空気猫
空気猫
「あら。また会ったわね」
「あ…」
「カカシはまた留守のようね」
「えっと。その…」
「別にいいのよ。勝手に上がらせてもらうから」
玄関の先に、見覚えのある女が立っていた。ソバージュの女は、長い髪を掻き上げると、つかつかと家の中へあがり、〝きみ〟と名付けられた絵の前にひっそりと立った。カカシの絵に興味のある女なのだろうか?ナルトが何も言い出せずにいると、やがて女が口を開いた。
「あの子が人物画をねぇ」
「………?」
「貴方、知ってる?あの子の描いた絵ね、たったこれっぽちのサイズの絵が数百万単位で売れるのよ。デッサンでさえ、マニアの間では数十万単位で取引されるくらいなの。本当に、あの子の手は金の成る木なのよ」
「……。あのさ、カカシ先生のこと、そういうふうに言わないで欲しいってば」
「あら、なあに。貴方、綺麗な顔が台無しだわ」
「――――…」
「怒ったの。怖い顔」
「あんた、カカシ先生の元彼女じゃないのか。カカシ先生のことを愛してたら、そんな酷い言い方できるはずない。カカシ先生が描けなくなってどれほど辛かったか…少しでも想像できるだろ」
「あははは。あなた、本当に面白いわね」
「っ。あんた、カカシ先生のなんだってば。ここに何しに来たんだってばよ」
ナルトが女を睨みあげると、女は唇を孤に吊り上げた。
「アタシ? アタシはあの子の母親であり、恋人であり、たった一人の家族よ」
「!?」
女の、紫色のルージュが塗られた唇が三日月のように吊り上がった。
「ねぇ、貴方ってあの子の何なの」
「え…?」
「あの子はね。誰かの人物画なんて、絶対に描かないの」
「………」
「あの子の心の中に入り込めた貴方は何者…?」
いつの間にか女がナルトの前に立っていて、ガリリと赤い爪が、ナルトの頬の前を横切った。
「あ……」
赤い血が円を描いて、部屋に飛び散って、壁に酷く頭を打って、ナルトが昏倒する。
「何を…、するんだってば」
「ふふふ、抵抗しないの?」
「………っ」
「いい子ぶりっこなのね。アタシはねぇ、アンタみたいに能天気で汚いことなんて何も知りませんって子が一番嫌いなのよ」
女はナルトの両頬を掴むと、カッと両眼を見開いて、
「アタシはあの子を取り戻す…」
そう言い放った。もぞっとした寒気を感じて、ナルトは、知らず知らずの内にガタガタと肩を震わせる。
「ふふふ、よく見たら貴方、とても可愛い顔してるのね。なるほど、アンタみたいな子だと性別なんて関係ないのかしら?」
「………ひぁっ」
「可愛い、身体。食べちゃいたいわ…」
ナルトに馬乗りになった女の手が意思を持って、ナルトの下半身に下って行く。
「やめ…やめろってば……っ?」
徐に下ろされるジッパーの音に、ナルトは戦慄する。抵抗したくとも、身体を太ももに挟まれがっしり重心を掛けられているため、女の体重とはいえ容易に退かす事が敵わない。
「女は初めて?――大丈夫、すぐにヨクしてあげるわ」
「………っ!」
「さぁ、身体を楽にして?」
「いやだぁっ。カカシ先生――……っ!!」
フローリングの床に、ナルトの涙の粒が一筋流れた時だった、炸裂音と共に、部屋の中に外の光が差し込んだ。
「アンタ、その子に何をしてるんだ!」
涙を零して、女に圧し掛かられた体勢のままナルトが顔を横に向けると、滲んだ視界の向こうにカカシが立っていた。その形相は酷く蒼褪めていて、それでいて怒りに震えていた。
「今すぐこの子から離れろ。汚ない手でナルトにさわるな!」
カカシはナルトと女を引き剥がすと、女の身体を床に叩き付ける。そして、ナルトを起こすと、すぐさま己の腕の中で抱き締めた。
「……カカシ先生」
「ナルトっ」
シャツの襟に頬を埋めたナルトを確認し、カカシは苦そうに顔を顰めた。
「ナルト。大丈夫?怪我をしてる?」
「これくらい大丈夫だってばよ」
ニシシと笑ったナルトをカカシは掻き抱く。
「良かった。ナルトが無事で良かった…」
優しい、本当に優しい声をナルトに落とすと、カカシは温度のない視線を倒れた女に向けた。それは虫けらを見る目だった。
「いったいここに何をしに来た」
とてもカカシの身体から出ているとは思えない声にナルトは蒼褪め、固唾を飲んで女と向かい合うカカシの横顔を見上げた。
「馬鹿な手紙じゃ飽き足らなかったか?ここの住所をどうやって調べたか知らないけど、今更何をしに来た?嫌がらせか?金か?この間の分じゃまた足りないっていうの。もう、ナルトには近付かないって言っただろ!?――おまえにくれてやるものなどもう何もない」
カカシは未開封のままの何通もの手紙を床に投げつける。手紙の裏面には、全て同じ女性の名前。かつて、カカシの義母であった女の名前だった。
「ねぇ、カカシ。アタシと貴方、昔は随分と仲が良かったじゃない?昔のように戻りましょうよ。昔みたいに二人で暮らしましょう。貴方、いい男になったわ。その顔なんて、本当にお父さんにそっくり。綺麗な顔」
「……っ。父と結婚しておいて、オレに向かってよくそんなことが言えたものだな!」
吐き捨てるように、カカシが怒鳴った。
「なーに、その目は。育てて貰った母親に向かって、その台詞はないんじゃない?」
「オレはアンタを母親だと思ったことは一度もない。オレの母親は、オレを産んでくれた母さんだ」
カカシが冷たく言い放つと、女が腹を抱えて笑った。
「ふん、病弱でアンタを置いてすぐに死んだような女を母親だと言うの?馬鹿で愚鈍な父親そっくりのことを言うのね。〝あの子には母親が必要だ〟ですって。笑っちゃうわ。あははは、アタシがしおらしくしていたら簡単に騙されちゃって、本当に馬鹿な親子」
「おまえは父さんをも侮辱する気か!」
アハハハと笑った女の腕を掴んで、カカシは玄関まで引きずる。
「―――アンタこそ、父親の女だと知りながらアタシと寝たじゃない。忘れたとは言わさないわよ」
「出て行け。ここから出て行け。二度とオレの前に姿を現すな!」
倒れた女に、バッグと靴を投げ付けると、カカシは尚も腕に巻き付こうとした女を力付くで振り払う。
「きゃ!」
女の華奢な身体がコンクリに叩き付けられる。
「カカシ先生。もうそれ以上はだめだってば!」
「ナルト…」
慌てて駆け寄って来たナルトがカカシの振り上げた腕にしがみ付く。カカシはそれまでの無表情をはっとさせ、己の腕の温もりに、ふっと身体の力を抜いた。
表情を弛めたカカシに気が付いて、女は皮肉気に笑う。ソバージュの隙間から見えた二つの瞳はランランと光っていた。
「あはは。今更、自分だけ綺麗になるつもり?そんなの許さないわよ。所詮アンタなんて、自殺者の子供じゃない。いーい、呪われてるのはアタシの血じゃない。アンタと父親に流れているその血よ!」
「……―――っ!」
「呪われてしまいなさい!」
それだけ言ってのけると、女はバックと靴を持ってフラフラとアパートから去って行った。後に残されたカカシは無言のままにそれを見送り、ナルトと言えば必死にカカシにしがみ付いていた。
「カカシセンセ…」
「………」
女が去った後、ナルトは無言で立ち尽くしているカカシを見上げた。前髪で表情の見えないカカシに駆け寄ると頬に手を当てる。
どうしてだがわからないが、カカシが泣いているような気がしたからだ。しかし、カカシの頬は涙で濡れてなどいなかった。その代りにナルトの瞳に飛び込んできたのは、どこか虚ろなカカシの瞳だった。
「今の人って。それにカカシ先生のお父さんって…」
「死んだよ。自殺だった」
「カカシセンセ…?」
「あいつの言う通りだ。オレは自殺者の子供なんだ。ははは…」
カカシの髪を撫ぜようとして、触れるか否かの所で、カカシの身体はするりとナルトから擦り抜けていった。
「せんせぇ?」
「ごめん。オレはもう、おまえにふれる資格なんて、きっとないんだ」
「な…っ!」
ふわりと身体を押されて、ナルトはカカシの手を掴もうとするが、すでにカカシはドアの外へと駆けだして行ってしまった。ナルトは弾かれたようにカカシのあとを追いかけた。
「ンせ、かかし、センせぇ…っ」
ぽつ、ぽつ、と曇空から、雨粒が落ちてきていた。しかし、ナルトは傘を差すこともなく、走り続ける。ナルトは必死でカカシを探し回るが、どこにもカカシの姿はない。自分の働いているコンビニにまで行った。カカシの居そうなところは方々回った。そして最後に辿りついた場所はパステルカラーの公園。そのベンチの前。ずぶ濡れのままベンチに座っているカカシを見つけた。
「か、しせんせぇ…」
「………」
「こんなところに居た。帰ろうってば?」
ほっとしたと同時に、雨に打たれている以上に、意気消沈しているカカシの様子が気になった。
「あの女が言った通りなんだ。オレは呪われてる…」
「…っ?」
「はっきり言って、まだオレはおかしいと思う。父さんのせいだけじゃない。オレ自身が呪われてるんだ」
生きているのがつまらないだとか、周りの人間が嫌いだとか、人が肉の塊にしか見えないだとか、結局はそんなことをいう自分が一番汚い存在なのだ。唾棄すべきは、そんなふうに歪んだ目でしか周囲を見るのことのできない己の存在で。これが全ての答えなのだろう。
「ナルト。オレって生きてる意味があるのかな?」
カカシは膝に肘をついて、俯いたままナルトに疑問を投げかける。
「唯一の家族にも愛情を受けられなかった奴が果たして、生きてる意味があるかな?父さんが自殺したのもそもそもオレに価値がなかったからなんじゃないかなって思うんだ」
「そんなことないってばよっ」
「そんなこと、あるんだよ。オレは父の自殺を止めることができなかった。それから、ずっと薄暗い道を歩いてきた。でもね、ナルト。そんなオレでも、やっと大事に思える人間が出来たと思ったんだ」
そこでふっとカカシの顔があげられる。16歳のナルトの方へ向けて。
「――おまえだよ、ナルト。おまえ以外に、大事な人間なんてオレにはいなかった」
「―――……」
「でも、そんなおまえにすら嫌われちまったらオレはどうしたらいい?」
彷徨い人のようなカカシの声色。本当に小さな迷子のようだ。
「おまえにとって、いらないなら、オレの存在もいらないでしょ…?」
ざーざー、と雨の音が公園内を満たす。
「いや、むしろオレなんかがおまえを好きになっちゃいけなかったのかもしれないな。こんな愛し方しかできなくて、ごめん。こんなに好きになっちゃって、ごめん」
一時、雨の音すら止んだかのように、静寂が訪れた。そして。
「自分勝手なこと言うなってば、ばかぁ…っ」
カカシの告白を聞いていたナルトは盛大に泣き出した。
「ど、――して泣くの、ナルト。―――…どこか痛いの!?」
「違うってば、ばか、カカシ先生のばかぁ…」
どんどんとナルトがカカシの懐を叩く。それは、まるで心臓の鼓動のようで、ああ、きっとこの子がオレの心臓を動かしてくれている存在なのだと、どこかの絵本を思い出して、カカシは力なく笑う。
「ばか!カカシ先生の、大馬鹿!オレの話、ちっとも聞かないで、勝手に決めて、勝手に傷ついて、またオレの前から去って行くつもりなのかよ!?」
「え、ナル――?」
「んなの、絶対許さねぇからな。もう昔みたいに、置いていかれるような年齢じゃねぇっ。今度はオレが守ってやるんだってば。こうやって何度も、追いかけてやるんだからっ、だから、勝手にオレの前から消えるんじゃねぇっ」
「なると、オレのこと思い出して…?」
「ああ、とっくに思い出したってばよ。だって、カカシ先生はおれの、…灰色ねずみだからっ!」
「ははは。そうか―――。そう、思い出したの」
「そうだってばよ。だから、一緒に家に帰ろうってば。あの時の約束守ってってばよ。大好きなオレの、灰色ねずみ―――…?」
「ナルト…」
「カカシ先生。そんな泣きそうな顔しないで?オレ、もう怒ってないから、一緒に帰ろう?」
「なる、と……」
ナルトの告白に、気が抜けたのか、カカシはぱたりと地面に倒れてしまった。
「カカシ先生、しっかりするってばよ!!!」
驚いたような、ナルトの瞳。カカシの額に手を当てると、驚くほど体温が低かった。
「ナルト、愛してるんだ。本当に、おまえが大切なんだ」
うわ言のように繰り返し呟くカカシに、きゅうと心臓が締め付けられる。ナルトは自分より頭一つ分大きな大人を背中に背負う。空からはザーザーと雨が降り続けていた。
「わかってるから。カカシ先生。ね、このままじゃ肺炎になっちゃうってば…。帰ろう」
ナルトが優しく話しかけると、ようやっとカカシは安心したようだった。
「カカシ先生、シャワー浴びれるか?ほら、服脱げってばよ?」
カカシの上服を引っ張って脱がし、下肢にまで手を掛けたところで、カカシをバスルームに押し込める。
そのうちバスルームの中からシャワー音が聞こえてきて、ナルトはほっと安堵したものの、いつまで経ってもその音が鳴り止まず、意を決して中を覗けば、カカシは服を着たまま濡れっぱなしだった。
「カカシ先生。ちゃんとあったまらないとだめだってば」
「ナルト…」
ぼんやりとした表情で、カカシは何かを求めるように、腕を上げる。その腕を取ると、引き寄せられて、カカシがナルトの肩口で啜り泣いていることが分かった。
「ん…。なう…、なうと、なうと」
「わかった。先生。一緒にベッドに行こう?ちゃんと立てるってば?」
仕方なくナルトはカカシを支え起こす。カカシはぼんやりとしている様子だが、ナルトの声には大人しく従うようだった。
「あ、カカシ先生。そっちじゃないってばよ」
「―――……っ」
ガラガラガシャーン、とカカシがガラスの入ったダンボール箱に突っ込んで転倒する。
「カカシ先生!」
「大丈、夫…これ、使えなくて捨てようと思った色ガラスの箱だから」
「そ、そういう問題じゃねぇってばよ!あーあ、こんなに散らかして」
「ごめん…」
「ここはカカシ先生の家だから、謝ることないけどさ…。んもう、片付けは後でしよ…?」
ナルトはカカシをベッドまで引っ張ると、びょ濡れになってしまったカカシを抱き締めた。
「先生ってばつめてぇ」
「うん」
以前はカカシの膝元しかなかった子供に今、抱き締められている。カカシは恐る恐るナルトの背中に腕を回すと、ぎゅっと強く抱きしめ返された。そしてどちらからともなく唇を合わせ、シーツの上に倒れ込む。カカシは腕の下のナルトを見降ろし訊ねた。
「ねぇ、ナルト。いつから、オレが灰色ねずみだって気付いたの?」
「結構前からだってばよ。だってさぁ、カカシ先生ってばちっとも変わってねえんだもん」
にかっと笑ったナルトに、カカシは泣き出しそうに嬉しそうにくしゃりと表情を歪めた。
「カカシ先生?どうしたってば?」
「ははは、なーんでもないよ」
そのまま、カカシはナルトにそっと囁いた。
「ごめん、ナルト。今日は、加減が出来なくって優しく出来そうに、ない、かも」
「あのさぁ。カカシ先生ってば、いまさらだってばよ。――どーんとこいってばよ!」
ナルトの返答にカカシは微笑むと、最愛の少年を抱き締めた。ナルトの温もりは羊水のように温かで柔らかく、カカシはぽたぽたと涙を零した。その日のセックスは少しだけ、痛くて切なくて、そしてそれ以上に温かかった。
「あ…」
「カカシはまた留守のようね」
「えっと。その…」
「別にいいのよ。勝手に上がらせてもらうから」
玄関の先に、見覚えのある女が立っていた。ソバージュの女は、長い髪を掻き上げると、つかつかと家の中へあがり、〝きみ〟と名付けられた絵の前にひっそりと立った。カカシの絵に興味のある女なのだろうか?ナルトが何も言い出せずにいると、やがて女が口を開いた。
「あの子が人物画をねぇ」
「………?」
「貴方、知ってる?あの子の描いた絵ね、たったこれっぽちのサイズの絵が数百万単位で売れるのよ。デッサンでさえ、マニアの間では数十万単位で取引されるくらいなの。本当に、あの子の手は金の成る木なのよ」
「……。あのさ、カカシ先生のこと、そういうふうに言わないで欲しいってば」
「あら、なあに。貴方、綺麗な顔が台無しだわ」
「――――…」
「怒ったの。怖い顔」
「あんた、カカシ先生の元彼女じゃないのか。カカシ先生のことを愛してたら、そんな酷い言い方できるはずない。カカシ先生が描けなくなってどれほど辛かったか…少しでも想像できるだろ」
「あははは。あなた、本当に面白いわね」
「っ。あんた、カカシ先生のなんだってば。ここに何しに来たんだってばよ」
ナルトが女を睨みあげると、女は唇を孤に吊り上げた。
「アタシ? アタシはあの子の母親であり、恋人であり、たった一人の家族よ」
「!?」
女の、紫色のルージュが塗られた唇が三日月のように吊り上がった。
「ねぇ、貴方ってあの子の何なの」
「え…?」
「あの子はね。誰かの人物画なんて、絶対に描かないの」
「………」
「あの子の心の中に入り込めた貴方は何者…?」
いつの間にか女がナルトの前に立っていて、ガリリと赤い爪が、ナルトの頬の前を横切った。
「あ……」
赤い血が円を描いて、部屋に飛び散って、壁に酷く頭を打って、ナルトが昏倒する。
「何を…、するんだってば」
「ふふふ、抵抗しないの?」
「………っ」
「いい子ぶりっこなのね。アタシはねぇ、アンタみたいに能天気で汚いことなんて何も知りませんって子が一番嫌いなのよ」
女はナルトの両頬を掴むと、カッと両眼を見開いて、
「アタシはあの子を取り戻す…」
そう言い放った。もぞっとした寒気を感じて、ナルトは、知らず知らずの内にガタガタと肩を震わせる。
「ふふふ、よく見たら貴方、とても可愛い顔してるのね。なるほど、アンタみたいな子だと性別なんて関係ないのかしら?」
「………ひぁっ」
「可愛い、身体。食べちゃいたいわ…」
ナルトに馬乗りになった女の手が意思を持って、ナルトの下半身に下って行く。
「やめ…やめろってば……っ?」
徐に下ろされるジッパーの音に、ナルトは戦慄する。抵抗したくとも、身体を太ももに挟まれがっしり重心を掛けられているため、女の体重とはいえ容易に退かす事が敵わない。
「女は初めて?――大丈夫、すぐにヨクしてあげるわ」
「………っ!」
「さぁ、身体を楽にして?」
「いやだぁっ。カカシ先生――……っ!!」
フローリングの床に、ナルトの涙の粒が一筋流れた時だった、炸裂音と共に、部屋の中に外の光が差し込んだ。
「アンタ、その子に何をしてるんだ!」
涙を零して、女に圧し掛かられた体勢のままナルトが顔を横に向けると、滲んだ視界の向こうにカカシが立っていた。その形相は酷く蒼褪めていて、それでいて怒りに震えていた。
「今すぐこの子から離れろ。汚ない手でナルトにさわるな!」
カカシはナルトと女を引き剥がすと、女の身体を床に叩き付ける。そして、ナルトを起こすと、すぐさま己の腕の中で抱き締めた。
「……カカシ先生」
「ナルトっ」
シャツの襟に頬を埋めたナルトを確認し、カカシは苦そうに顔を顰めた。
「ナルト。大丈夫?怪我をしてる?」
「これくらい大丈夫だってばよ」
ニシシと笑ったナルトをカカシは掻き抱く。
「良かった。ナルトが無事で良かった…」
優しい、本当に優しい声をナルトに落とすと、カカシは温度のない視線を倒れた女に向けた。それは虫けらを見る目だった。
「いったいここに何をしに来た」
とてもカカシの身体から出ているとは思えない声にナルトは蒼褪め、固唾を飲んで女と向かい合うカカシの横顔を見上げた。
「馬鹿な手紙じゃ飽き足らなかったか?ここの住所をどうやって調べたか知らないけど、今更何をしに来た?嫌がらせか?金か?この間の分じゃまた足りないっていうの。もう、ナルトには近付かないって言っただろ!?――おまえにくれてやるものなどもう何もない」
カカシは未開封のままの何通もの手紙を床に投げつける。手紙の裏面には、全て同じ女性の名前。かつて、カカシの義母であった女の名前だった。
「ねぇ、カカシ。アタシと貴方、昔は随分と仲が良かったじゃない?昔のように戻りましょうよ。昔みたいに二人で暮らしましょう。貴方、いい男になったわ。その顔なんて、本当にお父さんにそっくり。綺麗な顔」
「……っ。父と結婚しておいて、オレに向かってよくそんなことが言えたものだな!」
吐き捨てるように、カカシが怒鳴った。
「なーに、その目は。育てて貰った母親に向かって、その台詞はないんじゃない?」
「オレはアンタを母親だと思ったことは一度もない。オレの母親は、オレを産んでくれた母さんだ」
カカシが冷たく言い放つと、女が腹を抱えて笑った。
「ふん、病弱でアンタを置いてすぐに死んだような女を母親だと言うの?馬鹿で愚鈍な父親そっくりのことを言うのね。〝あの子には母親が必要だ〟ですって。笑っちゃうわ。あははは、アタシがしおらしくしていたら簡単に騙されちゃって、本当に馬鹿な親子」
「おまえは父さんをも侮辱する気か!」
アハハハと笑った女の腕を掴んで、カカシは玄関まで引きずる。
「―――アンタこそ、父親の女だと知りながらアタシと寝たじゃない。忘れたとは言わさないわよ」
「出て行け。ここから出て行け。二度とオレの前に姿を現すな!」
倒れた女に、バッグと靴を投げ付けると、カカシは尚も腕に巻き付こうとした女を力付くで振り払う。
「きゃ!」
女の華奢な身体がコンクリに叩き付けられる。
「カカシ先生。もうそれ以上はだめだってば!」
「ナルト…」
慌てて駆け寄って来たナルトがカカシの振り上げた腕にしがみ付く。カカシはそれまでの無表情をはっとさせ、己の腕の温もりに、ふっと身体の力を抜いた。
表情を弛めたカカシに気が付いて、女は皮肉気に笑う。ソバージュの隙間から見えた二つの瞳はランランと光っていた。
「あはは。今更、自分だけ綺麗になるつもり?そんなの許さないわよ。所詮アンタなんて、自殺者の子供じゃない。いーい、呪われてるのはアタシの血じゃない。アンタと父親に流れているその血よ!」
「……―――っ!」
「呪われてしまいなさい!」
それだけ言ってのけると、女はバックと靴を持ってフラフラとアパートから去って行った。後に残されたカカシは無言のままにそれを見送り、ナルトと言えば必死にカカシにしがみ付いていた。
「カカシセンセ…」
「………」
女が去った後、ナルトは無言で立ち尽くしているカカシを見上げた。前髪で表情の見えないカカシに駆け寄ると頬に手を当てる。
どうしてだがわからないが、カカシが泣いているような気がしたからだ。しかし、カカシの頬は涙で濡れてなどいなかった。その代りにナルトの瞳に飛び込んできたのは、どこか虚ろなカカシの瞳だった。
「今の人って。それにカカシ先生のお父さんって…」
「死んだよ。自殺だった」
「カカシセンセ…?」
「あいつの言う通りだ。オレは自殺者の子供なんだ。ははは…」
カカシの髪を撫ぜようとして、触れるか否かの所で、カカシの身体はするりとナルトから擦り抜けていった。
「せんせぇ?」
「ごめん。オレはもう、おまえにふれる資格なんて、きっとないんだ」
「な…っ!」
ふわりと身体を押されて、ナルトはカカシの手を掴もうとするが、すでにカカシはドアの外へと駆けだして行ってしまった。ナルトは弾かれたようにカカシのあとを追いかけた。
「ンせ、かかし、センせぇ…っ」
ぽつ、ぽつ、と曇空から、雨粒が落ちてきていた。しかし、ナルトは傘を差すこともなく、走り続ける。ナルトは必死でカカシを探し回るが、どこにもカカシの姿はない。自分の働いているコンビニにまで行った。カカシの居そうなところは方々回った。そして最後に辿りついた場所はパステルカラーの公園。そのベンチの前。ずぶ濡れのままベンチに座っているカカシを見つけた。
「か、しせんせぇ…」
「………」
「こんなところに居た。帰ろうってば?」
ほっとしたと同時に、雨に打たれている以上に、意気消沈しているカカシの様子が気になった。
「あの女が言った通りなんだ。オレは呪われてる…」
「…っ?」
「はっきり言って、まだオレはおかしいと思う。父さんのせいだけじゃない。オレ自身が呪われてるんだ」
生きているのがつまらないだとか、周りの人間が嫌いだとか、人が肉の塊にしか見えないだとか、結局はそんなことをいう自分が一番汚い存在なのだ。唾棄すべきは、そんなふうに歪んだ目でしか周囲を見るのことのできない己の存在で。これが全ての答えなのだろう。
「ナルト。オレって生きてる意味があるのかな?」
カカシは膝に肘をついて、俯いたままナルトに疑問を投げかける。
「唯一の家族にも愛情を受けられなかった奴が果たして、生きてる意味があるかな?父さんが自殺したのもそもそもオレに価値がなかったからなんじゃないかなって思うんだ」
「そんなことないってばよっ」
「そんなこと、あるんだよ。オレは父の自殺を止めることができなかった。それから、ずっと薄暗い道を歩いてきた。でもね、ナルト。そんなオレでも、やっと大事に思える人間が出来たと思ったんだ」
そこでふっとカカシの顔があげられる。16歳のナルトの方へ向けて。
「――おまえだよ、ナルト。おまえ以外に、大事な人間なんてオレにはいなかった」
「―――……」
「でも、そんなおまえにすら嫌われちまったらオレはどうしたらいい?」
彷徨い人のようなカカシの声色。本当に小さな迷子のようだ。
「おまえにとって、いらないなら、オレの存在もいらないでしょ…?」
ざーざー、と雨の音が公園内を満たす。
「いや、むしろオレなんかがおまえを好きになっちゃいけなかったのかもしれないな。こんな愛し方しかできなくて、ごめん。こんなに好きになっちゃって、ごめん」
一時、雨の音すら止んだかのように、静寂が訪れた。そして。
「自分勝手なこと言うなってば、ばかぁ…っ」
カカシの告白を聞いていたナルトは盛大に泣き出した。
「ど、――して泣くの、ナルト。―――…どこか痛いの!?」
「違うってば、ばか、カカシ先生のばかぁ…」
どんどんとナルトがカカシの懐を叩く。それは、まるで心臓の鼓動のようで、ああ、きっとこの子がオレの心臓を動かしてくれている存在なのだと、どこかの絵本を思い出して、カカシは力なく笑う。
「ばか!カカシ先生の、大馬鹿!オレの話、ちっとも聞かないで、勝手に決めて、勝手に傷ついて、またオレの前から去って行くつもりなのかよ!?」
「え、ナル――?」
「んなの、絶対許さねぇからな。もう昔みたいに、置いていかれるような年齢じゃねぇっ。今度はオレが守ってやるんだってば。こうやって何度も、追いかけてやるんだからっ、だから、勝手にオレの前から消えるんじゃねぇっ」
「なると、オレのこと思い出して…?」
「ああ、とっくに思い出したってばよ。だって、カカシ先生はおれの、…灰色ねずみだからっ!」
「ははは。そうか―――。そう、思い出したの」
「そうだってばよ。だから、一緒に家に帰ろうってば。あの時の約束守ってってばよ。大好きなオレの、灰色ねずみ―――…?」
「ナルト…」
「カカシ先生。そんな泣きそうな顔しないで?オレ、もう怒ってないから、一緒に帰ろう?」
「なる、と……」
ナルトの告白に、気が抜けたのか、カカシはぱたりと地面に倒れてしまった。
「カカシ先生、しっかりするってばよ!!!」
驚いたような、ナルトの瞳。カカシの額に手を当てると、驚くほど体温が低かった。
「ナルト、愛してるんだ。本当に、おまえが大切なんだ」
うわ言のように繰り返し呟くカカシに、きゅうと心臓が締め付けられる。ナルトは自分より頭一つ分大きな大人を背中に背負う。空からはザーザーと雨が降り続けていた。
「わかってるから。カカシ先生。ね、このままじゃ肺炎になっちゃうってば…。帰ろう」
ナルトが優しく話しかけると、ようやっとカカシは安心したようだった。
「カカシ先生、シャワー浴びれるか?ほら、服脱げってばよ?」
カカシの上服を引っ張って脱がし、下肢にまで手を掛けたところで、カカシをバスルームに押し込める。
そのうちバスルームの中からシャワー音が聞こえてきて、ナルトはほっと安堵したものの、いつまで経ってもその音が鳴り止まず、意を決して中を覗けば、カカシは服を着たまま濡れっぱなしだった。
「カカシ先生。ちゃんとあったまらないとだめだってば」
「ナルト…」
ぼんやりとした表情で、カカシは何かを求めるように、腕を上げる。その腕を取ると、引き寄せられて、カカシがナルトの肩口で啜り泣いていることが分かった。
「ん…。なう…、なうと、なうと」
「わかった。先生。一緒にベッドに行こう?ちゃんと立てるってば?」
仕方なくナルトはカカシを支え起こす。カカシはぼんやりとしている様子だが、ナルトの声には大人しく従うようだった。
「あ、カカシ先生。そっちじゃないってばよ」
「―――……っ」
ガラガラガシャーン、とカカシがガラスの入ったダンボール箱に突っ込んで転倒する。
「カカシ先生!」
「大丈、夫…これ、使えなくて捨てようと思った色ガラスの箱だから」
「そ、そういう問題じゃねぇってばよ!あーあ、こんなに散らかして」
「ごめん…」
「ここはカカシ先生の家だから、謝ることないけどさ…。んもう、片付けは後でしよ…?」
ナルトはカカシをベッドまで引っ張ると、びょ濡れになってしまったカカシを抱き締めた。
「先生ってばつめてぇ」
「うん」
以前はカカシの膝元しかなかった子供に今、抱き締められている。カカシは恐る恐るナルトの背中に腕を回すと、ぎゅっと強く抱きしめ返された。そしてどちらからともなく唇を合わせ、シーツの上に倒れ込む。カカシは腕の下のナルトを見降ろし訊ねた。
「ねぇ、ナルト。いつから、オレが灰色ねずみだって気付いたの?」
「結構前からだってばよ。だってさぁ、カカシ先生ってばちっとも変わってねえんだもん」
にかっと笑ったナルトに、カカシは泣き出しそうに嬉しそうにくしゃりと表情を歪めた。
「カカシ先生?どうしたってば?」
「ははは、なーんでもないよ」
そのまま、カカシはナルトにそっと囁いた。
「ごめん、ナルト。今日は、加減が出来なくって優しく出来そうに、ない、かも」
「あのさぁ。カカシ先生ってば、いまさらだってばよ。――どーんとこいってばよ!」
ナルトの返答にカカシは微笑むと、最愛の少年を抱き締めた。ナルトの温もりは羊水のように温かで柔らかく、カカシはぽたぽたと涙を零した。その日のセックスは少しだけ、痛くて切なくて、そしてそれ以上に温かかった。
あの日以来、ナルトはカカシと距離を取った。カカシと会うことがなくなって一週間。ナルトの携帯に見知らぬ番号から着信があった。
「おい。姫さんか?」
「……アスマさん?」
「悪い。カカシの携帯から勝手に電話番号調べさせてもらった。すまないんだがカカシの家に行ってもらえないか」
「へ…?どうしてだってば?」
「あいつの家に行ってくれればわかると思う。申し訳ないんだが姫さんにしか頼めないんだ、あいつは」
「………」
突然の電話とその内容にナルトは戸惑いを隠せない。ナルトは携帯を睨みつけると、「いったいどういうことだってばよ…」と呟いた。しばしの無言のあとナルトは食品を買い出ししたのちカカシのアパートへと向かった。
「カカシ先生…!?」
スーパーの袋を持って、カーテンの引かれた部屋に入ると床に倒れている大人がいた。
「……う、ん」
「どうしたんだってばよ!しっかりしろってば!」
「……ナルト?……ナルトだぁ」
そこにいたのは、憔悴した大人だった。子供のように手を伸ばされて、ナルトはその腕を振り払うことができなかった。
「ナルト。最近、欠席が多いぞ。イルカ先生も心配してただろうが」
「あぁ…」
「どうしたんだ…。覇気がねぇなぁ」
久し振りに学校に登校して来たナルトは、幾分かヤツレているようであった。シカマルは椅子に寄り掛りながら、ペンをくるくると回した。呟いたのは少年お決まりの一言――めんどくせぇ。であった。
「いったい何があった。どうせ、おまえの悩みはあの人絡みなんだろ」
「…シカマルぅ……」
「いいから、喋れる範囲で話してみろ。だから、オレの前でそんな顔すんな。―――人が見てんだろ…」
男前に決めたシカマルであったが、後半の台詞は教室のど真ん中でナルトに抱き付かれてしまったため尻すぼみになった。この少年も苦労に堪えない人生を送っているものである。
「―――そりゃ、ヤベぇな。おめぇがいないと駄目なのか?寝る時もトイレに行く時も?」
「おう…。なんか、家事も洗濯も危ういって感じで、放っておけなくて。オレってば何日も家に帰ってないし、何回も話し掛けてやっと学校に来れたんだってば」
「おまえの父ちゃんに相談してみればどうだ?」
「そんなのダメだってば!今、カカシ先生はちょっと混乱してるだけで…きっともう少しすれば良くなると思うってばよ」
はぁ…、とシカマルは額に手を当てた。元々ナルトは自己犠牲精神が強い。どうやら今回は、それが困った方に働いているようだ。唇を噛んだナルトの様子を見て、シカマルは何を言っても無駄な事を悟った。
「だからオレは最初から言ったんだよ。あの人はヤバいって」
「オレだって、カカシ先生が少しおかしいのは知ってた。だけど、それでも好きだったんだってば。だから、カカシ先生のこと、見捨てられない…」
(おまえの方が辛そうじゃねぇかよ、めんどくせぇ…)シカマルは後ろで一つに括った頭をガリガリと掻いて、ため息を吐いた。
「おまえと、あのカカシさんとかいう人ってはどっか雰囲気似てるよ。おまえは、カカシさんと一緒にいると凄い楽なんだろ。似た者同士気が合うかもしれねえけど、同じとこが足りねえもん同士は危ないんだぜ。同じとこが足りてねえとバランスが取れないんだよ、このままじゃおまえらは共倒れになる」
「シカマル。それってどういう意味だってばよ」
小教室に呼び出されシカマルが切り出した話題の内容に、ナルトは表情を強張らせた。
「なぁ、オレとカカシ先生に別れろって言ってんの?」
「オレがそう言ってるように聞こえるかよ。それっておまえも心の奥で少しは勘付いているんじゃないか。このままじゃヤバいって」
「そんなことはないってば…」
ナルトは窓際で学ランの襟に顔を埋めて、開いた窓の外に視線をやる。
「カカシ先生と別れるなんて絶対やだ…」
「ナルト。そんなに、あの人が好きなのか」
「シカマルはカカシ先生ばっかがオレに執着しているように言うけど、オレもそれ以上にカカシ先生のことが好きなんだってば。やっと見つけた人だから、―――オレの大好きな人だから今度は離れたくないんだってば」
オレの灰色ねずみ。彼は、ナルトだけのねずみだったのだ。そんな彼と自分をどうして周りは引き離そうとするのだろう。
「それが危ないって言ってるんだよ…」
シカマルの呟きはナルトには聞こえなかった。
「くそ。めんどくせぇ。フラフラの身体で強がりやがって…」
ナルトのアパートから、2駅ほど離れた小通の一角。「こんなところになぜ喫茶店が?」と誰しも思ってしまう場所に木の葉喫茶はあった。
商売する気があるのか、ないのかで聞かれればきっと「ない」の方向に天秤が傾いてしまうような喫茶店だったが、幸い経営は傾くことなく、僅かな常連客とふらりとやって来た客を相手に商売をしているらしい。
「……ナルくん。 今日はどうしたの。ため息ばっかり吐いて元気がないね?」
ジャズの流れる店内に黄色いツンツン頭が二対並んでいた。昨日、海外から帰ってきたばかりの波風ミナトは息子の様子がおかしいことに気が付いていた。
「オレはナルくんじゃないってば」
「ええ~、ナルくんはナルくんでしょ~」
「…………」
締まりのない顔でミナトがナルトの顔を覗き込むが、「真面目に仕事すれってばよ」とすぐに視線を逸らされてしまい「ナルく~ん」と何とも情けない声が厨房から上がった。
「あれ、ナルくん。どうしてココア飲まないの」
「子供扱いすんなってば、オレってばもうココアなんて飲まねえの!」
ギロと息子に睨み付けられると、ミナトがたじたじになる。そんなマスターと息子の様子を苦笑気味に常連客が見守っていた。店内には穏やかな時間が流れる。
「そうか、ナルくんも大人になったんだねぇ…。ええとそれじゃあ珈琲とか?」
今度は「珈琲は苦くて好きくねぇ」とナルトがカウンターに顎をくっつけて口を尖らせると、何故かほっとした顔でミナトが顔を弛めた。「そっか、まだ珈琲は飲めないよね」と笑う。
「…………」
この人は自分をいったい何歳だと認識しているのだろうか。まさか7歳の頃から時間が止まっているとは思えないが、今までの言動から察するにどうも怪しい。
「それじゃあイチゴミルク?ナルくん昔大好きだったでしょ!」
怪訝そうにナルトの顔が顰められる。――…ナルトがイチゴミルクを好きだと最初から断定してきた銀髪の大人がもう一人いた気がする。それはもう一部の疑いもなく…。
「なんでイチゴミルクなんだってば?」
「え、なんでって…。ナルくん好きだったでしょイチゴミルク」
「……オレ。昔、イチゴミルクが好きだったの?」
「そうそうナルくん、小さい頃は大の牛乳嫌いで、随分クシナさんと苦労したなぁ」
「……オレが牛乳嫌い?」
「そうだよ、あれぇもしかして覚えてないの?」
そんなことちっとも覚えていない。むしろ今は牛乳は好物の部類に入っているので俄かには信じられなかったが、ならば「イチゴミルク好きデショ?」と言ってあのピンク色の暢気なパッケージを差し出してきたカカシは、ミナトから聞いて自分の好物の飲み物を知っていたのだろうか。一瞬フードを被った銀色の男の影が頭を掠める。
「―――……っ」
瞬間、なぜか涙が込み上げてきた。
馬鹿だ。
大馬鹿だ。
本人でさえ覚えていないことをいつまでも覚えていて。
そのくせ、不器用で。言葉っ足らずで。
肝心なことはいつも何も言ってくれなくて。
だけど、そんな不器用な大人が、どうしてこれほどまでに愛おしいのか。
馬鹿だ。大馬鹿ものだ。
―――オレってば、馬鹿だってば。
いつだって、カカシは、自分を一番だと、全身で言っていてくれたのに。
「オレってば用事思い出した!」
「え、ナルくん?」
駈け出したナルトの背中をミナトはぽかんと見守った。
数日間、ナルトの中でのもやもやとした気持ちは晴れなかった。あの女は誰だったのだろう。カカシの読んでいた手紙はなんだったのだろう、と疑問が湧きがってきて、当人に聞きたくとも聞けないという状態が続いたからだ。だからその日、歓楽街の中でナルトがその光景を目撃したのは偶然の出来事だった。
「どうしてだってば?」
見知った銀色の人影を捉えてナルトの足が止まる。安ホテルが入っている雑居ビルの前で、銀色の大人と、毛皮のコートを着た女が立っていた。
何か口論しているのかと思いきや女の方が、一方的にカカシに詰め寄っているようで、ナルトの見ている前で女の平手がカカシの頬に降ろされた。
「―――あ」
綺麗に流線形を描いた手がカカシを頬を叩いた。女はバックを何度かカカシにぶつけては、また罵っているようで、ナルトの心臓が早鐘のように速まるが、どうしてかその場を動く事が出来なかった。そのうちに女が去って、カカシの身体がズルズルと電信柱に背中を預けながら倒れ込む。
カカシを助け起こさなければいけないと思ったが、どうしてもその場から動けなくて、二人は何をしていたのだろうと、馬鹿な詮索ばかりしてしまう自分がいた。
『ナールト?』
「………」
『どうして、電話に出てくれないの?』
「………」
『ナルト……?』
その日、携帯にカカシからの着信が入ってるとわかっていたが、ナルトはどうしても電話に出ることが出来なかった。自分のそうした行為が、カカシを追い詰めているとも知らずに。
「ゲン兄、またな」
「おう。また来いよ」
夕方。繋ぎ姿の男に手を振って、ナルトは整備工場を後にした。手には土産が入ったビニール袋が提げられている。
ふぅ…とどこからともなく疲れたため息が漏れる。そして、ナルトは下を向いたとろで、見知った影が伸びていることに気が付いた。
「あ…」
そこに立っていたのはカカシだった。夕暮れ時に長く伸びたひょろひょろの影。
「ナルト。どこに行ってたの」
「………」
「ゲンマって奴のところ?」
無意識に後ずさってしまったのが、悪かったのかも知れない。カカシの表情が顰められる。しかし、それも一瞬のことで、すぐに彼の目は弓なりに曲がった。
「ナルト?どうしたの?」
「………」
「どうして逃げるの?」
どうして、彼はいつでも笑うのだろう。今はカカシと喋りたくなかった。あの女と何をしていたのだと、酷い言葉を浴びせてしまいそうで、怖かった。だから、ナルトは何も告げずに走り出してしまったのだが、その行為がどれほどカカシにショックを与えるのかナルトは知らなかったのだ。
「ナルト…?」
去っていくナルトの背中を見詰めて、カカシが不思議そうに首を傾げる。
「待ってよ。ナルト」
弾かれたようにカカシが走り出す。
「ははは。おまえもオレから逃げるの…?」
カカシは皮肉気に笑うと、必死で逃げるナルトの背中を追う。足が速いとは言え、ナルトのもつれる足だ。大人の足で追いかけられれば捕まってしまうのは容易で。
「ひぁ……っ」
どこかの工事現場に逃げ込んだナルトが、地面に転がって蹴躓いた瞬間に、カカシはナルトの足を掴んで、引き摺り寄せる。砂埃が舞って、ナルトは大人の下に組み敷かれていた。
「どうして、オレから逃げるのっ?」
「や、だっ」
「いつも、いつも。恋人のオレを差し置いて、いい加減にしてくれる?そんなにあいつがいいわけっ!?」
「……っ」
思ってもみなかったカカシの本音に、蒼褪めた表情でナルトがカカシを見上げた。
「……ち、ちがっ」
「なに、いいわけ?」
「ゲン兄はオレの本当の兄ちゃんみたいな存在なんだってば。だからカカシ先生とみたいにキスしたりなんて全然ないってばよ…」
「どうだか…」
「カカシ先生。オレのことを疑ってるのかよ?」
「それじゃあナルトはオレが妹みたいな存在と遊びに行くって言ったらどういう気持ちになる?」
「そ、それは」
「いやな気分にならなかった?兄みたいな存在ってことはね、恋人になり得るかもしれない存在ってことなんだよ」
「でも、オレってば全然そんなつもりはなくって…ただ飯を食いに行ってただけだってば」
「おまえは何とも思ってなくても、向こうには気があるかも知れないでしょ?」
「ゲン兄はそんな人じゃないってばよ…」
「〝ゲン兄、ゲン兄〟っておまえは懐いてるみたいだけどさ、あの男、下心が顔に出てたんだよ」
「………っ!」
ぽたり、とナルトの瞳から涙が零れ落ちる。睫の先を伝って大きな粒がアスファルトの地面に落ちた。
「酷い…」
「………あ」
「ふぇ。カカシ先生、酷いってばよ」
「………」
ナルトの嗚咽にカカシは一瞬怯んだようであったが。
「うるさい。オレを拒絶するなんて許さないっ。もうオレから離れられなくなるほど、いやらしい身体にしてやろうか…っ!」
「………っ!」
カカシの怒号と、剣幕にナルトの身体がビリリと電流を受けたように痙攣する。
下肢のチャックを無理矢理開けられ、下着にまで手が伸びる。
「違う、違う、違う…っ。カカシ先生、やめろってばぁっ」
「何がっ?何が、違うっていうのっ」
「お、お願…。カカシせんせぇ…やめて。いた、いってば」
ナルトの瞳から大粒の透明な滴が零れて、砂利に擦れてナルトの腕に血が滲んだ。そこで初めて我に返ったという風にカカシが、はっとする。
「痛い…」
「……っごめ」
ナルトの身体に付いた赤い痣。カカシの手形だ。
「ごめん、ナルト。ごめん、ごめんね。痛かったよね…」
自分が、ナルトを傷付けたのだという事実に気付いて、カカシは慌てた。
「手に痕が……」
「………」
「どうしよう、オレはおまえにどうやって償ったらいいだろう?」
怒っていたと思ったら、次は子供のようにオロオロとナルトの顔色を窺う。その仕草は酷く幼い子供のようで、脆く崩れ落ちそうな程、不安定だった。
「ごめん、ごめん…。嫌いにならないで…。おまえに嫌われたらオレは、もうオレでいる意味がなくなる…」
「カカシ先生?」
「ごめん、ナルト。愛してるんだ。ごめん、こんなオレがおまえを好きで、ごめん。許して、お願い」
「……」
頭を抱えてしまった、カカシを見て、ナルトはただ立ち尽くす。ややしばらくあって、ナルトが口を開く。
「ごめんなさいってば。カカシ先生。オレ、ちょっと先生と距離を置きたい…」
無情にも、ナルトはそう言ってしまったのだ。絶望したようなカカシの顔に、見ないふりをした。
ナルトが目覚めた時、隣にカカシの姿がなかった。重たい腰を引きずって、ベッドから這い上がると、時計の針は10時半を指していた。なんと、またしても学校に遅れてしまった。
「頭痛ぇ…。つか、腰がダルい…」
喉と腰を押さえながら、ナルトは水を求めてキッチンに行こうとしたものの、物の見事に腰が砕けていた。バタ、と高校生男子が立てるにしてはマヌケな音が、部屋の中に響く。
「くそうううう、カカシ先生のバカヤロー…」
初めてではないとはいえ、あの激しさだ。恨みがましい独り言をナルトが呟いた時だった、
「ナルトっ?」
パン屋の袋を引っ提げたカカシが丁度外から帰って来たところらしく玄関でぼんやりと立ち尽くした挙句、
「―――……」
靴を履いたままナルトに駆け寄って来た。大型犬にぎゅっと抱き締められナルトは混乱する。
「ナルト、ナルト、ナルト?」
「うわっぷ、カカシ先生…!?」
時々カカシは幼稚園児が一生懸命歩いているような歩き方をする。
「ナルト、大丈夫?朝起きてちゃんと立てなかったでしょ。今日一日はオレが抱っこして運んで上げるからな?」
ふんわりと抱き抱えられ、ナルトはぽかんと口を開けた。
「カカシ先生。靴!」
「あれぇ……?」
自分の足下を見下ろして、カカシは今初めて気が付いたといった様子で、転々と続いた己の足跡を辿る。
「あはは、忘れてた。ナルト、朝ご飯食べる?サンドイッチくらいならすぐ作れるよ?」
「カカシせんせぇー…」
カカシに抱き上げられ床から10センチほど離れたところで、ナルトは呆れた声を上げた。カカシは靴を脱ぎながら、「ん?」という悪気のない顔で微笑んだ。
「なんでもねってば…」
仕方なくナルトはそれ以上なにかを注意することを諦めた。いつになく上機嫌なカカシはナルトを持ち上げたまま、ベッドへと移動すると顔や唇、首筋にじゃれ付くようなキスを落とす。
「んあ、んんんふ…」
「んー」
「ふぁ、カカシ先生…」
いつも通りのカカシだ。良かった、とナルトは思う。昨日のカカシは、どことなく思い詰めた様子だったから不安になっていた。だが、それもこの朝のカカシの様子を見ると、杞憂であったのではないかと思ってしまう。
(本当、カカシ先生ってオレのこと好きだよなぁ。こんなオレのどこがいいのかわかんねぇけどさ…)
もしやこのまま、またしてもセックスに傾れ込むのかと連日続いたセックス三昧に怯えたナルトだが、カカシの唇がナルトの首筋を這った時に、ナルトの腹部から異音が鳴り響いた。つまり、その音が差し示す事が羅は人間であれば誰でも生まれる生理的な欲求であったのだが…。
「―――朝ご飯、食べようっか?」
「ん…」
くくくく、とカカシが笑い、ナルトはニシャと崩れたような笑みを零す。その後に、二人は啄ばむようなキスをして、遅い朝食を摂った。心の片隅で少しの不安を抱えながら。
「頭痛ぇ…。つか、腰がダルい…」
喉と腰を押さえながら、ナルトは水を求めてキッチンに行こうとしたものの、物の見事に腰が砕けていた。バタ、と高校生男子が立てるにしてはマヌケな音が、部屋の中に響く。
「くそうううう、カカシ先生のバカヤロー…」
初めてではないとはいえ、あの激しさだ。恨みがましい独り言をナルトが呟いた時だった、
「ナルトっ?」
パン屋の袋を引っ提げたカカシが丁度外から帰って来たところらしく玄関でぼんやりと立ち尽くした挙句、
「―――……」
靴を履いたままナルトに駆け寄って来た。大型犬にぎゅっと抱き締められナルトは混乱する。
「ナルト、ナルト、ナルト?」
「うわっぷ、カカシ先生…!?」
時々カカシは幼稚園児が一生懸命歩いているような歩き方をする。
「ナルト、大丈夫?朝起きてちゃんと立てなかったでしょ。今日一日はオレが抱っこして運んで上げるからな?」
ふんわりと抱き抱えられ、ナルトはぽかんと口を開けた。
「カカシ先生。靴!」
「あれぇ……?」
自分の足下を見下ろして、カカシは今初めて気が付いたといった様子で、転々と続いた己の足跡を辿る。
「あはは、忘れてた。ナルト、朝ご飯食べる?サンドイッチくらいならすぐ作れるよ?」
「カカシせんせぇー…」
カカシに抱き上げられ床から10センチほど離れたところで、ナルトは呆れた声を上げた。カカシは靴を脱ぎながら、「ん?」という悪気のない顔で微笑んだ。
「なんでもねってば…」
仕方なくナルトはそれ以上なにかを注意することを諦めた。いつになく上機嫌なカカシはナルトを持ち上げたまま、ベッドへと移動すると顔や唇、首筋にじゃれ付くようなキスを落とす。
「んあ、んんんふ…」
「んー」
「ふぁ、カカシ先生…」
いつも通りのカカシだ。良かった、とナルトは思う。昨日のカカシは、どことなく思い詰めた様子だったから不安になっていた。だが、それもこの朝のカカシの様子を見ると、杞憂であったのではないかと思ってしまう。
(本当、カカシ先生ってオレのこと好きだよなぁ。こんなオレのどこがいいのかわかんねぇけどさ…)
もしやこのまま、またしてもセックスに傾れ込むのかと連日続いたセックス三昧に怯えたナルトだが、カカシの唇がナルトの首筋を這った時に、ナルトの腹部から異音が鳴り響いた。つまり、その音が差し示す事が羅は人間であれば誰でも生まれる生理的な欲求であったのだが…。
「―――朝ご飯、食べようっか?」
「ん…」
くくくく、とカカシが笑い、ナルトはニシャと崩れたような笑みを零す。その後に、二人は啄ばむようなキスをして、遅い朝食を摂った。心の片隅で少しの不安を抱えながら。
日常編―パンツの話2―
「カァシ――。なうとってば木の葉レンジャーのパンツがいい!」
「うん。それじゃあ、それで」
「あとコンコンの模様の付いた奴に、カァシの額当てと同じ葉っぱの模様が付いたの!」
「うん。それじゃあ、それで」
木の葉ファッションセンターに静かな激震が走っていた。ボー…とした顔で耳付き尻尾付きの子供を小脇に抱えて、ショッピングに興じている銀髪の上忍。銀髪の忍が誰であるか、木の葉の里の者ならすぐにわかる。写輪眼のカカシ。千の技をコピーしたという天才忍者である。
その彼が、得体の知れない獣耳尻尾付きのコスプレをした子供を連れだって歩いているのである。それも子供の言いなりになって、子供用の下着を買い物籠に吟味することなくぽんぽん入れていく光景は余人には奇妙でしかない。
あの写輪眼のカカシを顎で使っているお子様は何者なのだろうと、彼等が去ったあとの店内はセンセーショナルな話題で持ち切りだった。
結局はたけ家の箪笥にはカラフルな下着と共に子供用のカボチャパンツが収納されることになった。大量のドレスはあまり袖を通される機会もなく、ビニール袋に入れられたまま放置されている。
「カァシ。カァシ。なうとのパンツにカァシのマーク書いて欲しい」
「?」
「だめ?」
「いいけど、まだ新品なのにこれに書いちゃっていいの?」
真っ白なカボチャパンツを顔前に広げられ、押し付けられるように油性マジックを渡される。碧い瞳をキラキラさせたナルトに見守られ、釈然としないまま、カカシはノロノロとペンを走らせた。ナルトは、テーブルに手を付いて、時々堪え切れないという様子でぴょんぴょん跳ねていた。どうやら嬉しいようだ。カカシの買ってきた、衣服の下のズボンはわりと股下がローラインのデザインのため、ナルトの尻尾は服の境目からちょうど飛び出す形になっている。なので、ナルトがジャンプするたびに上下揃いの衣服の裾から背中がぺろりと見える。それは尻尾がふりふりと高く上げられても同じだった。
「カァシのそのマークだっせぇってば」
「なら、なんで書くの」
「シシシー」
へのへのもへじの、〝も〟の部分まで書き終わった直後、壊れかけのチャイムが鳴る。
「おい、木の葉商店街でおまえが財布にものを言わせて、小さな子供を買収しているって噂が流れてるぞ。本当か?」
「なに、その噂……」
訪ねて来た猿飛アスマの開口一番の言葉に、はたけカカシはがっくりと肩を落として項垂れた。
「また平和なことをしてそうだな、てめぇらは」
カカシの右手に握られた油性マジックと、子供が落書きしたと思われる画用紙が散らばった奥の部屋。玄関前でしばし固まる二人の足元にナルトがとてとてとやって来る。
「カァシ。お客さん?」
「よぉ、チビ」
「あしゅま……」
客人の姿を見て、呆然とナルトは立ち尽くした。
「い、いまカァシは忙しいってばよ。じゅーだいな任務の最中なんだってば。横入り禁止だかんな!」
「ほぉ………?」
泣きそうな顔で、酷く馴染みのあるマークのパンツを握り締める子供に、本当こいつら平和だよなぁ…と外で流れてる噂とのギャップに力が抜けた。
「おい、カカシ。せっかく来てやったんだ。茶くらい出せや」
「あー…。おまえ、相変わらず遠慮というものがないね」
「……!!いま、カァシ忙しいってば。いま、カァシ忙しいも……!!」
「はい、はい。ナールト?あとでちゃーんと書いてあげるから騒がないの。ね?」
カカシに抱きあげられ、ナルトが耳と尻尾を垂らしてしょぼくれる。
「ほら、ここでこのままお喋りするからね?」
ちょこんとカカシの膝の上でだっこされて、上を向いた瞬間におでこにキスを落とされる。ナルトはぷくぷく膨れながら、黙りこむ。ナルトのご機嫌が一気に直って、カカシの顔をアスマの前で舐め出すまでさてあと何秒?
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前 空気猫、または猫
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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