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空気猫

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罪の潜在意識。




―幕間―

夢を見た。炎に包まれる村の夢だ。
カカシは、夢の中で、己が皆殺しにしたあの村の中に立っていた。地面には村人の死体があの日と同じように転がっている。
自分が生を終わらせ冷たくなった物体を呆然と見下ろして、血だらけの忍刀と脂肪が燃える臭いに嫌気がさした。足元には女と子供の死体。女は子供を庇うように覆い被さっていて、己がどんだけ非道なことをしたのかわかりやすく教えてくれた。
「人でなし!」
罵倒された青年にカカシはやはり刀を振り下ろす。きっと何度も何度も振り下ろす。それが、カカシに与えられた任務であるなら、カカシは何度でも同じ選択をするだろう。ただ殺しの道具になれ。そう教えられたのは、もはやいつのことだったかわからない。
父が自殺して、導いてくれる者は誰一人としていなかった。幼少期に接したのが暗部の担当教官とばかりだったという笑えない思い出。
だがそれが変だとはこの里では誰も思わない。ことにカカシのように忍の才に長けた者には当たり前の成り行きで「なんて恵まれていることか」と逆に周囲から羨望されるだけだ。
いつか一般人家庭出身の同僚に言われた言葉を思い出す。おまえの人生は忍としてのエリートコース、だと。
彼に悪気はなかったに違いない。むしろ任務の際に的確な指示と判断を飛ばすカカシへ向けての賛辞であったのだろう。
だけど、冷徹非情の殺しの道具として生きていく日々の中で、たまに、道ですれ違う幸せそうな里人が羨ましくもあった。
それは憧れのようなものであったのかもしれない。
平和な暮らしとはどういうものなのか、体験したことがないカカシにとってそれは、想像するしかなかったが、酷く暖かいものに思えた。
自分は殺しのためだけの道具ではないと、血の通わない化け物ではないと信じていた。どんなに人を殺そうともそれは生業でしかなく、カカシ自身は確固たる個人としての人格を、維持できると、思っていた。
だが、人を殺して、殺して、無意識に疲弊して擦り減っていったものが、あったのかもしれない。いつの間にか、カカシの心は疲れていた。
「人でなし」
血と硝煙の匂い。
たくさんの人間の死体の山に立つ、
真っ赤な夢を見た。



「かぁーし」
大量の冷や汗と共に目を覚ました。人を斬った時の生々しい感触が手に残っていて、呼吸が酷く困難だ。
「かぁしってば?」
真っ白な腕が汗ばんだ首に絡められる。それは女の腕のように膨らみも、柔らかさもなく、骨ばって棒っこみたいで、ちょっと力を入れればポキンと折れてしまいそうだった。
ただただ幼いだけの、拙い抱擁。三角耳がぱたぱたと揺れる。路地裏で拾った子供は、耳と尻尾付き。おまけに虐待までされていて人間不信気味。ぼろぼろで汚くて、お風呂で洗ってご飯をあげると、金髪碧眼の綺麗な子供に変身した。
まだまだ太っているとは言い難いが、最近では三食きちんと食べてるからちょっとだけほっぺがふっくらとしてきた。
何より、上目遣い気味にビクビク怯えて誰かれ構わず睨み付けていた、ギラギラした瞳が和らいだ。今では、少しだけ「飼い主」のカカシに笑顔を見せる。
「ナルト……」
心配そうにペロペロと自分の頬を舐める、半人半獣の子供をカカシは無意識に抱き寄せた。
カカシとナルトと同じベッドに眠るようになったのはつい最近のことだ。一度懐くと、ナルトは尻尾をぱたぱたと振ってカカシのあとをついて離れなくなって、もうカカシがソファーで眠ることはない。一緒のベッドに抱き込んで眠ると、半人半獣の子供は温かく、思いの他、熟睡できた。その眠りは、今まで体験したことのない種類の安らぎだった。
「起こしちゃってごめんな?ちょっと怖い夢を見たんだよ」
「か、しぃ…かしぃ」
「おまえ、心配してくれてるのか?」
動物としての本能がまだ強いらしい。しっとりとした生暖かい舌にひたすら顔を舐められる。
ぶかぶかのシャツから覗く肩を風邪を引かないようにとあげて、カカシはナルトを抱き締めた。三角耳が鼻先をくすぐり、子供用のシャンプーの匂いがする。
カカシに抱き締められると狐の子の尻尾がふわりふわりと嬉しそうに揺れた。
「ありがとう、ナルト」
きゅう、と仔狐の咽が鳴った。―――人を殺して、殺して、無意識に疲弊して擦り減っていったものが、あったのかもしれない。それを癒してくれうるかもしれない、存在に出会えたことを、その日カカシは感謝した。
 
 







 
 









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空気猫取扱説明書概要
ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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自己紹介
名前    空気猫、または猫
職業    ノラ
趣味    散歩・ゴミ箱漁り
餌      カカナル
夢      集団行動
唄      椎名林檎
性質    人間未満

日記    猫日和

ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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