空気猫
空気猫
猫さんは甘くておいしいところばかり食べて生きていきたいです。
甘くておいしいところだけ食べたらいけませんか?
「オレってばそういう考えの人好きくねぇの」
「へぇ」
「甘くておいしいとこだけっつうの。なんか納得出来ねぇ」
しゅた、と木の幹に手裏剣が当たった。それと一緒に子供の頬がぷくぷく膨れる。下忍任務終了後、カカシは解散の合図を告げるや、〝これからはプライベートの時間〟とばかりに満面の笑顔になった。しかし、他二名の子供たちの前で小さな恋人をデートにお誘いした不謹慎な大人は「オレってばこれから修行するの!」と見事にフラれる。もちろんそこで引き下がる上忍ではなく、こうして子供の修行に付いて来ているわけなのだが…。
「大体さぁ楽しいことばっかやってたら身体に悪いんだってば。何事もバランスが大切だと思うってば」
ナルトがまた手裏剣を投げる。残念ながら的からは大いに外れてるのだが、むくれながらも手は淀みなく動いている。
「例えば、パフェについているさくらんぼだけとか、饅頭のアンコだけとか、クッキーのチョコレイトのところとか、自分の食べたい部分だけを齧るとか、んなの身体に悪いの」
「ふうん。ちょっとくらい辛いこともしなきゃ立派な大人になれないってこと?」
「そう、それ」
でも、おまえ。前に饅頭のアンコだけ食べてなかった?と思いつつもカカシは、首を捻った。
「ナルト。それ、誰に言われたの?」
「イルカセンセェー…!」
切り株に座って頬杖を付いたカカシが尋ねれば、返って来た答えは案の定お決まりのものだった。あっそう。ふーん。はいはい。まったく、面白くない。せっかくデートを我慢して修行に付き合っているのに愛しい子の口から出て来る他の男の名前。
「ふうん。それじゃあ、今日の晩飯は野菜鍋ね」
〝はい、決定〟と言ってやる。もちろん、意地悪だ。
「好きなものばっかじゃダメなんでしょ?」
「…………」
ナルトがカカシを振り返って口をへの字に曲げる。若干、頬を真っ赤にしてぷるぷる震えているのが可愛らしい。
「オレってば野菜はノーセンキュー…!」
両腕でバッテンを作って、飛び出したのはお決まりの台詞だった。大袈裟でわかりやすいポーズに苦笑して、カカシは腰掛けていた切り株から立ち上がる。
カカシが「おいで?」と腕を広げれば、まるで磁石に引き寄せられたように、ぽすんと子供がカカシの腕の中に収まる。
「カカシ先生はいぢわるだってば」
「はいはい、どうせオレはおまえのイルカ先生みたいみたいに優しくありませんよー」
「またそういうことすぐ言う…」
ほっぺをぷにぷにとさわって来る指に、むうとナルトはまた膨れる。
「…オレってば別にイルカ先生の甘ったれじゃねえもん」
もう、イルカを卒業したのだとナルトはカカシの腕の中でいやいやをした。カカシは困ったように、頬を掻いて、ナルトに手を差し出す。
「ほら、おてて繋いで帰ろうか。それとも抱っこしてあげようか?」
「…………」
伸ばされた手に、ナルトはまたまたむうと膨れた。
「オレってばすっげぇガンバってるのに…」
「え?」
「なんでもねぇの!」
「なーに。おまえ、怪しいよ?」
「カカシ先生に言われたくないってば!」
「……おまえ、恋人に向かって酷いこと言うね」
カカシはふうとため息を吐く。
「さー、今日はがんがん野菜を食って貰うからな~」
「ぎゃっ。あれは冗談じゃないんだってば!?」
「ははは、先生はいつでも本気だぞぉ~?」
「カカシ先生、横暴だってば。暴君!!」
「はい、はい。なんとでも言いなさ~い」
カカシはナルトの抗議の声を耳半分で聞く。大体、なんだかんだと言ってイルカはナルトの好きなものばかり食べさせていると思う。ラーメンやアイスを、ナルトが強請れば「しょうがねぇなぁ」なんて言って与えている。
可愛い生徒。それも格別の。気持ちは痛いほどわかるが、(もちろんカカシにはそれに恋人としての項目も加わるのだけど)必然的にカカシがナルトの食生活をきちんと管理してやらなきゃいけなくて、愛しい子の嫌われ役を買って出ているという何とも不本意なこの状況。
おまえのためを思っているのに。そんなに暴言を吐かないでよ。哀しくなっちゃうデショ?
「カカシ先生のおたんこなーす!」
「はー、そういうこと言っちゃうわけね、おまえは」
ナルトの両手を持ち上げて、カカシは子供を吊るす。ぷらんと浮いた二本足。バンザイの体勢のままへの字口で固まった、お子さま。ああ、可愛い。思わず趣旨を忘れて、そのままキスしてやれば、腹部に衝撃が走った。
「こーら、ナルト。痛いでしょ」
「野菜鍋とこの話は別だってばよ、カカシ先生」
足をバタつかせたナルトがカカシの腹部めがけてキックをするが、さすが上忍というべきか、ビクともしない。
そのうちカカシの腕がナルトを抱き締める。生意気なことばかり言うお子さまが可愛くて我慢できなくなったのが本音らしい。
「おまえ、どうしたの。今日はやけにご機嫌斜めじゃない」
「べっつにぃ…」
唇を尖らして、カカシのベストを掴むナルト。抱っこしてやれば、不機嫌そうな顔をしながらも、しっかりカカシの腰に足が回されるので笑いが込み上げてくる。
空を見上げれば紅。とろけそうな真っ赤な夕日。柔らかな子供の抱き心地と陽だまりの匂いを楽しみつつ、カカシはしみじみと呟く。
「オレは好きだけどねぇ。甘くておいしいものばっか食べる人生」
「……カカシ先生、甘いもんきらいじゃん」
「そんなことない。とっても好きだよ?」
不思議そうに見上げた子供の唇にちょんとキスを落としてやる。〝おまえを〟食べるのは大好きだよ?耳元で囁いてやれば、ぼん!と音がしそうなほど子供の顔が真っ赤になる。
「カカシ先生ってばサムいってばよ!」
「ははは、なんとでもいいなさーい」
ギャー!と雄叫びを上げカカシの腕の中から逃れようとするお子さまをぎゅっと捕獲して、暴れる子供のおでこにキス。やだ、やだ、と抵抗する小さな手すら愛おしい。やんちゃな手の平を優しく掴まえて子供が怯んだ隙に、ふっくらとした唇を頂く。そのまま首筋まで滑る愛撫。軽く歯を立ててやると、大人の手練手管に不慣れな子供はくてんと大人しくなる。
「カカシせんせぇのバカ…」
可愛い憎まれ口は最高の褒め言葉として献上され、ナルトは上忍速度でカカシの家へとお持ち帰りされる。ちなみに買い物中のサスケがこの光景を目撃して「ウスラトンカチどもめ」と舌打ちしたことは1番星だけが知っていた。
二人だけの部屋で毛布に包まって、夕ご飯前の情事。軽い運動だよ、と大人は言ったが、ナルトはぐったりとした様子でシーツに沈んでいる。
大人の腕枕。1番居心地のいい位置を探して頭を預ける。ふにふにと頬をつつく指が擽ったくて、ついつい微睡んでしまう。
「もうちょっとダラダラしたら夕ご飯にしよ。一緒に作る?」
「んぅー……」
顎の部分を擽られ、ゴロゴロ、きっと猫なら喉を鳴らしてしまうほど気持ちが良くてナルトは目を細める。そのうち、いつもナルトが聞き惚れてしまう低い声が鼓膜を震わした。
「ねぇ、なんでそんなに怒ってたの?」
ベッドの中では殊更に甘く擦れた声。オレってばこの声に弱いんだってば。隠し事なんて出来ない。
「だって…、カカシ先生が」
「オレが?」
「オレのことをすぐ甘やかそうとするから…」
意外な言葉にカカシは目を見開く。ぷいっ、とナルトが視線を逸らす。
「オレってば、先生に速く追い付きたいのに、カカシ先生は急がなくていいよとか、おまえのペースで頑張ればいいよって」
今日だって、デートに行こうって。オレってば凄く嬉しかったけど、それじゃあダメじゃん。
「カカシ先生といると楽しいことばっかなんだもん。甘くておいしいことばっか」
身体に悪いんだってばよ?とカカシの方にすり寄って来る愛らしいお子様。まさに天然爆弾。
百戦錬磨と言われたカカシだが、わずか12歳のお子さまに心臓を鷲掴み。
カカシの内心など知る由もないお子さまは、尚も甘露のような告白を続ける。
「オレってば、カカシ先生と一緒にいてぇの。そのためにもカカシ先生との距離を少しでも縮めたいんだってば」
年齢の距離はどうやっても無理。だからせめて、好きな人の足を引っ張らないくらいには強くなりたいと思う。
「頑張ったぶん、カカシ先生に近付けるんだってば…」
そうでしょ?だから甘くておいしいことばっかしてらんねぇの。
「近付きたいのに………」
だけど甘くておいしいことばかりの恋人の関係。とろりとした飴に包まれるような安心感。ナルトが今まで知らなかったことばかり。愛の囁き、二人だけの戯れ、蕩けるような情事。
オレってば困ってしまう。
「甘くておいしいことばっか」
ふぅ…なんて色っぽいため息と共にぽつりと呟かれた独白。―――ああ、もう堪らない。
なんて、なんて、愛おしい存在。
「ナルト」
「なんだってば?」
きょとんと首を傾げたお子さまの手を取って、カカシは最高の笑みを浮かべる。
「バカだねおまえは」
むっとしたナルトに、甘い台詞がぼそぼそと囁かれる。何も知らないお子さまに世の恋人たちの流儀というものを教えてあげよう。その役目を与えられた自分はなんと運が良いのだろう。なんたる光栄。にやりと笑った大人はそのまま、子供の手の甲に唇を寄せた。左手の薬指に、キスを落として心臓を直撃。
その日の夕飯はやたら上機嫌の大人と、顔を赤くして皿ばかり見る子供がテーブルに向かい合う。ことこと煮込んだ野菜スープ。だけど野菜の味なんてちっともわからなくて、恋人たちの時間は甘くておいしいことばかり。
ごちそうさまでした。
体温の高い子供の身体を抱き締めてカカシはベンチに座った。モゾモゾと腕の中で、子供が動いたが、構うことなく骨が軋むまで、強く、抱き締めた。
「――――ごめん」
カカシはナルトから身体を離して、ベンチの隣に座らせる。こんな小さい子供相手に何をやっているのだろうと思う。
「どうしたってば。灰色ねずみの兄ちゃん……?」
頭を抱えて蹲る青年を不安そうに覗き込むナルト。
「………」
返答しない青年に、ナルトは眉の根を寄せる。ナルトは青年に近寄ろうとにじり寄ったが、大きな手の平に腹の辺りを押され、飛びつくことが出来ない。
ショックを受けたように口を歪め、何度も何度も青年に飛びつこうとチャレンジするが、つっかえ棒の腕はビクともしない。
「……ねじゅみ?」
「………」
「ふくぅ…」
小さな唇から漏れた嗚咽に、カカシはおや?と目を見開く。軽く目を瞬かせて、顔を上げれば、子供が泣き出す寸前の顔で、憤然と自分を睨んでいた。
―――……すげー、意地っ張り。
呆れと共に、込み上げてくる笑い。
「ぷはっ、ははは……。くくくく」
大笑いするカカシを余所に、ナルトはますますへちゃムクれる。
「笑うなーってば」
「くくく、ごめん、ごめん。だっておまえその顔……」
子供は唇を噛んで一生懸命、涙を堪えていた。オレが冷たくしただけで、おまえはそんなに哀しいの?
ただちょっと気まぐれに遊んでやっているだけ、それだけなのに。都合の良い解釈をしてしまう。友だちになってあげるよ、と甘く囁いて、手懐けてオレはいったい何をしようとしているのだろうか。
壊してやりたい衝動と、それ以上の守ってあげたいなんて、ガラにもない気分にすらなって、何も知らない、柔らかなこの存在が愛おしいと思った。
自分だけが、この子の特別であるはずがないのに、それでもこのいとけない子供に少しでも慕われていることが嬉しかった。
おいで、と自分の膝を叩くと、すんと鼻を鳴らした子供がきゅうと抱きついて来る。他人にいとも簡単に心を許すのはこの子の性質なのだろうか。それともオレにだけなの?
―――カカシがこの子供に心を許しつつあるように。
「……何?」
ふと気付けばナルトが、カカシの服を掴んで、ぴとりと密着して来た。真ん丸い碧玉にまじまじと見詰められ、カカシは居心地が悪くなって思わず仰け反る。
落っこちそうなくらい大きな瞳に目を奪われていると、よじよじと芋虫みたいにカカシの服に掴まって登って来た。止める間もなく、
「ちゅ」
柔らかいものがカカシの唇にふれる。カカシは今度こそ完璧に固まる。
「ねずみに大好きの〝ちゅ〟~てば」
ナルトの言葉にカカシはザザザーっと蒼褪める。当時のカカシの名誉のために述べるならば、誓って彼は幼児趣味やロリコンショタコンの気はこれっぽっちもなかったのだ。ベッドを共にする相手はどちらかというと二十代半ばからそれより上に限られていたし、同年代はもちろん年下の異性はカカシの眼中にはいっさいなかった。
それなのに。同性の、それもまだ10歳に満たない子供を前にカカシは(再び?)恐慌状態に陥った。
ヤバい、ヤバい、ヤバい、何がヤバいのかよくわからないが、とくかくヤバい。何かいけない扉が開きそうな気がした。
しかし、無常にもあどけない唇が再び、カカシに向かって接近して来ようとするのだ。
「わーーっ、だめデショ。ナルト。ストップ、おすわり!!」
カカシの胸に手を掛けてよじ登って来た小動物に冷や汗を掻く。思わず、犬猫に言うような台詞が飛び出した。
「しゅきな人には大好きのちゅだってばよ?」
「……それ誰に教わったの?」
「父ちゃんだってば!」
オレってば父ちゃんともちゅしてたってばよ?とナルトは小首を傾げる。心底、不思議そうな顔だ。言われた通り、カカシの膝の上にきちんとお座りして元気よく答えた子供に、カカシは頭が痛くなった。
―――――あの人はどんな教育してんだ!!!
カカシは頭の中で、へらへら顔の人物に向かって盛大に拳を落とす。
「ナールト、こら。ダメだよ」
なおも、自分に向かって来る子供の口を手で押さえる。三本の痣がある頬を撫でつつ、「好きな人」の一言にカカシは戸惑いを隠せない。
ダメだよ、と言いながらも、カカシは目を細めて、ふっくらとした幼い唇が重なる感触に背筋を震わせる。
「………ん」
カカシの襟元をきゅっと引っ張り、精一杯背伸びをして、唇を合わせて瞼を閉じるナルト。傍目には小さな子供がフードを深く被った青年にキスをしている、という外国によくあるスナップ写真のような光景だ。猫背のまま、固まった青年の心音さえ聞こえなければ。
浅く息を繰り返す、子供。カカシからも吐息が漏れる。キスというよりも口がくっつぐだけの意味合いが大きい行為なのに何故これほどまでに劣情が湧き上がるのか。
カカシは薄っすらと瞳を瞬かせ、ふわふわした金糸を指で梳く。現実から切り離されたような数秒間……ぷは!とナルトがカカシから離れた。
「シシシ。元気出たってば?」
ナルトは、得意満面な顔で笑った。ナルトの笑みに、カカシは「あー」とか「うー」とか唸ったあげく、困ったように頷いた。
「やった。オレってばねずみを励ますの大成功なの」
「くくく、そうだねぇ……?」
カカシは膝の上で飛び跳ねるナルトの腰に手を添えてやりながら、苦笑した。ふにふにと子供の身体の柔らかい感触に、なぜか眩暈を覚えつつ、カカシは親指で健康的な唇を拭ってやりながら、ふと思い付いたことを口にした。
「おまえ、これみんなにやってる?」
「う?」
「大好きの〝ちゅ〟」
「ううう~、誰にもはやってないってば」
ぷっくりと頬を膨らませてナルトが言う。
「そうなんだ。ねえ…ナルト?」
「ん、なんだってば?」
カカシはなるべく平坦な口調で、ナルトに言い聞かす。
「おまえ、こういうことはもう他の奴にやったらダメだよ?」
「?」
なんで、とカカシを見上げる子供をひょいっと脇で持ち上げて二人の視線が平行になる。
「大好きのちゅうは特別な人にだけにするものだから」
「特別?」
「気軽にしていーものじゃないの」
オレが言うのもなんだけどね。
カカシ自身だってなんでこんなことを言うのかわからない。だが、この子がこれから自分以外の人間と気軽に〝大好きのちゅ〟をするのは堪らなく嫌な気がしたのだ。
「いーい、オレとおまえの約束だよ?」
「ねずみとオレの?」
「そう」
こて、とナルトが首を傾げる。カカシが表面上は至って平静な顔でにっこりと笑えば、青年が笑っているのに安心したナルトもつられてニシャと笑みを零す。
「わかったってば、約束!」
元気良くタックルして来たナルトをカカシはぎこちなく受け止める。そんな二人を遠巻きに眺める公園にいる子供たちは、遊具で遊ぶ事すら忘れて呆然と立ち尽くしている。
ナルトはちろりとそんな同年代の子供等を一瞥すると、カカシの耳元に貝殻のような手をこそこそと寄せて喋る。ねずみにね…、と甘い吐息がカカシの鼓膜を擽る。
「オレの秘密基地教えてやるってばよ」
誰にも内緒なんだってばよ?悪戯っ子の顔でナルトがきゅうと碧い瞳を細める。
「今度、遊びに行こうってば」
「オレには教えていいの?」
「灰色ねずみの兄ちゃんは〝特別〟なんだってば」
ちゅ、と頬に破裂音と共に、ふっくらとした感触と、だ液。オマエねぇ…汚い、と呆れつつも、本気で怒れなかったカカシはこの時から、ナルトに関してはダメな大人であったのかもしれない。
他の子供たちは大口開けてこの異空間を見ていればいい。
カカシ先生のトラウマ。
ガキの頃、カカシを毛嫌いしていた義母はなぜかカカシが成長するにつれ、どこか媚びた仕草を見せるようになった。
己の容姿が人より整っていることをカカシは知っていたし、異性にそれが至極魅力的に映ることを心得ていた。早熟だった彼は、彼女の視線の意味を正確に汲み取った。
無視をするのも面倒で、欲望に答えて抱いてやれば、義母はあっさりとただの女になった。自分の下で淫らに喘ぐ義母の姿を見て、女なんてただの脂肪の塊なんだと悟った。カカシの初体験はこうしてサイテーな感じで終わったが、それ以来、カカシの性生活はすっかり乱れてしまい14歳になる頃にはすっかりスレたガキに成長していた。
カカシは周りの人間なんて自分以外全員バカの集まりだと思っていたし、クラスで騒ぐ同年代の連中を軽蔑していた。そのうえ、恋だなんだを知る前に肉体的な快楽ばかりを先に知ってしまい、それすらもそれほど気持ちの良い行為だとは思わなかったが、ただなんとなく人肌が恋しくて、女を抱いた。
あれはいつ頃のことだったか。年上の女の車でドライブ中。信号待ちの交差点で、40分ほど前ホテルを出る時に塗りたくった化粧を直す女にうんざりして「いくら直しても同じデショ」とうっかり口を滑らせた時だったと思う。
怒った女によってそのまま見知らぬ道に置き去りにされてしまったカカシはちょっとだけ途方に暮れていた。
当時、はたけカカシ14歳。他に足があるわけなく、仕方なく見知らぬ道を歩くことになった。デカい声を我慢してあんなに気持ちよくサービスしてやったのにと、女が聞いたらそれこそバカにしないでよと激怒しそうなことを思いつつ、こんなバスも電車もない場所に放り出せばカカシが困りきることがわかっているのに、躊躇いもなく車を発進させた、女と自分の薄っぺらな関係に辟易した。結局、自分はその程度の関係しか築けない人間なのだと思った。
バーでカカシの見てくれにだけ惹かれて寄って来た女。頭の悪そうな喋り方と自分の容姿に自信を持っているであろう派手な格好とぷんぷん香る香水の匂いに、傲慢な笑顔。
ベッドを共にしたあと未成年だと知ると、女はカカシを諭すよりも喜んだ。ガキに手を出すスリリングな気持ちを味わいたかったのか、カカシにはそのへんの興奮がいまいちわからなかったが、女とは電話番号を交換して誘われたら数回寝ただけの、一方的でセックスフレンドとも言えない関係だった。
ああ、でもやたら豪華な食事を奢ってくれる相手だったから惜しいことしたよなと思いつつも、カカシはすでに女がどんな顔をしていたかも忘れていた。カカシの前を通り過ぎる人間は皆、出会って去って行くだけ。けして立ち止まり一緒に並んでなどくれなかった。中身のないカカシの周りには、人は集るが、そこに座ってくれることはない。本当の意味でカカシを必要とする存在などいないのだ。
しばらく閑静な感じの住宅街を道なりに歩いて行くと水の流れる音がした。向こう岸に連なっているモクモクと煙を吐き出す工場を見ながら河に沿って遠くに見える街を目指して歩いていると夕焼けの河原で水面に乱反射する金糸を持つ男を見つけた。
ひと気が途絶える時間帯なのだろうか。辺りにはカカシとその男しか人の姿はなかった。
真っ赤な世界に紛れ込んだ金色に思わず見惚れていると、河原で何か捜し物をしていたらしい男と目が合った。
紅の中で一際目立つ碧玉が酷く印象的だった。
「やぁ」
と声を掛けられてそれが自分に向けられたものだと気が付いた。人見知りなど知らぬようにニコニコと微笑まれ、カカシは学生服のポケットに手を突っ込む。まぁ第一印象はちょっと頭の足りない人なのかなと失礼なことを思ってしまった。
「これくらいのボールを探してるんだけどきみも手伝ってくれない?」
己の拳を指差して男がずかずかとカカシのほうに近寄ってくる。近距離で「ん!」満面の笑顔。どれだけフレンドリーな人だと思いつつも、否を言わさぬ強引さに押されてカカシはいつの間にか河原のどこかに落ちているらしいボールを探すことになった。
「………」
「あ~、どこかな~。ここらへんに転がったと思うんだけどな~」
「………」
「どこかな~。あ~、きみ…えーと名前は?」
「……カカシです」
「ん!カカシくん、きみはそっちを頼むよ。ボクはこっち」
「………」
「ボールやーい、出て来い」
「………」
「どこかな~~」
結局はその1時間後とっぷりと日が暮れた頃にカカシが水色のボールを探し当てた。
「助かったよ。ありがとうカカシくん」
1時間の間にやたらと質問を受けて(思い返せばカカシばかりが真面目に探していた気がする)隠すことでもないので名前や年齢を教えていた。
「そんなに大切なものだったんですか…?」
「ん!息子へのプレゼントだよ」
プレゼントする前に箱から出して河原で投げて遊んでたらうっかりなくしちゃってねぇ。のんびりと言われてカカシが何にびっくりしたかと言えばこの非常識人っぽい男が結婚してそれも一児の親であることに驚いた。
「息子ってこれ新生児じゃないですか…」
カカシは鼻先に出された写真の中の男と同じ金色を持つ赤ん坊を見てツッコミを入れるべきところを指摘した。
「…赤ん坊がボールで遊べるんですか?」
「だってオレが買いたかったんだもん。ん!」
だもんじゃない。あなた何歳ですか? 思わず、よく知りもしない年上の人に向かって怒りそうになる。睨むと、まぁカリカリしないで座りなよと、無理矢理手を引っ張られ土手に男と並んで腰を起ろした。カカシに向かって微笑み掛ける男に何故か頬が熱くなるのを感じながら。
「ボクは波風ミナト。この近くに住んでるんだ。よくここの河原にも来てるから、また会えるかもね」
「………」
その後、数年間に渡り、男とカカシの奇妙で非常に微妙な交流は細長い糸のように続いた。
「また、いた…。仕事はどうしたんですか」
「そういうきみは学校はどうしたのかな。学ランの中学生くん」
「………」
「ちゃんと学校行くなら、昼休みの間だけボクの特等席を貸してあげるよ」
得意満面の笑顔で言った男にこの人本当に大人かよと思いつつカカシは黙って頷いた。
一緒にいたのは気が楽だったから。何も言わずに、なんの見返りも求めずに隣にいてくれる人なんて、今までカカシの前に現れなかったから。
告白すれば、カカシがまともに高校を出て大学へと進学したのも、彼のおかげであったのかもしれない。
カカシが学校をサボってなんとなく気に入りの場所になった河原に寝転がっていると、真っ昼間だというのにどこからやってきた大人が、ちゃんと学校行きなさいよ、とへらへら笑いながら言うのだ。
あんたこそ仕事はどうしたんだよ、と思うような場面は何回もあったが、それでも誰かに無償で構われるという経験の少なかったカカシにとっては、気に掛けて貰えているという行為だけで十分嬉しいことだった。
とにかく、力の抜けた笑顔で言われると何故か逆らえなくて、その時点で既に彼に対する気持ちが憧れ以上のものに変化していたが、妻子持ち相手にはどうやったって太刀打ちなんて出来なかった。
カカシの10代はこうして不毛な感じの恋心を抱きながら終わり、20歳を過ぎたある日、いつものように河原に行くとスーツ姿の見慣れない格好の見慣れた大人がいて、「厄介なことになったんだよー」と笑った。
そのままなんとなくぶらぶら公園まで移動した。ベンチに座って、大人は公園の向かいにそびえ立つガラス張りの高層ビルを苦笑気味に指さした。
「みんなこーんなおっかない顔してるんだよねぇ」
大人は狐のように目を吊り上げて笑った。「サラリーマン」だなんて到底似合わなさそうな職業に就いた彼にカカシはかしかしと後頭部を掻く。
「奥さんの親御さんがね、どうしても娘婿を跡継ぎにしたいみたい。ボクもそこそこ頑張ってはいるけど」
「けど?」
「向いてないねえ…」
「確かに。なんだかスーツに着られてるって感じですよ」
「デショ?」
「で、昼休みの間だけもここに逃げて来ているわけですか?」
会社って勝手に抜け出していいものなのか、と思いつつ、「逃げてきた」の言葉に男はへらっと笑って、「困ったねえ」とあっさり頷いた。もうちょっとこう大人として取り繕ったりカッコつけてもいいんじゃないかと、当時のカカシは憤然としたが、男は気にした風もなく心地良さそうに木陰の下で目を細めていた。
その約1年後。スーツ姿の大人は、1年前と同じ笑顔で「会社辞めるんだよねぇ」の一言を言った。直後硬直したカカシに男はまたへらりと笑っていた。
「会社辞めてどうするんですか」
「ん!元の稼業に戻ろうかな」
「よく奥さんとこの親族の方が納得しましたね」
「んー…。それがねぇ」
「……まさか」
―――アナタばっくれる気ですか。カカシの脳裏に〝失踪人〟の嫌な文字が思い浮かんだ。もしかして想いを告げる千載一遇のチャンスではないかと、歓喜したもののすぐにその可能性の低さに打ちのめされる。
端から見ていても彼がノーマルな人だということはわかったし、自分に構ってくれるのだって、面倒見が良いだけだからだ。
実際、今現在に至っても、あの人の心はずっと奥さんとその息子に向けられていて、自分のつけいる隙など一部とてなかった。
どうして本当に欲しいものは手に入らないのだろう。だって、カカシの周りにいる人間は、みんなカカシを見てくれで判断するような連中ばかりで、近寄ってくる女どもは、カカシの中身よりも、綺麗な造作の容姿に夢中になった。実際カカシと付き合うことを一種のスティタスと考える輩はあとを経たなくて、何度うんざりしたことかわからない。
見てくれだけで判断されて、ブランド品か何かのように利用されるなんて真っ平ごめんだ。そうは思っても、では中身で判断してくれと言えば、そこには何も残らなくて、結局、自分は飾り物のように持ち歩かれるだけの価値しかないのだと思うと頭を抱えて蹲りたくなった。
ああ、自分の周囲に集まる人間に吐き気がする。媚びた笑みも、化粧臭い女の体臭も、人間なんて肉と水の塊のくせに。気持ち悪い。
「それはまた昔から暗い思考のガキだったんだなおまえは」
「ふつーでしょ。ふつー」
普通じゃねぇよとアスマは苦虫を噛み潰したような顔で、煙草の煙を吐く。パイプベットに猫のように丸くなる友人に呆れつつ、捻くれた奴だなあと思う。
アスマが借りている1LDKのマンション。居間の隅っこに設置されているパイプベッドがカカシの所定位置だ。
大学の一年後輩だったカカシは確かに目立つ存在だった。飄々として世渡りが上手そうに見えて実は色んなところがアバウトで、放って置けない危うい雰囲気を出していたことも事実だった。自分は今この男の私生活矯正と社会的なリハビリを含めて、己のマンションに引き取っているわけなのではあるが…
「アスマぁ」
「んだよ」
「―――生きててもツマラナイよ」
カカシの言葉にアスマはガシガシと頭を掻く。本当に困った奴だと思いつつ、だけど平坦な口調でそんな非日常語が出てくるのは頂けない。生きててもつまらないなんて、悪ぶったガキがよくわかりもせず言うようなチープな雰囲気があるし、第一アスマはそういう自己陶酔的な台詞が好きではない。しばらくなんと言ったものかと言葉を探したあげく、「うちで自殺すんなよ、後処理が大変だから」と言うだけに止めた。ルームシュアの鉄則はお互い干渉し過ぎないこと。心配し過ぎても、カカシのようにのらりくらりとかわすことに長けた性格の奴の場合はあまり意味がない。口うるさく忠告したところで、ひょいと身軽に逃げ出すだろう。きっと何も言わず笑みだけを残して消えて、もう二度とこいつはオレの前に現れない。それでは本末転倒だ。
そんなわけで非常に微妙な問題なのだが、適度に放って置くことも時に大事なのだ。「おまえがここで自殺するとオレに無駄な容疑が掛かって警察にも厄介になるんだからな」と釘を刺して置くと「熊に犯され、はたけカカシ世を儚んで自殺。遺書に書いてやる」と何とも迷惑な答えが返って来たので、ぽかんと叩いておく。
―――このクソガキめ。ああ、もうオレは紅のいるバーにでもシケこみてぇよ。
「ねぇ、アスマ」
「なんだ」
「どうして人間は生きてると思う?どうせ死ぬなら、いつ死んでも同じじゃない?」
幼子のように問い掛けて来るカカシに、アスマは渋面で煙草を揉み消した。
「生きてる意味もないけど、死ぬ理由もないから、ただ惰性で生きてるだけ……」
条件反射で体が勝手に呼吸しているだけ。
「この先もずっとこんな人生が続いていると思うと吐き気がする」
「じゃあ、死んどけ」
あっさりと言って捨てたアスマは、もう一発カカシの頭を叩いておく。カカシは仰向けになって天井を仰ぐ。
「痛いよ、アスマ」
「あたりめぇだ。痛いように殴ったんだからな」
このでっけぇなりのガキが。バキボキと骨を鳴らしつつ、アスマは吐き捨てる。
「んなことばっか考えてるんじゃねーよ」
「イテ」
カカシはまたアスマに叩かれる。
「死にたいなら勝手に死ね」
「………」
「このバカやろうが」
「……んで、そんな酷いこと言うのさ」
「当たり前だ。おまえがさっき言ったことはな、一生懸命生きてる奴等に対して失礼なことだ。ちゃんと朝起きて働いて生活して、悩んで泣いて、葛藤して。そうやってお天道さんの下で必至こいて足掻いてる奴等に対しての冒涜だ」
「………」
「簡単に死ぬなんて単語を使うな」
強面になったアスマに、猫背気味に寝転がったカカシの視線が上がる。やがて、モソモソとフードの奥に顔を隠したカカシを見て、アスマは、はぁとため息を吐いた。
「なあ、カカシ。オレに死ねって言われた時、てめぇ迷ったろ。それはどうしてだ」
「……わからないよ」
「いや、おまえなら理解出来るはずだ。おまえが一瞬躊躇したのは…それは死にたくねぇってことなんじゃねーか?」
ぶすむくれた銀髪の青年の頭をガシガシ掻き回してアスマは苦笑する。
「おまえはこうしてここで寝転んでいるだろ。それは死ぬよりは生きることを選んでるってことだ。本当に死にたかったらもうおまえはここにはいない」
「……オレの言葉が本気ではないと思ってるの」
「おまえの言葉に嘘はないかも知れねえ。ただな、マジで死にたい奴は、悩む前に死んでる」
アスマはまた煙草を咥え吹かしながら、そうだろ?と片眉を跳ね上げた。
「まだおまえが死んでないのは、生きたいって足掻いてるって証拠だ」
アスマの言葉から逃げるようにカカシが丸まる。そんなカカシに苦笑して、アスマはカカシの横に腰を下ろした。
「なぁ、カカシ。迷った時、何が思い浮かんだ?」
「………別に、何も思い浮かばない、よ?」
と、言いかけて、そこでカカシは軽く瞳を瞬かせた。なぜか心臓がドキドキし始める。脳裏を掠める金糸。なんだよ、何でおまえが出てくるわけ?
「おまえの一番生きたいって思った理由はなんだ…?」
「金髪のガキ」
「あ?」
「金髪のガキが思い浮かんだ……」
悪態を吐くように頭を抱え込んだ友人に、アスマは思考を停止させた。やがて思い至った金髪のガキの心当たりに驚く。こいつ確かこの間、公園で可愛くないガキに逢ったとか言っていなかったか?
「カカシ、てめぇ幼児趣味だったのか……?」
「は?なに言ってんの」
カカシは胡乱気にパイプベッドから起き上がり、カシカシと後頭部を掻く。
わからない、ただ金色のあの子が残像のように思い浮かんで、……―――逢いたい、と思ってしまった。
「……――ルト」
逢いにいかなきゃ。まるで何かに背中を押されたように身体が動いた。
「おい、カカシ。どこいくんだよてめぇ」
「公園」
「―――は?」
飲み屋じゃなくて?
飲み屋と公園。果たして一般大学生の口から出てくる単語としてはどちらが健全な響きを持っているのやら微妙なところだが、いつものパーカーを目深に被って出掛けた友人を、アスマは呆然と見詰めた。
モノクロの子供たちの集団の中で、唯一、そこだけくっきりと浮かび上がる金色。ほとんど走るように公園にやって来たせいで心臓の動悸が酷い。それでも、目的の子供を発見すると、照準がはっきりする。
カカシの姿を見ると、金色の子供は持っていたスコップを放り投げて、駆け寄って来た。
「灰色ねずみの兄ちゃん!」
膝の辺りにぽふんとナルトが突進して抱き付いて来る。随分、懐かれたなぁと思いつつ、それが満更嫌でもない自分がいて、足に巻き付いて来る温かい子供の体温に自然と笑みが零れる。
「今日は何して遊ぶってば?」
ナルトは、膝の辺りにすりすりとほっぺをくっつけて来る。小さな足を浮き上がらんばかりにして、ああ、甘えられているのだなと思った。
必要とされている。オレはこの子に。それが……、バカみたいに嬉しかった。
ニシシと笑って、ナルトがカカシを見上げる。
「……ねずみ?」
ぎゅうと抱き締めると、子供から汗と砂埃とやっぱり甘いミルクみたいな匂いがした。なんだか、ヤバいと思いつつも、子供に縋る腕を緩めることが出来なかった。
父の自殺を止められなかった自分はきっと人間として無価値なのだという結論に辿り着いた。後に残された義母とオレはいったい何を見つめていたのだろうか。結局、オレも義母も父の愛を受けることが出来なかった敗北者。
「カカシ先輩が学校に来ているなんて珍しいですね」
「テンゾウ、おまえそれ失礼だからね」
頬杖を突いて剝れている銀髪の先輩に苦笑して、ヤマトは「隣、いいですか」と尋ねつつ「やだよ」と即答される前に強引に隣の席に腰を下ろす。
「カカシ先輩と学校で遭遇したら翌日災難な目に遭うって伝説ができてますよ」
「なに。その、人がやたらと落ち込む噂」
あからさまに迷惑気な顔で背中を丸めるカカシに、ヤマトがちろりとノートに視線を落とすと、神経質な感じの書体で角張った右斜めの文字がびっしりと連なっている。ロクに学校に来てないくせにたまに講義に出るとけっこう真面目に授業を受けているのだからずぼらなんだか几帳面なんだかいまいちよくわからない人だよなぁと思いつつ、
「実は僕、留学することに決めました。学校を休学してしばらく向こうに行って建築を学びたいと思います」
ヤマトは兼ねてより知らせたかったことを報告する。
「……そ。いいんじゃない?」
カカシの返答は予想した通り素っ気ないものだった。
「――――カカシ先輩は海外へは行かないんですか?」
「オレはいいよ。そういうの、面倒臭い」
「もったいない。この間の留学費全額負担してくれる話は…」
「蹴った」
資金援助をしてくれるという金持ちそうな中年親父が下心ありのエロ顔だったんだよ、という裏事情は話さずに端的に結論だけ答えれば、もったいないなぁと再度ヤマトが呟いている。
カカシは建築学科きっての秀才を半眼で見つめつつ、ふと思い付いたことを尋ねて見た。
「ねぇ、テンゾウ」
「なんですか?」
「砂のお城ってどうやって作るかわかるか?」
「―――は?」
圧倒的に無口だ無愛想だと評判の先輩の方から掛けられた声にドキマギしていたヤマトはしかし彼の口から飛び出たやけにメルヘンな単語に動きを止めた。
「カカシ先輩」
まさか頭でも打ったのでは。それともアルコールがとうとう脳まで?とヤマトは今度はまた別の意味で心臓をドキマギさせつつ、体温の低い男の手を強く握った。
「評判のいい頭の病院紹介しますねカカシ先輩」
「それどういう意味?」
いつだって金色の子供は公園で孤立していた。
ナルトの周りだけ綺麗に円を描いて他の子供が集まって来ない。あからさまな光景にカカシはその時はとくに何を思うわけでもなく、公園の中に足を踏み入れる。
遊ぶ友達もいないくせに、なのになぜ公園にいるのかというときっとそれなりの事情があるのだと思う。例えば家に帰りたくないとか、居場所が他にないとか。
「がきんちょ」
金色のひよこ頭に声を掛けると、ナルトがくるんと振り向く。
「よ」
「ニシシ。また来たってば?ねずみってば暇人ー」
バカ言わないでよ。ない時間削っておまえに逢いに来てんの。オレ、これでも凄く忙しい人間なのよ。憤然としつつも、わりとほのぼのした気持ちで、自分に駆け寄って来る無邪気な犬っころを見下ろして、
「……―――おまえ、手ぇどうしたの」
愕然とした単語を喉から吐き出した。
「誰かに突き飛ばされたの?」
訊ねておいていや違うとカカシの眉間が険しくなる。子供の痣は手の平ではなく手の甲に付いている。それもこれは定規か何かで叩いた痕?
「……おまえ、それ」
カカシの言葉にナルトはびくんと身体を強張らせて、視線を彷徨わせた後、ぽふんとカカシの足に飛びついた。
「灰色ねずみの兄ちゃん、遊ぼうってば!」
ニシシと笑った子供にカカシは驚く。誤魔化された。言いたくないということだろうか。まだ片手に足りる年齢のくせに、いったい何に気を使ってんだよ。
「砂のお城作ろうってば!」
「バカだね。んな手で砂遊びなんてしたら、バイ菌入るでしょ?今日はダメ」
調子が狂う。なんとなく子供の頭をくしゃくしゃと撫ぜて、思いの他、心地いい手触りに離れ難くなる。
しあわせな顔で笑っていたら壊してやりたいと思っていたくせに、胸がざわつく。この子供の今置かれている現状はもしかしたら自分が考えているよりも能天気なものではないのかもしれない。
自分の嫌な直感なんて外れてしまえと思うものの、昔からこうした勘が外れたことがなくて、心臓が飛び跳ねて、痛い。
誰も住んでいないようだった、ナルトの自宅。この子はもしかしてもうあそこには住んでいないのだろうか。だとしたら、どこでこの子は暮らしている?母親とは一緒なのか?
「おまえは幸せじゃなきゃダメなんだよ…」
「………?」
「なんでもない」
「灰色ねずみの兄ちゃん?」
動揺を紛らわすように片手をポケットに突っ込めば、ちゃりんと金属が指に当たった。そういえば二、三日前にスロットで稼いだ小銭が入ったままだったと、ポケットの中を探れば、ぐしゃぐしゃになった札が何枚かと(残念ながら存在を忘れたまま洗濯してしまったらしい)なんとかメシ一食分くらい食べられるだけの額の硬貨。
「―――ナルト」
カカシが呼び付けると、子供が「う?」という顔で首を傾げる。何だよ、オレがおまえの名前呼んだら悪いかよと毒吐きそうになるが、
「灰色ねずみの兄ちゃん、どうしてオレの名前知ってるんだってば?」
不思議そうに訊ねてきた子供に、しまったとカカシは口を噤む。カカシは兼ねてより子供の事を嫌というほど聞かされて、名前も当たり前のように知っていたのだが、よく考えれば、お互いに名乗り合っていなかった。
不味い、とカカシは考えあぐねた挙句、ぽふんと子供の頭に手を乗っけてお得意の真顔に近い笑顔でこう言った。
「バカだねぇ、おまえ。灰色ねずみはなんでも知ってるんダヨ?」
「そうなんだってば?」
「灰色ねずみは魔法使いの弟子だからね?」
「んあ?」
「知らないの、灰色ねずみはおまえのことなんでもお見通しなんダヨ?」
相手が子供だということを良いことに、怪しい発音で、怪しい新興宗教のようにデタラメなことを言ってみる。背後に大嘘吐きの看板がでかでかぺかぺかと点灯したような気がしたが、真顔の青年に、金髪の子供は「すごいってば、灰色ねずみ!」といとも簡単に騙されて瞳を輝かせた。
「おまえの嫌いな食べ物当ててみせようか?」
「うん、うん!!」
「野菜」
「すげー!!」
「合ってるでしょ?」
得意満面な顔で8歳児相手に大法螺を吹く青年と、物のの見事に青年の口車にノセられている子供。簡単なお子様の脳味噌に、こんなに簡単に騙されて将来大丈夫なのだろうかと余計な心配をしつつ、持つべきものはポーカーフェイスと二枚舌だと常々思った、はたけカカシ22歳。ちっちゃなこぶしを握って尊敬した眼差しで自分を見上げる子供に、ほとんどないと噂の良心を痛めたりして、知らずに苦笑しつつカカシはひょいっと子供の首根っこを掴んで抱き上げてやる。
高くなった視線に子供がきゃらっと歓声を上げた。
「なあに、灰色ねずみの兄ちゃん?」
己の首に腕を回して、こてんと顔を傾けた子供に何故か頭の芯がクラクラとした。
ガキって結構重たいんだねぇと(マシュマロの塊のようだけど中身がぎっしり詰まっているとか?)思いつつ、公園の隅っこに設置されている例のコーヒーが不味い自販機まで連れて行く。
「好きなジュース買ってやるよ。ほら、選びな」
カカシが言うと、子供が今度こそ瞳を宝石のように輝かせた。
「灰色ねずみの兄ちゃんって太っ腹だってば!」
「おまえ、ジュースひとつで大袈裟だねぇ」
すっかりご機嫌の子供に、カカシは満足気に笑みを零した。せっかく自分は子供の「大きいお友達」なのだから、そこらへんのガキンチョ友達にはないこういう特典があっても良いと思う。
遠巻きに自分とナルトのことを眺めているガキどもに心の中で舌を出して、ナルトを仲間外れにしている奴等に敵意を抱いている自分に気付くことなく、カカシはほんのり子供から香るミルクみたいな甘い匂いに、目を細めた。
「オレってば、いちごみるくー!!」
「おまえ、男のくせにこんな甘いもん好きなの?」
いつも周りの連中に言っている調子でばっさり切って捨てると、子供がショックを受けた顔で口元を歪めた。
「……いちごみるく」
「………っ!」
子供の震えた声にカカシの背筋が伸びる。自分用の水っぽい缶コーヒーを購入したカカシは慌てて、子供が指差した飲み物の点灯ボタンを押した。
「ほら、これでいいでしょ?」
「ん……」
どうしてだろう。何故だか自分はこの子供にやたらと弱い気がする。人に気遣いなんてしたことがなかったのに、この子供の碧い瞳が潤むと、なんでもしてあげたくなってしまう。
そんなわけで真昼間の公園のベンチに銀髪の青年と金髪の子供が並ぶという構図が出来上がったわけだが、カカシは足をぷらぷらさせている子供を横目で見下ろす。
ナルトは自分の横で足を投げ出してストローを齧りながら、ちうーと200ミリパックのイチゴミルクを吸っていた。
垂下される喉元に何故か自分もこくりと喉を鳴らしてしまう。だからなんだこの胸の動悸はとパーカーの胸元を我知らず押さえていると子供とばっちり目が合う。
「灰色ねずみの兄ちゃんも飲むってば?」
「はぁ……!?」
飲みかけの紙パックを差し出され、カカシはベンチからズリ落ちそうなほど仰け反る。ストローと口元に釘付けになって、そんなだって飲みかけデショ…と思いつつも少し濡れた半開きの唇から目を離すことが出来ない。
なんだか思考が危険な方向に向かっている気がする。ん!と目の前に出されたイチゴミルクパックをカカシはまるで危険な爆発物のように凝視して、どうしてか「甘いものが苦手」だと女にいつもいう台詞が出て来ない。
「甘くておいしいってばよ!」
「いや、その……」
「飲んで、ねずみ?」
飲んで、ねじゅみ。その瞳がやけに潤んでいるような気がする。カカシとてナルトの行動が100パーセント無邪気からの発言だとはわかっている。当たり前だ。相手は8歳のガキに、裏表や駆け引きなんてあるはずもない…、デショ?問題は、何故か挙動不審な行動を取ってしまう自分にあるわけで、ふくふくした手の平に自分の手の平を重ねながら、耳たぶまで赤くなる自分の身体状況に驚く。
ナルトはカカシが飲み易いように、カカシの膝の上に乗ると、その口元にイチゴミルクパックを差し出した。
「ん!」
「………っ」
ガキンチョ皆無地帯からやって来たカカシが、子供というものが自分の好きな物や気に入りの物を「特別お気に入りの大人」と共有したい生き物だと知るはずもなく、傍目から見たらカカシが誰かを前して戸惑う姿は驚きの光景だったかもしれない。過去にカカシに捨てられた女の人がこの現場を見たなら、「どういうことよアイツ」と幼児相手にタジタジなカカシに歯軋りをしただろう。
とにかくカカシの今まで使ったことのなかったメモリバンクが一杯一杯になってしまったことだけは確かである。
「おいしってば?」
「………」
こくんと、子供の手からもう見るだけで胸焼けを起こしそうな飲み物を垂下する。少しだけ、子供の体温で生温くなった液体。
飲みくだした瞬間、カカシは堪らなくなって頭を抱えて背中を丸める。ナルトはきょとんとして、そんな青年に首を傾げた。
「灰色ねずみの兄ちゃん、おなか痛い?」
オレもよくおなか壊すってば、と子供が深刻そうに大きいお友達の灰色ねずみの葛藤とはズレたことを言う。
「……違うよ」
「具合悪いってば?」
心配そうに自分を覗きこんだガキンチョ。なんだか恥ずかしくて誤魔化すように自分の飲んでいた缶を無理矢理、子供の口元に突き出してやる。
「にがぁ……」
ナルトは顔を歪めて舌を出した。こんな不味くて苦いだけのものを美味しそうに飲める隣の青年が信じられなかった。
「こんなもの飲んだら頭が悪くなるってば」
「……なるわけないでしょ?」
「オレってばぜってーこっちの方が好きィ」
買ってやったのはオレなのにエラそうに。はいはい、とカカシがまだ目元を染めつつ、子供を横目で見ると、ふっくらとした唇が紙パックのストローを咥えている。
あ、間接キス…と、考えただけで恥ずかしい単語が思い浮かんで、カカシ青年がわけもわからず悶絶したのはその三秒後。
7年後にカカシ先生がコンビニ店員にイチゴミルクをプレゼントしたわけ。
大人はしつこく覚えていた。
正しいチョコレイトケーキの食べ方
「イチゴショート、アップルパイ、チーズケーキ、シフォンケーキ、シュークリーム、ラズベリーパイ…」
「ナールト、どれでもいいから早く決めちゃいなさいって」
「だってさ、だってさ、どれにしようか迷うってば~」
ショーケースの前で、カカシとケーキとを見比べて膨れている子供に、カカシは苦笑する。真ん丸くてふっくらしたほっぺも、困ったってばよと言って寄せられた眉も、可愛らしくて仕方がない。
「どれもおいしそうだってばよ~」
「もうそんなに食べたいなら全部箱に詰めて貰おうか?」
けろりとした顔で大人が言う。上忍の財布なら、それくらいなんてことないことだ。ナルトと付き合う前の話しだが、女に高価な宝石を強請られ、断るもの面倒で買ってやったことも何度かあった。
その時は女って強欲な生き物だよなと思い、誰かに物を贈ることに楽しみなんて感じなかったが、今は違う。この子の欲しいものならなんだって手に入れてあげたい。まさか自分がそんなことを思う日が来るなんて思いも寄らなかったが。
「店員さん、ここの端から端まで全部包んで下さい」
「えええぇっ。カカシせんせぇっ?」
カカシはケーキ屋の店員にガラスケースを指差して注文する。店員の女性は、上忍のはたけカカシと忌み子のうずまきナルトの組み合わせに若干の驚きを隠せずいたが、子供にメロメロな様子の上忍を見て「は、はい!!」と思わず背筋を正した。
ちろりと盗み見た〝うずまきナルト〟。以前、里の中で見た時よりも嫌な気持ちには不思議とならなかった。一生懸命ケーキを悩む姿。百面相のようにくるくる変わる表情は見ていて厭きない。
案外、普通の子供なのね。親がいないと聞いていたので、誰かに連れられてケーキ屋に来る機会も少ないのかもしれない。キラキラした瞳でショーケースを見る姿は、普通の子供以上にあどけなく、嬉しそうだった。彼女がケーキをトレイに移そうとすると、
「そ、そんなだめだってばよ…っ」
ナルトがオレンジ色のジャケットを握って、俯いていた。
「ナルト?」
「キャンセルでございますか?」
カカシと店員の女性が不思議そうに首を傾げる。
「どうして。遠慮することないんだよ?」
「もう。カカシ先生はすぐにそうやって無駄遣いする…。悪い癖だってばよ?」
ナルトは、自分の胸の辺りを掴んだまま視線を逸らして、ぷうと頬を風船みたいに膨らませた。
「オレってばカカシ先生の気持ちが嬉しかっただけなの。先生にたくさんお金を使わせたいわけじゃないんだってばよ…?」
多種多様なケーキの並んだショーケースを、ナルトは繊細な宝石細工を見る少女のように眺め、ほう…と感嘆のため息を吐いた。蕩けそうな瞳があちこちへと彷徨い、やがてある一点に留まった瞬間パァっと輝いた。
「あ。このチョコケーキがいいってばよっ。すごくおいしそう!」
「ふーん、じゃあこれね。すいません、このケーキこの子に一つ」
「はい。かしこまりました。これ、お一つで宜しいんですね?」
「ええ、これ一つで」
「お願いしますってば!」
オレってダメな大人だなぁと頭を掻きつつ、カカシは豪華絢爛なショーケースの中で取り立てて目立っていたとは思えない、小振りなチョコレイトケーキに目を落とした。
ちょこんとして丸くて可愛らしいフォルムがどこかナルトに似ていなくもない。
「ありがとうございました」
店員の女性の挨拶と共に、銀色の大人と金色の子供が手を繋いでケーキ屋を後にする。店員の女性は、ケーキの箱の中にこっそりと入れた小さなクッキーの包みに気付いて子供が歓声を上げることを想像しつつ、接客用ではない笑みを零した。
カカシの家でナルトはうきうきとした表情でフォークを片手にチョコクリームたっぷりのケーキを頬張る。
「あっまーいってばよ」
もきゅもきゅと両頬を膨らましてナルトは満面の笑みを浮かべる。カカシはそんなナルトがケーキを咀嚼する姿を肘を付いて愛おし気に見ていた。せっかく淹れたコーヒーは先程からちっとも減っていない。
「んくんく。カカシ先生、ありがとうってば、大好き!」
ケーキ1個でこんな可愛い顔が見れるのならいくらでも買ってあげたくなってしまう。やっぱりオレはダメな大人だよなぁと思いつつ、
「―――ナルト。ほっぺにクリーム付いてるよ」
「ふえ、どこ?」
「ここだよ」
きょとんと首を傾げたナルトを懐に引き寄せると、カカシはクリームのついたナルトのほっぺをぺろりと舐め上げる。
「!!!」
「あま…」
驚いたナルトの半開きの口にも唇を寄せて、ちゅっとキスをする。オッドアイの瞳が獲物を捕らえた猫のように狡猾に、そして細くなった。
「ん、とれた」
「もうっ。カカシ先生ったら!!」
ナルトは顔を真っ赤にさせて、腕をつっかえ棒にしてカカシを引き離すも、いとも簡単に大人のペースに巻き込まれしまう。
「ん、可愛い」
「ん…。やぁ……っ。せんせぇっ」
「ナールト。今日おまえをたくさん頂戴。オレにも甘いケーキを食べさせてよ?」
「…っんせ」
そのままナルトの口腔内を美味しく頂くカカシ。
「だめ、ってばよ、ッカカシセンセェ…やん」
ナルトの後頭部を片手だけで抑えて、カカシは子供の肺が悲鳴を上げるまで、深く長いキスを何度も、何度も角度を変えて交じわす。
「ん…っ」
「ナルト。ケーキ、もっと食べたい?」
とろんとナルトの視線が宙を彷徨う。カカシはテーブルの上のケーキを指ですくうとナルトの唇に押し付ける。
そのまま唇を合わせて、二人は甘い吐息を共有する。「やだ、離してってば」とか「カカシ先生のエッチ」なんて言わせる隙も与えないで、ズルい大人。
こんなケーキの食べ方をまだしていい年齢じゃないのにね?正しいチョコレイトケーキの食べ方なんてわからないけど、子供が行う食べ方とは掛け離れたこの行為。
オレの都合ばかり押し付けて、オレの欲望ばかり押し付けて、背伸びをさせている自覚はあるが、好きだから許して、なんて都合のいい台詞で誤魔化して、今日も明日も金色の稚児を貪る。
「んふ。ふぅううっ」
カカシはわざと音を立てて、押し倒したナルトから唇を離した。
「おいしかったね、ナルト…?」
「ふぇ…。なんかふわふわするってばよ・・・。オレってばなんかへん」
「え?」
はふはふと、頬を赤らめて子供の力がくてりと抜ける。カカシはいつも以上に潤んだ瞳に、驚いて身を離す。今日はやけに感度がいいと思ったけれど…。
もしやと思い、テーブルの上に置かれているケーキに視線を向ける。大人のカカシには気にならないほど微かだが、このチョコレイトケーキは。
「ん…。このケーキ、ちょっとだけお酒が入ってたみたいだね」
指で生クリームを舐めてカカシが苦笑する。おまえに夢中で気付かなかったよ、なんて暗部時代に鍛えた味覚もびっくりなミス。
だって仕方ないデショ。目の前にこんな美味しそうなおまえがいるんだから、―――……ね?
オレの感覚器官を狂わす、唯一無二の存在。
「熱いってばぁ…」
ごくりとカカシの喉が鳴る。助けてってばと、カカシの首に腕を回すナルト。ヒック、ヒックと泣きつつも甘えたように吐息を漏らすナルトに、カカシはイケナイ気分になってしまったのだけど。
「うぇぇぇ、目がぐるぐるするってばぁ」
「おまえ、可愛い酔い方するねぇ…」
とりあえず今度は子供に、チョコレイトボンボンなんてものも与えてみようかなと思案しつつ、今日のところは子供の大好きな啄ばむような甘いキスで我慢してあげよう。
「blue shooting star」の「ちょこ」さんの誕生日に寄贈した文章でした。
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ここは二次創作小説置場です。無断転載は禁止。本物のカカシ先生とナルトくん、作者様とは一切関係がありません。苦手な人は逃げて下さい。
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管理人の生態
自己紹介
名前 空気猫、または猫
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
唄 椎名林檎
性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
職業 ノラ
趣味 散歩・ゴミ箱漁り
餌 カカナル
夢 集団行動
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性質 人間未満
日記 猫日和
ある日、カカナルという名のブラックホールに迷いこむ。困ったことに抜け出せそうにない。
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