物を排除しようと大きくえずった。
「にがぁ…」
「ん、ごめんな」
「無茶するってばよ、カカシせんせぇー」
涙目になったナルトが口の端に垂れた唾液を少年らしい仕草で拭い、はふっとため息を吐く。膨れっ面になったと思ったナルトはしかし、
「あむ……」
ごく自然な動作でカカシから出た先走りを舐め勃起した性器を清めた。そして、ちゅうと音を立てて性器の横側に吸い付く。
「…………」
「………センセ?」
脈打ったカカシの性器を握り締めながら、ナルトは大人を見上げた。カカシの喉が垂下され、下半身と同じく心臓が脈打ったことも知らずに。
「な、なに」
Tシャツを捲り上げる手にナルトの身体は跳ねた。
「だめ。おまえが可愛いのが悪い」
「は?」
「セカンドバージンもオレにちょーだい?」
「オレ、今日ガッコ…うわ、ぷっ!?」
時計を見ればすでに8時を過ぎている。とっくに遅刻だが、せめてホームルームが終わる前には学校に着く算段であったのに。身体中を滑る熱い手。
「ぎゃー。痛い、痛い、痛い。いきなり挿れるなぁ…っ」
「ん。ごめんね、ゆっくり愛してあげるから」
「うわぁ……!」
結局、ナルトが学校に登校出来たのは、正午を過ぎた頃だった。
自分の顔半分を遮るように回された腕と、耳元に掛る僅かな寝息。足の間に器用に入り込んでいる大人の足は、拘束の域を飛び出して、すでにがんじがらめという言葉が相応しい。ナルトは、そろそろとカカシの腕から抜け出そうとして、またシーツの中に引き戻される。
「ううん…。もうちょっと寝かせて」
「離せってばぁ。カカシセンセ~」
粘着力のやたらと強いアメーバのように、自分の身体に密着する大人の身体をナルトは豪快に引き剥がす。
「うう、なんだか身体のあちこちが痛いってば…」
関節の強張りと、己の下腹に残る僅かな鈍痛。
「水……」
喉の様子もおかしい。ナルトは、子犬が欠伸をするように屈伸し、頭を振るとそこらへんに散らばっていた自分のトランクスとカカシのTシャツを適当に羽織って起き上がったが、
「うぁ……」
身体が宙に浮いたような、微妙な感覚に驚いて、ナルトは2、3歩歩いたところで情けない感じでコケた。
「た、立てねぇ…?」
初めての朝の女の子のような体験を自分がするとは思わず、床に膝を付いた格好で呆然と口をひん曲げる。
横にはナルトをこのような状態に追いやった原因が、シーツに埋もれてスースーと暢気な寝息を立てていた。
「理不尽だ…」
「………んん…」
「うぉ、クソッ。負けてたまるかっ。進め、うずまきナルトっ?」
これまでの人生であまり使ったことのない股関節の筋肉がひきつったように痛い。それどころか、まだ身体の中に何かが入っているような妙な異物感すらあった。
首筋はもちろんのこと、体中に散らばった赤い痕といい、ナルトの初体験の朝というものはボロボロの状態で始まった。
「ナルトー、もの凄い音がしたけど大丈夫…?」
低血圧らしいカカシが、カシカシと後頭部を掻いてやっと起き上がった。
「おはよう」
「あ。はよ……」
「身体、あちこち痛いでしょ。ごめんね?」
「うっ」
「こーら、なんで逃げようとするの」
床に横たわって頬杖を突いてるカカシを振り返るやいなや全力で逃走を試みたナルトは、しかし腰に力が入らなかったのか無様にも床にヘタり込み、そのままカカシに足をむんずと引っ掴まれ、シーツの中に引き戻された。
「んあ、んんんふ…」
「んー」
シーツの中で絡まってくる腕から逃れようとするものの、すぐに唇を塞がれ、息苦しさから呼吸を求めて、口を開けた瞬間に舌を差し込まれた。
カカシはまだ寝惚けているのか、それとも身体を繋げたことによって縮まった距離なのか、いつもよりも強引にナルトの唇を求めて来る。ナルトの息はすぐに上がってしまった。
「んふぁ、カカシ先生…」
「ん、ん、ん。ナルト」
いつのまにかTシャツの中にカカシの腕が侵入して、ナルトの背骨のコツコツとおうとつのある部分をなぞり上げる。ナルトが、奇妙な声を上げて背中を反らした瞬間、シーツの中で異物感を感じた。
「………っあ?」
「あ―…ごめん」
ナルトがパチンと目を見開くとすまなそうに、カカシが謝る。
「カカシ先生……?」
「おまえがあんまり可愛いから勃っちゃった」
「へ!?」
恐る恐る視線を下げていくと、自分のモノではない何かが当たった。
「いやん、エッチ」
「なっ。オレってば別に……!!」
ナルトが赤面した瞬間、カカシのカチコチしたモノが己の下肢に擦り付けられた。
「ひゃ……!?」
「んんん……」
足の間に割り込んできた熱に驚いて、ナルトはカカシをどかそうとしたが、逆に両脇を掴まれ、前後に擦り付けられる。
「やめろってば!」
シーツからやっと脱出したナルトは朝日の眩しさに顔を顰めた。
向かい合っているのは、真っ裸のカカシと伸びたTシャツだけをかろうじて身に着けている自分だった。なんだか居た堪れない。
「ね、ナルト。オレのこれ、舐めてみる?」
「はぁ?」
ナルトが気不味さいっぱいだというのに、大人といえば余裕そのもの。胡坐を掻いたカカシが指差したのは、半勃ちになった己のペニスだった。この場合は朝勃ちという奴なのかもしれなかった。
「な、なんで」
「恋人同士はみんなしてるもんだよ」
「う、嘘吐くなってば」
「本当だよ~。オレもおまえの舐めてやったでしょ?」
疑わしそうにナルトが眉を寄せた。カカシはくつりと音を立てて笑う。男を経験すると大概の女は色っぽくなるものだと世間では言うが、今朝のナルトはつるりと一皮剥けたように大人びた表情をするようになった。
今までセックスしたあとの相手の変化などは気にも止めなかったが、抱いたことによりさらに愛おしくなる誰かと朝を迎えたのは初めてだ。
「それじゃあシャワー浴びてきてあげるから綺麗にしたら舐めてよ」
「えー……」
カカシの提案にナルトは目に見えて閉口した。確かに自分の中に入ったあとのものを舐めるよりは幾らか気分的にもマシかもしれないが…。
「だーいじょーぶ。洗ったらほとんど味しないから」
最初はね…とカカシは心の中でそっと呟く。それに気付いたのか、野生の勘なのかナルトの眉はますます寄る。
「疑わしいってば」
「ま、これも経験だと思ってやってみなさい」
「そうそう、めいっぱい咥えてみて?」
「う、う、うぶ」
「ん、咥えきれなかったとこは手で握って、いつも自分でシテるみたいに擦って?」
「~~~っ。し、してねぇ……っ」
「なーに、ナルト。おまえ、今更自慰くらいで恥ずかしがってどうするの。昨日もっとやらしくて恥ずかしいこと2人でシタでしょ」
カカシの言葉にナルトの耳朶が色付いた。大人と視線を合わせることが出来ないのか、ちゅ、ちゅ、と音を立ててカカシのそそり立つ性器に吸い付いている。まるで、赤ん坊が母親の乳を吸うような口の形だが、育ったよなぁ、なんて8年前のナルトと現在のナルトを比べてカカシは笑みを零す。
「ほら、もっと深く咥えて?」
「んんんんう」
「ん、気持ちイ……」
あの時はただ一緒に眠るだけでいい、自分の欲望などぶつけなくてもずっと傍にいれると思っていた。だが、時が立てば、気持ちも変わるもので、8年経ち15歳のナルトに再会した時、カカシはもう善良な保護者の立場でナルトを見れなくなっていた。いや、それまでもけして清廉潔白な接し方をしていたとは言えないのだが、ある程度の我慢は理性を持って出来ると信じていた。
――まさかこんなに綺麗に育つとはねぇ。愛しさでため息が出る。
金髪壁眼に三本髭は相変わらずだが、ミジンコだと思っていた手足はすらりと伸び、地面を睨んでいた瞳は真っ直ぐ上を向いていた。だからといって眩し過ぎる存在かと言えばそうではなく、ふとした拍子にまだあの日の陰を背負っている。それが危うくて、まだ辛うじてカカシにも手が届いた。
舌足らずな声が、少年期と青年期の境目のような音質となり、笑顔は人懐っこく子犬のようで、性格は男前と来たものだ。歯止めなど出来るはずもない。
「先端のとこちゅーって吸ってみて?」
ナルトはカカシの指示通り先端の出っ張った部分をおっかなびっくり咥えた。
「くっ。―――いいよっ」
カカシは愛おしそうにナルトの頬を撫ぜる。そのままナルトの頬を持ち、自分のものを好きなように擦り付けた。
ぎゅっと目を瞑った瞳にぞくりとした劣情を覚えながら、カカシはナルトの金糸を撫ぜ、小さな頭を己の傍に引き寄せた。
「んー、んー、んーーっ」
「やわらか…」
カカシはナルトの喉奥を突いて、何度か自分の熱りたったものを出し入れした。
「んう、ん、ん、ん」
軽く息を乱して己のモノを半分ほどナルトの中から引き抜いてやると、ナルトの唇は酸素を求めて開き、異物を排除しようと大きくえずった。
「にがぁ…」
「ん、ごめんな」
「無茶するってばよ、カカシせんせぇー」
涙目になったナルトが口の端に垂れた唾液を少年らしい仕草で拭い、はふっとため息を吐く。膨れっ面になったと思ったナルトはしかし、
「あむ……」
ごく自然な動作でカカシから出た先走りを舐め勃起した性器を清めた。そして、ちゅうと音を立てて性器の横側に吸い付く。
「…………」
「………センセ?」
脈打ったカカシの性器を握り締めながら、ナルトは大人を見上げた。カカシの喉が垂下され、下半身と同じく心臓が脈打ったことも知らずに。
「な、なに」
Tシャツを捲り上げる手にナルトの身体は跳ねた。
「だめ。おまえが可愛いのが悪い」
「は?」
「セカンドバージンもオレにちょーだい?」
「オレ、今日ガッコ…うわ、ぷっ!?」
時計を見ればすでに8時を過ぎている。とっくに遅刻だが、せめてホームルームが終わる前には学校に着く算段であったのに。身体中を滑る熱い手。
「ぎゃー。痛い、痛い、痛い。いきなり挿れるなぁ…っ」
「ん。ごめんね、ゆっくり愛してあげるから」
「うわぁ……!」
結局、ナルトが学校に登校出来たのは、正午を過ぎた頃だった。
日常編
―暗部の時間―
はたけカカシ、26歳。特別暗殺部隊、通称暗部所属の上忍は、忍者としての華麗な経歴も然ることながら、木の葉の里で最も月の下での任務が似合う男として、後輩等の憧れの的でもあった。それは忍としてのスキルだけではなく、つまりは、覆面に殆ど覆われたマスクの下の顔が、見目素晴らしいという話だ。職業忍者としては当たり前の事ではあるが、謎に包まれたプライベートが、一層彼の人気を高めていた。もちろん、当人の知らない所で、だ。
岡惚れをする後輩等は数知れず。異性のみならず、同性にも人気だというのだから、はたけカカシとはまったく罪な男である。
これは、そんな彼と、月の明るい夜にツ―マンセルを組んでいた後輩暗部の話である。任務を終え、帰路に着く道中、後に暗部内で大論争を巻き起こした一大事件が起こった。
「――ねぇ」
それまで任務中、始終寡黙を貫き通していた上忍暗部が突然口を開いた。後輩暗部は普段無口な先輩暗部に話し掛けられたことに驚きつつ、〝はい〟とだけ返事をした。二つの影がひゅんひゅんと木々の間を疾走する。
「おまえに一つ質問したいことがあるんだけど」
「…は、はい!!」
憧れの先輩から話し掛けられたことは、後輩暗部を有頂天にさせた。あとで同僚等に、〝オレはあのカカシ先輩に話し掛けられた〟のだと自慢せねばならないだろう。しかし、次にカカシに問い掛けられた質問に、彼の思考回路は完全に停止した。暗部にあるまじき失点だ。
「なぁ、おまえ。最近、ペットを飼い始めたんだって?」
「………」
「その、他の奴等が話してるのを聞いたんだが、どんなペットを飼ってるんだ…?」
「……。ええと、彼女が最近ペットを欲しがって、オオサンショウウオを…」
余りに想像だにしない話題を振られたため、後輩暗部はモゴモゴと口を動かした。ペットをと言われキワモノを飼い始める辺り、この後輩暗部も相当変わり者であったかもしれないが、相手はアスマ曰くツッコミ機能が崩壊していると噂のあのはたけカカシである。
「そう…。可愛い?」
「は、はぁ。飼い始めれば、情が沸くといいますか…、愛嬌があるといいますか…」
後輩暗部はそこまで話して、自分は憧れの先輩暗部に向かって何の話をしているのだろう、と慌ててその会話を打ち切ろうとした。しかし、先にこのような話の水を向けたのは、カカシの方であったし、何より横を走るカカシは黙って己の話に耳を傾けている様子なのだ。
「ペットって…、――可愛いよね」
「え。えぇ…」
そのうえ思わず、同意が得られて、目を見張ってしまった。
〝あのカカシ先輩がオレと世間話を……?〟
後輩暗部の背後で稲光のような衝撃が走ったが、何とか暗部最後のプライドで平静を装う。
しかし――。次に放たれたはたけカカシの台詞にまたもや後輩暗部は思考回路を停止させなくてはいけなかった。
「……ねぇ、うちの子の写真、見る?」
「はい?」
「見たいよね、見るよね、もちろん見るよね、ていうか見なさい」
「はぁ……?」
「可愛いでしょー、うちのナルト」
はたけカカシの台詞に、後輩暗部は、任務中だというのに、感情を押し殺すことを忘れた。憧れの先輩暗部から、妙にやに下がった表情で、いそいそと差し出された写真は「きょるん」とか「きゃぴぴ」とした装飾文字が似合いそうな狐耳の子供が映った写真だった。
「あ、あの、これは…」
どう見たって、写真の中に映っているのは7、8歳の子供。それも、おかしな三角耳と尻尾のオプション付き。
加えて、何故それがはたけカカシのポケットの中から出てくるのか。更には、任務を終え里に帰る途中とは言え、特S級の任務を遂行中に、後輩相手に自慢して見せびらかしたくて堪らないといった風情満々に見せるのだろうか。
「可愛いでしょ、この子」
「は、はぁ…?」
「絶対お嫁さんには出せないよねー」
「……この子は女の子なんですか?」
「男に決まってるじゃない。物の例えだよ、例え。ほら、見てよ。この凛々しい眉毛。立派な男の子でしょ~~?」
凛々しい、と言われても写真の中の子供の眉は、男らしいというよりは、中性的ですらある。
それにどう見ても三枚目の写真は、オートクチュールドレスにモジモジと身を包んだ骨董人形のような姿なのである。
「………」
後輩暗部はゆっくりと瞼を閉じた。現実を直視するのが辛過ぎたのだ。
「ず、随分と可愛らしいお子さんですね?」
やっと絞り出した声は、訳が分からないなりにも後輩らしく、先輩を立てたものだった。
「おまえ、違いのわかる奴だねー。そうでしょー、んもう本物もすんごい可愛いんだよ。見てよ、このプニプ二のほっぺ。血色の良い毛並み!」
後輩の答えにカカシは上機嫌で、おそらく彼の中では〝ペット自慢〟を始めた。またまた後輩暗部は混乱するが、改めて写真の中の子供に目を落とす。
どうやら。カカシはこの子供を自慢する機会を虎視眈々と狙っていたらしい。確かに、うるうるとした大きな碧い瞳や、ましゅまろのようなほっぺは可愛らしいとは思う。子供の血色の良い頬や、ブラッシングの行き届いた毛並みは、何者かによって写真の中の子供が溺愛されていることがわかった。
「ぶさいくな顔がまた可愛いんだよねー」
次に出された写真は、お世辞にも愛らしいとは言い難い表情で写った狐っ子。狐目を吊り上げて、生意気そうに唇を尖らしている。
「アスマがさー、撮ってくれたんだよね。でも、こいつオレ以外の人間に懐かないからイヤイヤ~~って、―――可愛いでしょ?」
「は、はぁ……?」
アスマ上忍に子供の写真を撮る趣味が…?嫌がる子供のことを無理矢理写真撮影だなんて。ロリコン、という社会的地位を脅かすのに破壊力のある言葉が思い浮かんで、ゾゾゾゾと後輩暗部の背筋が寒くなる。ああ、そうだ。きっとああいう強面の人物に限って、小さくて愛らしいものを好む傾向にあるのかもしれない。どんなに完璧な人にも一つや二つ欠点があるという。真面目な後輩暗部は己の気が遠くなるのを感じた。
横で、憧れの先輩、はたけカカシが幼児の写真を見ながらクフクフと怪しい笑みを零しているのに気付かず、後輩暗部は、髭の上忍に対する見る目を変えていた。
〝カカシに頼まれてしぶしぶ撮ったんだよ!!〟とどこかの髭クマの叫びが聞こえてきそうであるが、後輩暗部に届くはずもない。こうして、猿飛アスマのスティタスは、はたけカカシによって崩壊させられていく。ペット共々、人を陥れるのが得意な奴等である。
――最近、はたけカカシは、大層可愛らしいペットを飼っているらしい。
曰く、「きょるん」や「きゃぴぴ」が似合うような見目可愛らしい愛玩動物。
三角耳付き、尻尾付きの半人半獣の仔狐。
〝愛らしい〟だけが取り柄で、まったくなんの役にも立たないのだが、驚くべき事に、心が凍りだと呼ばれた男の生活に潤いを齎しているらしい。一人と一匹の生活は、こうして優しい時間を積み重ねていく。
真夜中。くっしゅんと小さな仔狐が、可愛らしいくしゃみをした。そして、夜霧と共に、大好きな主人が帰宅した事に、子供の大きな三角耳が機敏に反応する。
「ただいまー…って、あれ、ナルト。まだ起きてたの?」
「なうと、ねんねしないでカァシのこと待ってた。抱っこ」
暗部服から、ラフな格好に着替えたカカシは苦笑しながら、己の足に絡み付く温かな生き物の頭を撫でた。金髪のふこふこ頭を撫でると、幸せの感触がした。
「おまえね、ちゃんと寝ないと大きくなれないよー?」
頭の上で、くつくつ笑うカカシの低い声がくすぐったくてナルトは薄っすらと頬を染めた。
「カァシ、なうとのこと抱っこなの」
両手を広げて、ナルトがカカシを見上げる。
「カァシ、おかえりなしゃい。なうと、カァシがお仕事している間、いい子してたの。明日もお仕事?」
「明日は休みだよ。おまえといーっぱい遊んであげる。久しぶりにお散歩に行こうか?」
返事の代わりにパタパタと尻尾が振られる。ぺろりと頬を舐められたのはそれと同時。
「カァシ。だいしゅき」
「はい、はい…。わかったから、もうねんねしなさい?」
「あーい」
優しく獣耳に囁き掛けてやれば、くぁっと小さな欠伸が二本の牙の間から漏れた。
「なうとは、カァシとずっとずっと一緒なのよ…」
主人が帰って来たことに安心したナルトは、うっとりとした表情で眠りの世界へと旅立った。
「おやすみ、ナルト…」
ベッドにナルトを運び寝かしつけたカカシは、三本髭の痣を慈しむようにそっと撫でた。部屋に漂う任務後特有の僅かな血臭さえも、この子がいれば不思議と気にならない。自分を一心に思ってくれる小さな存在が、愛しかった。
18禁。
すまん、と謝ってはたけサクモは死んだ。歩行者用の信号が青から赤に変わった瞬間、飛び出して来たトラックに、父の身体は吸い込まれた。そう、まさに吸い込まれた、という表現が彼の死には相応しいのだ。呆気なく爆ぜた肉片と血だまり、周囲の人間の悲鳴。カカシの頬に掛った血飛沫。コンクリートに広がったトマトジュースより色の薄い液体を見て、人の死体は汚ないものだと認識した。
トラックの運転手はアルコールを摂取していて、父の死が自殺か事故かで、しばし議論された。
大人たちに囲まれ、問い質され、自身の親が自ら命を絶ったのだと、認めざる得なかったカカシの気分は酷く惨めだった。
「馬鹿な子ね。事故だって言えばたんまりお金を踏んだくれたのに」
飲んだくれの義母は、骨壺を持って葬式から帰って来たカカシを見降ろしてたった一言だけ罵った。たとえば、あと1分あの車道に辿り着く時間が遅かったら、たとえば、もっとカカシが父の様子に気を配っていたら、引き留める術はあったのだろうか。何千回のもしもは、決定した事象の前では無意味で、すでにカカシには父の死を受け入れる選択肢しか残されていなかった。
死んだら、それで終わりだ。死者は復活しない。もっと言えばカカシは霊的な現象すら信じていなかったが、それでも長い廊下を自分の部屋と向かって歩く足音が聞こえては来ないだろうかという期待することを止めることは出来なかった。
理性では、父の死を認めることができるくせに、感情はそれについていけない。家の廊下を歩く足音はカカシの期待を裏切り靴下の裏側を擦るように歩く父の足音ではなく、義母の神経質な早足ばかりで、やがてカカシは全ての音という音を嫌悪した。
次は、彼女の香水の臭いと体臭、汗、甲高い笑い声、けばけばしい胸の開いた赤いドレス。延いては自分に声を掛けてくれる優しい同情の声、家族の団欒、夕焼け、うるさい子犬の鳴き声、窓の外から見える平和な街並み。カカシの中では全てが、油絵画家の巨匠と呼ばれた男の視線のように、狂って渦巻いていた。
死は、衝撃を持って人々に襲い掛かる。そして、時が経ったとしても、別の形を持って哀しみを齎す。悼む心は、人に涙を流させ、失ったものを求める。
欠けた心はバランスを求めて揺れ、それは天秤のように、振れては揺れて、叶いもしないものに憧れ、手に入らないものに焦がれた。カカシの感傷めいた幼い日のことだ。
「あ…あぁ……ひぃ、あぁ……」
ナルトは床に突っ伏した体勢で、カカシの体重に押し潰されてヒィヒィと喘いでいた。まるで安っぽい映画に出て来るヒロインのようだ。どうやら、内部を満たし、前立腺を擦られる感触があまりに未知のもので堪らないらしい。カカシは湧き上がる背徳感に、乾いた唇を舐めた。
初体験であるはずのナルトの身体は、カカシによって快楽を叩き込まれていた。先程見つけたナルトの感じる場所を己の欲望で何度も突いてやると、ナルトから身も世もない声が上がった。ナルトの喘ぎ声を聞くたびに、快楽で、理性が擦り切れそうだった。
「ナルト」
「う、うぅう…?」
「気持ちいーい?」
「うぅ……」
カカシの言葉にナルトは〝わからない〟とふるふると首を振った。汗で額に張り付いていた金糸の何本かがパラパラと揺れた。
「それじゃあ、ここは?」
「あああ……っ」
「ん、気持ち良かったねぇ」
「うはぁ…んんんんっ」
「もっと気持ち良くしてあげる」
「んあ………?」
「舌、噛むなよ?」
ナルトは床に這い蹲った格好のまま、霞む視界で背後を振り返ろうとしたが、思い切り引き抜かれて突かれるという衝撃に驚いて、握った拳の力をさらに強めた。
「う、う―――っ」
「ん。オレの全部入った…っね」
「あっ…あっ、あっ」
そのまま腰を持ち直されて、奥深くをゆさゆさと揺さ振られると、しとと、とナルトの性器からまだ透明な先走りが零れた。
トラックの運転手はアルコールを摂取していて、父の死が自殺か事故かで、しばし議論された。
大人たちに囲まれ、問い質され、自身の親が自ら命を絶ったのだと、認めざる得なかったカカシの気分は酷く惨めだった。
「馬鹿な子ね。事故だって言えばたんまりお金を踏んだくれたのに」
飲んだくれの義母は、骨壺を持って葬式から帰って来たカカシを見降ろしてたった一言だけ罵った。たとえば、あと1分あの車道に辿り着く時間が遅かったら、たとえば、もっとカカシが父の様子に気を配っていたら、引き留める術はあったのだろうか。何千回のもしもは、決定した事象の前では無意味で、すでにカカシには父の死を受け入れる選択肢しか残されていなかった。
死んだら、それで終わりだ。死者は復活しない。もっと言えばカカシは霊的な現象すら信じていなかったが、それでも長い廊下を自分の部屋と向かって歩く足音が聞こえては来ないだろうかという期待することを止めることは出来なかった。
理性では、父の死を認めることができるくせに、感情はそれについていけない。家の廊下を歩く足音はカカシの期待を裏切り靴下の裏側を擦るように歩く父の足音ではなく、義母の神経質な早足ばかりで、やがてカカシは全ての音という音を嫌悪した。
次は、彼女の香水の臭いと体臭、汗、甲高い笑い声、けばけばしい胸の開いた赤いドレス。延いては自分に声を掛けてくれる優しい同情の声、家族の団欒、夕焼け、うるさい子犬の鳴き声、窓の外から見える平和な街並み。カカシの中では全てが、油絵画家の巨匠と呼ばれた男の視線のように、狂って渦巻いていた。
死は、衝撃を持って人々に襲い掛かる。そして、時が経ったとしても、別の形を持って哀しみを齎す。悼む心は、人に涙を流させ、失ったものを求める。
欠けた心はバランスを求めて揺れ、それは天秤のように、振れては揺れて、叶いもしないものに憧れ、手に入らないものに焦がれた。カカシの感傷めいた幼い日のことだ。
「あ…あぁ……ひぃ、あぁ……」
ナルトは床に突っ伏した体勢で、カカシの体重に押し潰されてヒィヒィと喘いでいた。まるで安っぽい映画に出て来るヒロインのようだ。どうやら、内部を満たし、前立腺を擦られる感触があまりに未知のもので堪らないらしい。カカシは湧き上がる背徳感に、乾いた唇を舐めた。
初体験であるはずのナルトの身体は、カカシによって快楽を叩き込まれていた。先程見つけたナルトの感じる場所を己の欲望で何度も突いてやると、ナルトから身も世もない声が上がった。ナルトの喘ぎ声を聞くたびに、快楽で、理性が擦り切れそうだった。
「ナルト」
「う、うぅう…?」
「気持ちいーい?」
「うぅ……」
カカシの言葉にナルトは〝わからない〟とふるふると首を振った。汗で額に張り付いていた金糸の何本かがパラパラと揺れた。
「それじゃあ、ここは?」
「あああ……っ」
「ん、気持ち良かったねぇ」
「うはぁ…んんんんっ」
「もっと気持ち良くしてあげる」
「んあ………?」
「舌、噛むなよ?」
ナルトは床に這い蹲った格好のまま、霞む視界で背後を振り返ろうとしたが、思い切り引き抜かれて突かれるという衝撃に驚いて、握った拳の力をさらに強めた。
「う、う―――っ」
「ん。オレの全部入った…っね」
「あっ…あっ、あっ」
そのまま腰を持ち直されて、奥深くをゆさゆさと揺さ振られると、しとと、とナルトの性器からまだ透明な先走りが零れた。
「あっ。うう、なんか変な感じだってば……っ」
「腹にアタる?」
「う、うん……おナカ、いっぱいって感じで……」
苦しい、とナルトは己の腹部の辺りに手をやって異物を感じてる場所を引っ掻く。
「ん、ん、ん。ナルト……?」
「なっ、に」
「このままたくさん揺さ振っていい……?」
「………っ」
「ナルト。だめ?」
カカシの声に反応してナルトの後孔がきゅんと窄まる。耳朶を赤く染め、小刻みに震えた背中はじっとり汗を掻いているが、カカシから逃げ出そうという雰囲気は微塵もない。カカシは勃起したナルトの性器をやんわりと両手で包み込み扱いた。
「ん、ごーっかく」
「あっ、あひゃん……っ。あ、あぁ……」
「どうしよ。1回おまえの中に出しちゃおうか。それとも我慢してもっといっぱい突いてあげようか?ナルトが決めてごらん?」
「腹にアタる?」
「う、うん……おナカ、いっぱいって感じで……」
苦しい、とナルトは己の腹部の辺りに手をやって異物を感じてる場所を引っ掻く。
「ん、ん、ん。ナルト……?」
「なっ、に」
「このままたくさん揺さ振っていい……?」
「………っ」
「ナルト。だめ?」
カカシの声に反応してナルトの後孔がきゅんと窄まる。耳朶を赤く染め、小刻みに震えた背中はじっとり汗を掻いているが、カカシから逃げ出そうという雰囲気は微塵もない。カカシは勃起したナルトの性器をやんわりと両手で包み込み扱いた。
「ん、ごーっかく」
「あっ、あひゃん……っ。あ、あぁ……」
「どうしよ。1回おまえの中に出しちゃおうか。それとも我慢してもっといっぱい突いてあげようか?ナルトが決めてごらん?」
「あっ、あん。あっ、あっ、あっ。わかんなっ」
「んー……迷うなぁ」
「いいから好きにす……うぁ!?」
背後から突かれ、前を優しくしごかれた。前後の快楽に、ぴしゃん、とナルトの性器から精が弾けた。床に叩き付けられた己の精液を、ナルトは愕然と見下ろした。
「あーらら。ナルト。イッちゃった?」
「な、なんで?」
くしゃりとナルトの顔が歪んだ。前立腺を掠めたカカシのペニスに快楽を感じたからなのだが、ナルトには身の内に起こっている変化に追いつけなかった。無理矢理射精させられてしまったような気さえした。
「ん。次は一緒にいこうねぇ?」
首筋を噛まれて、ナルトは戸惑いを含んだ視線を背後のカカシに向ける。
「男はここ突かれるとみーんな勝手に気持ち良くなっちゃうもんなんだよ。ナルトだけじゃないから安心しな。ごめんな、加減がわからなくて?今度はオレがちゃんとコントロールしてあげるからね?」
「あっ、あっ、あっ。カカシ先生、んでそんなこと知ってんだよ」
「そりゃ〝先生〟ですから?」
「はぐらかすなってば」
「くくく。なに、焼き餅?別にナルトが思っているようなことはほとんどないよ?」
今度は後ろ抱きの姿勢で、緩く突き上げられながら、1回か、2回あるのかよ、とナルトはカカシを睨みつけた。
「オレも昔は色々あったの。女遊びもそれなりに激しかったし、悪いこともいっぱいした。だけど満たされなくてね、おまえに会うまでは寂しかったよ」
「んあああ。あぁぁ……?」
「おまえの中、あったかい……」
ズンズンと突き上げられ、カカシに抱えられた両足が所在なく宙を彷徨っていやらしい体勢をしている自分の姿から逃れるように、ナルトは目を瞑った。
「んはぁ…んんん。も、だめだってば。変になるってば」
「ん、そろそろオレも限界。――んんん」
「あああっ?」
「今度は向かい合ってシようか?」
「う、はぁ……ん?」
カカシは、熱り立ったものをナルトの中から引き出すと、フローリングの床にナルトを横たえた。熱っぽい瞳でカカシを見上げたナルトは、反転した世界に首を傾げる。
「んー…。ちっちゃー」
己の色素の薄い突起に吸い付いたカカシに、ナルトは慌てた。そこは女の子のものを舐めてこそ楽しい場所ではないのか。
「あっ、やん。ひゃ……そこばっかやめろってば」
自分の胸部に顔を埋めるカカシの行動に頬が赤くなるのを感じた。無い胸を揉まれ、寄せられる。片方の胸の突起は、カカシの唾液で濡れていた。
「ナァールト。またここが勃ち上がり掛けてる…」
「―――っ」
「もう一回舐めてあげようか?」
「い、いい!!」
「どっち?」
「舐めんな!」
「それじゃあこっちを舐めてあげる」
カカシがペロペロとナルトの口の周りを舐め出して、ナルトはむず痒さから顔を背けると、頬に舌の生暖かい感触を感じた。
「うーーーー」
「可愛い……。ナルト、そろそろまた挿していい?ナルトの中、入っていい?」
「………っだから、いちいち聞くなってば」
「……おまえ、無理矢理が好きなの?」
「そ、そういうわけじゃねぇ…けどっ」
「ふーん。無理矢理が好きなんだ?」
「ばっ、ち、ちが……!」
「それなら、もう手加減してあげない。ほら、入るよ?」
「ああぁ…っ」
ナルトは、カカシの二の腕に爪を立てて縋る。カカシのモノがナルトの身体の奥を満たした。向かい合ってのセックスは、ナルトに安心感を齎した。何より、カカシの切なそうに寄った眉間の皺が見れるのだ。
「う…んっ。ふぁ…ぁ」
「綺麗だよ、ナルト。もっとオレにおまえの色っぽいとこ見せて?」
うっとりと陶酔してカカシはナルトの唇に口付けた。今、手に入れたかったものが、自分の腕の中にいる。己の下で喘ぐナルトの声に、拒絶の声はない。それが、カカシを有頂天にさせた。
「オレだけの、ナルト……?」
「うぁっ、うううん。あ、あんっ?」
「ナルト……」
カカシはナルトの身体を引き寄せて一際深く結合する。息をのんだかのようなナルトの嬌声。
「綺麗だね……」
情欲で潤んだ瞳。桜色に上気した頬。あの女と違って綺麗なんて綺麗な子なのだろう。カカシはかつて抱いた義母を思い出していた。
「あ、あぁ、ふぁ…あぁん。カカシせんせぇ……」
あのウルサクてうんざりするような喘ぎ声なんかではない。甘やかで、舌っ足らずな声。己に伸ばされる手も、細くて華奢で、アバズレの尖った赤い爪なんかと違う。
「好きだってば…」
キラキラ光る汗も、化粧臭い匂いとは大違いで、少し突き上げただけで、浮いてしまうような骨の浮いた身体も別物だ。
「…?どこ、見てんのっ。カカシ先生……?」
自分を見上げる視線は頼りなくて、抱き締めてやりたくなる。かつて、河原で別れて以来、欲しくて欲しくてしかたなかった子。
「んー、おまえがこんなに近くにいて幸せだなぁって思ってたんだよ」
「あ…オレも、だってば?」
わけもわからずナルトが三本髭のある頬を染めて、微笑む。
くちゅん、くちゅんとナルトの内部から濡れた音が漏れた。カカシの先走りと、ナルトの内液と少しの汗が混じり合って、そこにナルトの喘ぎ声がプラスされる。
「オレにはおまえひとりだけだよ……?」
「―――………っあ」
「オレだけのナールト?おまえにオレの全部をあげる…だからオレにもおまえの全部をちょーだい?」
「カカシ先生……?」
「オレはおまえのモノだよ?」
「……うぁ、ん?」
「………っく。も、出そ」
「……ふぁっ。あっ、あっ、あっ」
ナルトの足を抱え上げ、挿入が激しくなる。
「ん。もうちょっと、な?勿体なくて出したくないからオレに付き合って?」
「んあっ。ふぁ、あ、ぁあぁん」
「ナルト……」
その時、ナルトの中でおぼろげだった古びた記憶の映像がガーガーと壊れかけのテレビに映し出されるように奔った。公園、ブランコ、砂場、シーソーの傍。一人遊ぶ自分に屈み込む影。夏の太陽に背を向けてフード付きの彼は小馬鹿にしたように、だけどちょっとだけ心配そうに自分の顔を覗き込むのだ。
――おまえ、今日もひとりなの?
今よりも素っ気なくて、ぶっきらぼうで、不安定な声だけど、耳に妙に響いて、ひしゃげた背中の。
「あっ……はいいろ…ずみっ?」
紺と赤の色違いのオッドアイ。左眼の走り傷。微笑んでるのにちょっと皮肉気に曲がった唇。綺麗な、銀髪。ああ、なぜなのか。8年分年を重ねた彼が、なぜかまたナルトの前に居て、どこよりも近くで今、自分を見下ろしている。
「んー……迷うなぁ」
「いいから好きにす……うぁ!?」
背後から突かれ、前を優しくしごかれた。前後の快楽に、ぴしゃん、とナルトの性器から精が弾けた。床に叩き付けられた己の精液を、ナルトは愕然と見下ろした。
「あーらら。ナルト。イッちゃった?」
「な、なんで?」
くしゃりとナルトの顔が歪んだ。前立腺を掠めたカカシのペニスに快楽を感じたからなのだが、ナルトには身の内に起こっている変化に追いつけなかった。無理矢理射精させられてしまったような気さえした。
「ん。次は一緒にいこうねぇ?」
首筋を噛まれて、ナルトは戸惑いを含んだ視線を背後のカカシに向ける。
「男はここ突かれるとみーんな勝手に気持ち良くなっちゃうもんなんだよ。ナルトだけじゃないから安心しな。ごめんな、加減がわからなくて?今度はオレがちゃんとコントロールしてあげるからね?」
「あっ、あっ、あっ。カカシ先生、んでそんなこと知ってんだよ」
「そりゃ〝先生〟ですから?」
「はぐらかすなってば」
「くくく。なに、焼き餅?別にナルトが思っているようなことはほとんどないよ?」
今度は後ろ抱きの姿勢で、緩く突き上げられながら、1回か、2回あるのかよ、とナルトはカカシを睨みつけた。
「オレも昔は色々あったの。女遊びもそれなりに激しかったし、悪いこともいっぱいした。だけど満たされなくてね、おまえに会うまでは寂しかったよ」
「んあああ。あぁぁ……?」
「おまえの中、あったかい……」
ズンズンと突き上げられ、カカシに抱えられた両足が所在なく宙を彷徨っていやらしい体勢をしている自分の姿から逃れるように、ナルトは目を瞑った。
「んはぁ…んんん。も、だめだってば。変になるってば」
「ん、そろそろオレも限界。――んんん」
「あああっ?」
「今度は向かい合ってシようか?」
「う、はぁ……ん?」
カカシは、熱り立ったものをナルトの中から引き出すと、フローリングの床にナルトを横たえた。熱っぽい瞳でカカシを見上げたナルトは、反転した世界に首を傾げる。
「んー…。ちっちゃー」
己の色素の薄い突起に吸い付いたカカシに、ナルトは慌てた。そこは女の子のものを舐めてこそ楽しい場所ではないのか。
「あっ、やん。ひゃ……そこばっかやめろってば」
自分の胸部に顔を埋めるカカシの行動に頬が赤くなるのを感じた。無い胸を揉まれ、寄せられる。片方の胸の突起は、カカシの唾液で濡れていた。
「ナァールト。またここが勃ち上がり掛けてる…」
「―――っ」
「もう一回舐めてあげようか?」
「い、いい!!」
「どっち?」
「舐めんな!」
「それじゃあこっちを舐めてあげる」
カカシがペロペロとナルトの口の周りを舐め出して、ナルトはむず痒さから顔を背けると、頬に舌の生暖かい感触を感じた。
「うーーーー」
「可愛い……。ナルト、そろそろまた挿していい?ナルトの中、入っていい?」
「………っだから、いちいち聞くなってば」
「……おまえ、無理矢理が好きなの?」
「そ、そういうわけじゃねぇ…けどっ」
「ふーん。無理矢理が好きなんだ?」
「ばっ、ち、ちが……!」
「それなら、もう手加減してあげない。ほら、入るよ?」
「ああぁ…っ」
ナルトは、カカシの二の腕に爪を立てて縋る。カカシのモノがナルトの身体の奥を満たした。向かい合ってのセックスは、ナルトに安心感を齎した。何より、カカシの切なそうに寄った眉間の皺が見れるのだ。
「う…んっ。ふぁ…ぁ」
「綺麗だよ、ナルト。もっとオレにおまえの色っぽいとこ見せて?」
うっとりと陶酔してカカシはナルトの唇に口付けた。今、手に入れたかったものが、自分の腕の中にいる。己の下で喘ぐナルトの声に、拒絶の声はない。それが、カカシを有頂天にさせた。
「オレだけの、ナルト……?」
「うぁっ、うううん。あ、あんっ?」
「ナルト……」
カカシはナルトの身体を引き寄せて一際深く結合する。息をのんだかのようなナルトの嬌声。
「綺麗だね……」
情欲で潤んだ瞳。桜色に上気した頬。あの女と違って綺麗なんて綺麗な子なのだろう。カカシはかつて抱いた義母を思い出していた。
「あ、あぁ、ふぁ…あぁん。カカシせんせぇ……」
あのウルサクてうんざりするような喘ぎ声なんかではない。甘やかで、舌っ足らずな声。己に伸ばされる手も、細くて華奢で、アバズレの尖った赤い爪なんかと違う。
「好きだってば…」
キラキラ光る汗も、化粧臭い匂いとは大違いで、少し突き上げただけで、浮いてしまうような骨の浮いた身体も別物だ。
「…?どこ、見てんのっ。カカシ先生……?」
自分を見上げる視線は頼りなくて、抱き締めてやりたくなる。かつて、河原で別れて以来、欲しくて欲しくてしかたなかった子。
「んー、おまえがこんなに近くにいて幸せだなぁって思ってたんだよ」
「あ…オレも、だってば?」
わけもわからずナルトが三本髭のある頬を染めて、微笑む。
くちゅん、くちゅんとナルトの内部から濡れた音が漏れた。カカシの先走りと、ナルトの内液と少しの汗が混じり合って、そこにナルトの喘ぎ声がプラスされる。
「オレにはおまえひとりだけだよ……?」
「―――………っあ」
「オレだけのナールト?おまえにオレの全部をあげる…だからオレにもおまえの全部をちょーだい?」
「カカシ先生……?」
「オレはおまえのモノだよ?」
「……うぁ、ん?」
「………っく。も、出そ」
「……ふぁっ。あっ、あっ、あっ」
ナルトの足を抱え上げ、挿入が激しくなる。
「ん。もうちょっと、な?勿体なくて出したくないからオレに付き合って?」
「んあっ。ふぁ、あ、ぁあぁん」
「ナルト……」
その時、ナルトの中でおぼろげだった古びた記憶の映像がガーガーと壊れかけのテレビに映し出されるように奔った。公園、ブランコ、砂場、シーソーの傍。一人遊ぶ自分に屈み込む影。夏の太陽に背を向けてフード付きの彼は小馬鹿にしたように、だけどちょっとだけ心配そうに自分の顔を覗き込むのだ。
――おまえ、今日もひとりなの?
今よりも素っ気なくて、ぶっきらぼうで、不安定な声だけど、耳に妙に響いて、ひしゃげた背中の。
「あっ……はいいろ…ずみっ?」
紺と赤の色違いのオッドアイ。左眼の走り傷。微笑んでるのにちょっと皮肉気に曲がった唇。綺麗な、銀髪。ああ、なぜなのか。8年分年を重ねた彼が、なぜかまたナルトの前に居て、どこよりも近くで今、自分を見下ろしている。
相変わらずの猫背と、照れた時に斜め上にどっかいったような視線の外し方と、まるで自分のものみたいにナルトの名前を呼ぶ癖。彼は上から見下ろして、危なっかしく歩く幼いナルトに対してちょっと得意気な顔で馬鹿だねぇと言うのだ。
そして、〝ナルト〟と呼ばれる、その瞬間だけは、まるで名前を呼んでくれた青年が自分だけの所有物になったような錯覚が起きて、そんなことがあるわけはないのに、綺麗な青年を自分が独り占めにできたような気分になった。
幼い頃のナルトの所持品は酷く少なくて、自分のあとを無言で付いて来てくれる彼の存在は、ナルトの救いでもあった。
「あ、あぁ…あぁ……」
ナルトはカカシの背中に手を回すと、律動している身体にしがみ付いた。快感と引き攣るような不慣れな痛み。全てがごちゃまぜになって、自然とカカシの動きに呼吸と動きに合わせて身体が揺れる。
「好き……カ、シセンセ」
「くっ。で、る……」
出し入れされていたカカシの性器が脈打って、じんわりと温かなものが腹部の奥深くに広がる。その日、ナルトはありったけの精をカカシに注ぎ込まれた。
そして、〝ナルト〟と呼ばれる、その瞬間だけは、まるで名前を呼んでくれた青年が自分だけの所有物になったような錯覚が起きて、そんなことがあるわけはないのに、綺麗な青年を自分が独り占めにできたような気分になった。
幼い頃のナルトの所持品は酷く少なくて、自分のあとを無言で付いて来てくれる彼の存在は、ナルトの救いでもあった。
「あ、あぁ…あぁ……」
ナルトはカカシの背中に手を回すと、律動している身体にしがみ付いた。快感と引き攣るような不慣れな痛み。全てがごちゃまぜになって、自然とカカシの動きに呼吸と動きに合わせて身体が揺れる。
「好き……カ、シセンセ」
「くっ。で、る……」
出し入れされていたカカシの性器が脈打って、じんわりと温かなものが腹部の奥深くに広がる。その日、ナルトはありったけの精をカカシに注ぎ込まれた。
空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
カレンダー
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
猫耳探偵事務所
仔猫ちゃんたちがキーワードから記事を探索してくれます。
管理人の生態
自己紹介
名前 空気猫、または猫
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
足跡